『一条山開拓記』第三話:一条山農林の社用車がお披露目どすえ〜♪
【前書き】
※本エピソード『一条山開墾記』は、『Bar風花』本編の設定をベースにしたスピンオフ/パラレルストーリーです。
※本編の時期や時系列には一部独自のアレンジやIF要素を含みますが、白黒赤の三人娘と結社長の賑やかな開墾スローライフとしてお楽しみください。
※今回は、彼女たちの努力が実を結び、大切な「足」となる社用車がお披露目されるエピソードをお届けします!
澄み渡る秋晴れの空の下、一条山の広場に静かに並ぶ三台の個性豊かなマシンたち。
現場を駆け巡る頼もしい相棒であり、日々の暮らしを彩る自由の翼。
結社長の仕掛けた温かなサプライズに、秋のワインディングロードと夜のBar風花が笑顔で満たされていきます。
三色のカーライフの始まりと、温かな祝福のひとときを、どうぞごゆっくりお楽しみください。
秋晴れの爽やかな風が駆け抜ける一条山。
現場事務所前の広場に、朝陽を浴びてピカピカに磨き上げられた三台の軽自動車が静かに並べられていた。
一台目はミリタリー感を放つ『オリーブドラブ×艶消し黒ツートンカラーのスズキ・ジムニー(JA22型)』、二台目はTOYOTA純正ピンクに全塗装された『モモタロウカラーのスバル・サンバートラック』、三台目は愛らしい丸目二灯の『スバル・サンバーディアスクラシック(クラシカルグリーン×アイボリー)』だ。
「テンゲキーーーーーッ!! な、なんッスかこの最高すぎるマシンたちの並びはーーーーッ!!」
「あはは! おいおい結社長、これって……!」
アルフォンス・ミュシャ柄のアロハシャツを羽織った赤城遥花が両手のシルバーリングを鳴らして叫び、ホンダ・XR400Rの横でポニーテールを揺らす白石まひろも驚きの声をあげる。
黒木葵も目を丸くしてピンクのヘルメットを抱え直していた。
プレハブ事務所のデッキから、バインダーを抱えた一条結がおっとりとタレ目を細めて降りてくる。
エプロン姿の櫻庭美和と、コーヒーカップを手にした櫻庭天が温かい眼差しでその後に続いた。
結は三色の鍵がついたキーホルダーを手に、気品あふれる微笑みを浮かべる。
「現場の巡回、資材の運搬、そしてみなさまの日常の足として……三人の社用車をご用意いたしましたえ〜♪ 業務だけでなく、プライベートで普段遣いしても良いですえ〜♪」
「「「普段使いOKなんッスかーーーーー!!??」」」
三人衆の興奮した歓声が、一条山の秋空に鮮やかに響き渡った。
「まずは、まひろちゃん」
結がオリーブドラブと艶消し黒ツートンカラーの車の鍵をまひろへ手渡した。
「山林の巡回や荒れた林道の走行、狩猟や植生調査のために、本格軽四駆のジムニーJA22型をご用意いたしましたえ。タフなカラーリングで仕上げておりますのや♪」
「ハッ……! こいつはたまらないねぇ! K6Aターボのパワフルなトルクとコイルサスのしなやかさがあれば、どんな悪路も登っていける。あたしのXR400Rとも最高の組み合わせだよ!」
まひろがジムニーのドアを開け、革巻きステアリングの感触に感服の溜息をつく。
「続いて、葵ちゃん」
結がモモタロウカラーの鍵を葵へ手渡した。
「葵ちゃんには、これまでも現場で活躍してくれたモモタロウカラーのサンバートラックを正式に専用社用車として配備いたしますえ。リアエンジンと四駆の走破性はまさに『農道GT』どすな♪」
「……っ……! モモタロウサンバーがうちの正式な社用車に……! 荷台の鳥居にステッカー増量して、アストロの工具も積んでどこへでも行くッス!!」
葵が感無量の面持ちでサンバーのボンネットを優しく撫でる。
「そして……遥花ちゃん」
「ウ……ウチの番ッス……!」
「遥花ちゃんには、レトロで愛らしいクラシカルグリーンとクラシカルアイボリーのサンバーディアスクラシックどすえ〜♪ リアエンジンによる静粛性と広大な室内空間で、加工部の資材運搬はもちろん、遥花ちゃんのギターや大型パーツの運搬にもぴったりどす♪」
