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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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229/307

あるはずだった存在・前

名鑑・十二


ブレイズフィスト


石見海乃が作った幻術。

使用者の右の拳に炎を纏わせる。

使用者の意思を検出し、燃やしたい物以外に炎が燃え移らないようになっている。

炎が発する熱は、燃え移らせるかどうかと別に判定され、対象に熱だけ与えたり、熱を感じさせずに燃やしたりする事も可能である。

しかし、出力は小さいため、主に威嚇や護身のための幻術である。

使用者は能登時晴。

能登時晴は、炎が格好良いという理由で石見海乃に作成を依頼した。

日常生活における実用性は低い。

彼は両親の声を覚えていない。

産まれて間も無く両親は交通事故で他界。

運良く生き残った子供は、本当に運が良かったのだろうか。

親戚に引き取られ、育てられたがお世辞にも可愛がってもらえたとは言えない。

子供の彼でも分かる、嫌な家庭。

暴行こそ無かったが、暴言など、かなりの不当な扱いを受けた。

いつも学校から帰ると逃げるように外出し、出来るだけ遅く帰る。

十四歳の時だ。

夜七時頃、公園で口論をする女二人を見かけた。


「元はと言えばあんたのせいでしょ!あんたがあんな所で急ブレーキ踏むから!」


「はぁ!?あそこでブレーキ踏まなかったら右にぶつかってたでしょ!?そうなってたらアタシ死んでたんですけど!」


次第にエスカレートしていき、ついには取っ組み合いになった。

彼がちょうど公園を通り過ぎた時聞こえたゴツンという音。

振り返ると女は一人しかいなかった。


「はぁ、はぁ、やった。やっちゃった」


息が上がり、肩を上下させている女と目があった。


「み、見た、見たの?見られたっ!」


女が飛ぶように向かってくる。

急いで逃げる。

一瞬見えたのは、もう一人の女が鉄棒近くの砂場に倒れているという光景。

とにかく急いで逃げる。

体力的に有利な彼がどんどん距離を離していくが、相手はまだ見えている。

次の角で曲がる。


「待ちなさい!待て!」


女の気配がより危険な物になったのを感じ、スピードを上げる。

点滅する青信号を渡り、人通りの多い道に。


「待ちなさ」


遅れてやってきた女は、赤信号にも関わらず躊躇せず飛び出した。

生憎、通りかかったトラックに轢かれ、吹き飛ばされた。

騒ぎが起きつつある中、彼はとにかく歩いた。

人が人を殺すのを見た。

その人も轢かれて重症か、死。

心がざわざわとして、正気を保っていられなかったので、真っ直ぐ家に帰るという、普段なら絶対しない選択をした。

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