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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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230/307

あるはずだった存在・後

名鑑・十三


アブソリュートタクト


指揮棒の強度を上げる幻術。

鋼鉄よりも硬くなるが、重量は変わらない。

指揮棒のボタンを押すと棒が伸び、幻術が発動する。

もう一度押すと幻術が停止し、棒が縮む。

また、使用者が幻術を使用可能であれば、指揮棒を振ると同時に風の刃を発射する事も出来る。

風の刃は破壊の式と制限の式で作られていて、ほぼ無色、半透明である。

使用者、開発者は石見海乃。

彼が進学したのは工業高校だった。

育ての親は高校にすらもったいないと思っていたようだが、今時中卒ではまともな仕事も無いので、仕方なく就職に役立ちそうな学校に行かせたのだ。

無難な高校生活を送り、約一年。

彼は街を歩いていた。

何の目的も無く、ただ暇を潰すために。


「なぁ、おい」


「あれって、、、」


騒ぎの方向を見ると、銀行に強盗が押し入っていた。

三人組の男で、黒い面を付けている。

一人は拳銃を振り回して客や職員を脅している。

一人は裏で金をバッグに詰めさせている。

一人は客の一人である少女を人質に取り、銃口をこめかみに押し当てている。


「早くしろ!死にたいか!」


銀行の外まで聞こえてくる怒鳴り声。

隠すつもりは無いらしく、中の様子が通りからはっきり分かる。

彼は思わず立ち止まり、遠くから見物していた。

すると、サイレンの音が近づいてきた。


「チィッ!第二プランにするぞ!」


パトカーが銀行の近くに停車し、警察官がぞろぞろと出てくる。


「おい警察ども聞け!人質を今から三人殺す!若いやつからだ!殺して欲しくなかったら要求を聞け!」


それから、何度も交渉が行われたが、人質は解放出来ない。

野次馬は現場から離され、彼も中の様子はよく見えなくなってしまった。


「今車が到着した!だから人質を解放してくれ!」


強盗からは見えない位置に機動隊員が何人も待機している。

建物から出た瞬間を狙って突入するつもりなのだろう。


「よし。一人ずつ解放してやる。おかしな真似はするなよ」


まだ少女は捕まっている。

表情は見えないが、きっとまだ恐怖で歪んでいるだろう。

一人ずつ人質が出てくる。

最後の一人、少女を連れ出すその瞬間に。


「ぐっ!?」


突入が開始され、建物の中では強盗達は取り押さえられていっただろう。


「うああああああああああああああああああっ!」


咆哮の後、銃声が一発。

遠目で見えたその光景は野次馬達全員に見えてしまっただろう。


「し、失敗だ」


人質にされていた少女は助からなかった。




それから、彼は何度も事件に遭遇した。

校内で起こったいじめと、それに伴う自殺。

育ての親が上手い話に騙され、有り金のほとんどを失った。

何とか最低限の生活をするのが限界だったが、彼は不自由を感じなかった。

不自由に慣れすぎて感覚が麻痺していた。

同時に、人が簡単に死ぬ事を知ってしまっていた。

こうなってしまったのは、全て人という存在のせい。

彼は人に罰を与えたくなった。


「もっと危機感を持てよ。だからオマエらは死ぬんだよ」


手作りの爆弾。

街中に仕掛け、準備完了。


「ま、オマエらの自業自得。オレは捌きを下しただけだ」


周防頼我は、笑いながら消えた。




「これはもう要りませんから、書き換えた後の事に戻りましょうか」

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