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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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240/307

武蔵野睦規・前

名鑑・二十三


五指登録・下の肆・泥沼


転移の式を応用した泥沼を作り出す。

入口と出口に分かれており、泥沼の中に入った物はゆっくりと出口から出る。

これは本物の泥沼ではなく、空間が揺らめいて見えているだけである。

故に、泥で汚れる事はない。

空間に開ける穴は地面に対して平行にしか出来ないため、出口からは落下するように出現する。

通常の転移の式と異なり、転移対象の速度を落とすので、落下時の衝撃緩和に役立つ。

また、土や泥に紛れさせやすいため、入口が見つかりにくい。

特殊な使用方法だが、相手の足元に泥沼を出現させて動きにくくさせたり、その後幻術を中止し入口側か出口側のどちらかに弾く事で体勢を崩したりするのも可能である。

この幻術は使用者から十メートル以内に入口または出口を設定する必要がある。

半径二十メートルまで泥沼の円を広げる事が出来るため、周囲の建物や生物をまとめて転移させられる。

開発者、使用者は秋野イズ。

「いよりはさんすうとくいなんだな」


「えへへぇ、まんてんきろくこうしんちゅーだよ」


小学校で初めて出来た友達が滝井伊寄だった。

たまたま席が隣だっただけだが、話しかけられた事で距離は近づいた。


「ムツキだってきょうはまんてんだったじゃん。まえだっていっこしかまちがってなかったし」


「でも、とくいなわけじゃないから。ぜんぶおなじくらいだし」


「それってこくごできないワタシへのじまん?」




「はじめましてよろしく!わたし石見海乃!」


「よろしく。俺は武蔵野睦規」


小学三年生の六月、その年の最初の席替えで石見海乃と隣の席になった。

海乃は理科の授業で生き生きとしていた。


「むつきー!ほらほらみてみて五重虫めがねー!」


虫めがねを五つ重ねて太陽光を紙に集めていた。

上手く光は収束せず、紙は焦げない。


「むつきって文字打つの速いねー」


「そうか?慣れたらこのくらい簡単だぞ」




中学生になって、初めて睦規、伊寄、海乃が同じクラスになった。


「でさぁ、クラス中の女子と付き合うとか言い出してさぁーあ」


「それは一度にか?順番にか?」


「さぁーね、何なら五人ずつとかかも」


「それってそれって、わたしたちも含まれてるの?」


海乃は当事者意識が低かった。


「同じクラスだから含まれるだろうな」


「ムツキはワタシたちが誰かと付き合ったら嫌?」


試すつもりなのか、伊寄はそんな事を言い出した。

相手によっては最悪の質問。

睦規も少し考えた。


「、、、別に嫌な訳じゃない。誰と付き合おうが、それは本人達の自由だ」


答えを聞いて伊寄と海乃は大人のような笑みを浮かべた。

すぐ後に子供の不敵な笑みを。


「じゃ、ワタシは思いっきり断ってやーろぉ!」


「わたしも!ビンタまであびせちゃうよ!」

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