「んがぁぁぁぁぁッッ!!?? ディアスクラシック……! ツートンカラーと丸目クラシック顔が可愛すぎてエモの極みッスよーーーー!! バンドの機材車にも最強ッス!!」
遥花はその場に膝をつき、鍵を両手で抱きしめて感動の涙を流した。
「結社長……こんな素敵な社用車を三人分も用意して、しかも普段使いOKなんて……経費とか本当に大丈夫なんッスか……!?」
葵が恐縮しながら尋ねると、結はおっとりとバインダーを優しくパチンと閉じた。
「ふふっ、ご安心なさってくださいな、葵ちゃん。これこそが我が社の『福利厚生&車両活用節税ロジック』どすえ〜♪」
結のスパコン脳が、完璧な数値と法規を提示する。
「今回の社用車の配備ですが、山林管理用の事業用特殊車両および6次産業化の自家用有償運搬車両として正式に登録しておりますのや。さらに、全車を耐用年数を経過した状態の良い優良中古車両として取得し、初年度での100%即時償却と過年度の補助金剰余金を完璧に組み合わせ活用しておりますのや〜♪」
「つまり、会社の正規の資産として購入しつつ、維持費やガソリン代、車検代も全額会社経費。それでいてみんなの普段の生活の足としても自由に使ってもらうことで、みんなの生活コストを劇的に下げる福利厚生というわけだね」
天がコーヒーを一口飲み、誇らしげに微笑んだ。
「結社長……マジで神の中の神社長ッスーーーー!! 車維持費ゼロでジムニー、サンバー、ディアスクラシックに乗れるなんて、前職のブラック現場じゃ考えられない天国ッスよーーー!!」
遥花が再び大号泣し、まひろと葵も深い感謝の笑みを浮かべた。
午後、さっそく三人は届いたばかりの社用車の試運転&ドライブへと繰り出した。
先頭はまひろのJA22ジムニー、続いて葵のモモタロウサンバートラック、しんがりは遥花のサンバーディアスクラシックだ。
風花町の美しい紅葉が彩る峠道を、三台の個性豊かな軽マシンが連なって軽快に駆け抜けていく。
「あはは! JA22の四駆性能と軽いフットワーク、最高だねぇ! どんな峠道も吸い付くように走るよ!」
無線機からまひろの弾んだ声が流れる。
「サンバーの5速マニュアルとリアエンジンのトラクションも絶好調ッス! 荷台のマキタの工具箱も全然揺れないッス!」
葵が軽快なダブルクラッチでシフトダウンを決めながら笑った。
「ディアスクラシックの室内、広すぎて住めるレベルッスよーーー!! マーシャルの大型アンプもギブソンのレスポールも、まとめて積めて余裕ッス!! 脳汁ブースト止まらないッスよーーー!!」
遥花がサンバーストリートの開放感を満喫しながら叫んだ。
仕事の道具であり、頼もしい相棒であり、毎日の暮らしを豊かに彩るプライベートの足。
三人は手で掴み取った新しい自由の翼を噛み締めながら、どこまでも続く秋のワインディングロードを走り続けたのだった。
夜の八時。
『Bar 風花 -kazahana-』の重厚なオークの扉を開けると、ほのかに漂う桜の花の甘い香りと澄みきった静けさが身体を包み込んだ。
カウンターの鉄刀木の一枚板がアンバー色の照明を受けて静かに艶めき、奥の戸棚ではバカラやリーデルのクリスタルグラスが虹色の光を放っている。
「いらっしゃい、みんな。素晴らしい社用車の納車、おめでとう」
カウンターの奥で、ワインレッドとアンバーの異色瞳を優しく細めた美和が出迎えてくれた。
「美和さんッッーーーー!! 今夜も神々しすぎて語彙力完全蒸発ッスーーー!!」
地雷系ファッションの葵、リラックスしたまひろ、ヴィンテージアロハの遥花。
三人が深く艶めく黒革のローチェアーへ並んで腰を下ろすと、美和から特別なお祝いプレートが差し出された。
三台の車をイメージした『三色の彩り・ローストビーフの手まり寿司アソート』と、じっくり煮込まれた『自家製コンソメスープ』だ。
ローストビーフの手まり寿司を一口頬張ると、しっとりと柔らかい上質な和牛の脂と甘酸っぱい酢飯、そして隠し味の生ワサビが見事に調和して口の中で解けていった。
