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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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241/307

武蔵野睦規・後

名鑑・二十四


五指登録・下の伍・雷電


下の伍には超高速の電撃を放つ幻術が登録されている。

電撃は強力で、直撃すれば一瞬で意識が無くなる事もある。

直線的な軌道でしか発射出来ず、横に向けた雷のようにも見える。

本来は高威力、高速と引き換えに消費電力が非常に多く、連発は出来ない。

しかし、五指登録は登録した現象を呼び出す際に周囲の電気を自動で吸い取り使用するため、使用者がバッテリーを消費せずに連発出来る。

また、電圧や電流を変化させる事も可能であり、消費電力削減や電子機器の破壊などに使える。

開発者、使用者は秋野イズ。

武蔵野睦規が研究者を志したのは当然とも言える。

式の美しさ、終わりなき探求、役に立つ喜び。

好きな要素は揃っていた。

また、無駄口を叩かない睦規の性にも合っていた。

寡黙な睦規だが、何も考えていない訳ではない。

むしろ考え続けているからこそ話さないのだ。


「いーじゃないの、研究者。ワタシもそれにしよぉ」


「そんなに簡単に決めていいのか?将来に直結するぞ」


「機械弄りが好きだからさぁ、そういう職業がいーと思ってたんだよねぇ。親もうるさくないし自由にさーあ」


睦規は、内心、伊寄が同じ道に進む事が嬉しかった。

そして。


「わたしも研究者になる!楽しそうだから!」


海乃までも研究者を目指す事になった。

しかし、賢い海乃が重大な決断を楽しそうというだけで決める事は無い。

何か他の理由があるだろうと思ったが気にしない事にした。


「それで、何の研究をするの?」


肝心な事を決めずに二人は研究者になろうとしていた。


「今はまだ決まっていない。大学で合う物を見つけたい」


「じゃーあ、今度は大学選びだねぇ。そろそろ進路も決めなきゃだったし、ちょうど良いじゃないの」


三人は賢い。

本気を出せば大抵の大学に入れる。

睦規は伊寄に負けないくらい数学が出来るようになったし、海乃に負けないくらい理科も出来るようになった。

二人は睦規にとって目標であり、星のような物だ。

輝き、導く物。

ただ、星と唯一異なるのは、手が届く位置にいてくれるという点だ。




「さて、大学デビューも果たした訳だしぃ、研究内容でも決めますかぁ」


「その話なんだが、教授に良い研究分野が無いか聞いた所、ちょうど人手が不足している研究があるらしい。かなり特殊な研」


「じゃあ行こーっ!」


話を最後まで聞かずに歩き出した海乃。


「そこを左だ」


「はいはーい!」


「特殊な研究、ねぇ。楽しそうじゃーあないの」


良くも悪くも決断が早く、躊躇なく進める二人は本当に格好良いと思っている。

導の星、憧れ、そして盟友。

追いかけるだけじゃなく、並び、追い越し、また並び、追いかける。




「わたしたちずっと一緒だよ三人揃えば何だって出来るから」


大学在学中に、幻想科学の研究は始まった。

もちろん同じ研究チーム。

これからも。


「ひねくれたワタシと、大雑把なウミノと、無理しがちなムツキ。心技体揃った完璧なチームじゃないの」


「完璧なのかそれは?」


「完璧だよ完璧。大好きな人たちが大好きな研究が出来るんだから」


睦規も二人の事はとても好きだ。

だが研究とは、好き、のベクトルが異なる気がした。


「好き、か」


「、、、ムツキはワタシ達の事、好きじゃないの?」


半分意地悪のつもりで言ったのだろう。

半分は。


「研究以上に好きな物は無い」


普段にこにことしている海乃が刹那しゅんとなった。


「だがお前達といると心地良いのは事実だ」


「「そっか!」」


好きの種類はよく分からない。

だが、好きである事に変わりは無い。

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