ダッケルス・バルジオキ・前
名鑑・九
バブルウォール
掌から透明な球体を発射する式。
球体は一メートル先で破裂し、半径一メートルの円形のバリアを張る。
電気で出来たバリアは一秒しか持続しない代わりに、非常に頑丈である。
条件が限定的である分、無駄な電力消費はほとんど無い。
電気のバリアは透明ではなく白色や黄色に見えるため、瞬間的な目隠しとしても使える。
一メートル飛ぶまでに何らかの衝撃を受けて割れた場合、バリアは展開されない。
発射速度は約時速二百キロメートルであり、反応と展開の間にずれが生じにくい。
田島姉妹の場合、四つの掌のどこからでも発射出来る。
バルジオキ兄弟はアメリカにいた。
今回の客は有名な政治家。
「選挙に確実に勝つ方法を知っているかね?、、、不戦勝だよ」
選挙が近々行われるのだが、その対抗馬が強敵らしいのだ。
街を丸ごと一つ手中に収め、小さなレストランですらその政治家の息がかかっている程らしい。
依頼内容は、候補者の信用を無くす、だった。
「直接殺した方が早いんだろうけど」
「怪しまれるしなー」
まずはターゲットに近い者の汚職を暴露する。
汚職の証拠は、さらにその部下を脅して手に入れた。
「あの小間使いの、さらに小間使いでいる方が」
「ここで死なない事よりも大切なら、尊重するぜ?」
「ひっ!?言う!言う!言うから助けてくれ!全部言うから!」
額に黒い歯ブラシを突きつけただけで簡単に話したのだった。
汚職の報道がされるのとほぼ同時。
候補の右腕と言われる人物を殺害した。
もちろん汚職をした者と同一人物だ。
すると、世間は一つの結論を導き出した。
「事態の発覚を恐れた候補は、口封じをして真偽を闇に葬ろうとした」
「しかし、報道に先を越され、汚職は発覚し、口封じの疑いまでかけられた」
そこまで言うと二人の口から笑みがこぼれた。
「ふっ、ははっ!やっとオレたちにたどり着いたって訳か」
「面白いくらい予想通りだな!」
金髪の男や、金属のアクセサリーをジャラジャラ纏っている女など、十五人。
全員が銃を所持している。
「うるせえッ!」
「「アンチメタル・コード!」」
シモンとダッケルス、二人が持つ警棒のような物を光る線が繋げた。
薄暗い裏路地。
狭く、汚れている。
「汚れたオレたちが戦うにはピッタリの場所だな」
銃声が連続する。
しかし、双子は止まらない。
回避すらしない。
二手に分かれ、線を伸ばしていく。
時には壁を蹴り、敵を踏みつけ、線をうねらせる。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「おい!どうしああああああっ!?」
電気の線に触れた者、と言うより鉄分を含む物質は強く弾き出される。
人体に触れれば身体の内側が引き裂かれていくのは言うまでも無い。
普段は鎧のように自身の周囲に纏わせているアンチメタルだが、同時に電気の線を伸ばして攻撃するのにも使えるのだ。
「た、助け、助けて、わわ、悪かった、だから、助けて、たす、けて。やっぱり、し、し死にたくない」
容姿に似合わない涙を流す女も当然引き裂いた。
「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
果敢に銃を打ち続ける男も銃ごと破壊した。
「じゃ、次の仕事に移るか」
二人は裏路地を後にした。
返り討ちにした者達の残骸を残して。