「……美味いッス!! 車のカラーに合わせた手まり寿司なんて、美和さんのセンスが神がかってるッス!!」
葵が目を輝かせて叫ぶと、まひろと遥花も豪快に頷いた。
「……ッハーーー! 最高だねぇ! 自分の車が持てるなんて、大人になって一番嬉しい日だよ!」
「脳汁ブースト限界突破ッスーーーー!! 美和さん、マジで世界一のオーナーバーテンダーッスーーー!!」
さらに美和が、磨き上げられたクリスタルグラスにクラッシュドアイスを満たし、静かな所作で鮮やかな三色のモクテルをつくり上げた。
まひろには、丁寧に点てた抹茶とフレッシュライム、摘みたてミントが鮮やかに調和する『ODグリーン・モヒート』。
葵には、自家製コンフィチュールとシュワッと弾けるスパークリングの『モモタロウピンク・スカッシュ』。
遥花には、熟成伊予柑の甘みとトニックウォーターが爽快に弾ける『クラシックアンバー・フィズ』だ。
「乾杯どすえ〜♪」
結と天もグラスを胸の高さまで静かに掲げ、店内に心地よい乾杯の声が響き渡った。
「あおい……まひろ……はるか……くるま……かっこいい……」
となりのローチェアーで冷まし焼き芋をモグモグしていた深雪が、黄金色の瞳をパチクリさせて覗き込んできた。
「深雪ちゃん! 今度、ウチらの車でみんなでドライブに行くッスよ!」
深雪は満足そうに「ん……」と頷くと、手に持っていた一番甘い焼き芋の半分をそっと三人のプレートの真ん中へ置いた。
「……みゆきも……ドライブ……いきたい……。がんばった……みんなに……やきいも……あげる……」
「……っ〜〜〜〜!? 深雪ちゃん……! ありがとうッスーーー!!」
遥花が感動に涙を拭い、葵とまひろも深雪から受け取った温かな焼き芋を分け合い、嬉しそうに頬張った。
仕事も、プライベートも、どこまでも自分らしく、胸を張って走り続ける。
信頼できるマシンと、正当な対価、そして帰るべき温かい家族が集う『Bar風花』。
白・黒・赤の現場三人衆と一条山農林の足音は、これからさらに力強く、どこまでも遠くへ響き渡っていくのだった。
「ふふっ、美味しいものをたくさん食べて、明日からも安全第一でね」
美和がワインレッドとアンバーの異色瞳を優しく細め、カウンター越しにみんなの頭を優しく撫で下ろした。
「「「ご安全に!!!!」」」
アンバー色の光が優しく満ちる『Bar風花』の店内に、温かな笑い声と三色のカーライフへの祝福がどこまでも静かに溶けていくのだった。
【あとがき】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
第三話では、白黒赤の三人衆(まひろ・葵・遥花)へ、それぞれの個性にぴったり合った社用車(ジムニーJA22、モモタロウサンバー、サンバーディアスクラシック)がお披露目される回となりました。
単なる作業車としてではなく、結さんのスパコン脳が弾き出した「100%即時償却&福利厚生ロジック」によって、プライベートでも自由に使える「自分の車」を手にした彼女たちの弾けるような笑顔と熱量を感じていただけたら嬉しいです。
試運転の峠道ドライブから、夜の『Bar風花』での美和さん特製お祝いプレート&三色モクテル、そして深雪ちゃんの可愛い焼き芋のお裾分けまで、彼女たちが掴み取った「正当な対価と温かな居場所」の優しさをぎゅっと詰め込みました。
次回はいよいよ、準備の整った一条山に頼もしい重機たちが搬入され、本格的な土木・開墾作業がスタートします!
「三人衆の歓喜にほっこりした」「社用車のチョイスと節税ロジックにニヤリとした」「Bar風花での乾杯シーンが好き!」と思っていただけましたら、ページ下部の【★評価】やブックマーク登録、感想などを残していただけますと、今後の執筆の大きな原動力になります。
それでは、また次の物語でお会いしましょう。
天照(Bar風花)




