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『一条山開拓記』第二話:現場事務所を設置しよう!

【前書き】


※本エピソード『一条山開墾記』は、『Bar風花』本編の設定をベースにしたスピンオフ/パラレルストーリーです。

※時期や時系列に一部独自のアレンジ(IF要素)が含まれますが、キャラクターたちの賑やかな日常としてお楽しみください。

※白黒赤の三人娘と、歩くスパコンパラリーガル・結が繰り広げる、ゼロからの開墾スローライフをお届けします!


秋深まる一条山の麓に、響き渡る木槌の音と職人たちの威勢の良い声。

固められた地盤の上に立ち上がるのは、四坪二階建てのプレハブ事務所と、杉とヒノキが優しく香る快適なバイオトイレ。

開墾の第一歩となる「大切な拠点」が、いまここに産声を上げます。

薪ストーブの柔らかな温もりと、出来立てのお振る舞いの香りに包まれる秋の一条山。

どうぞ、ごゆるりとお楽しみください。

 秋深まる一条山の麓。

 風花川の清流へと続く小川のせせらぎが心地よく響く広場に、黄色いヘルメットを被った職人たちの活気ある声が満ちていた。

 図面を広げているのは、地元の工務店『風花建設』の棟梁・大岩だ。

「なるほどなぁ、一条さん! ここなら地盤の締まりもバッチリだし、山からの押し出しや水はけの心配もねぇ。建坪四坪・延べ八坪の二階建てプレハブなら、基礎をしっかり組んでアンカーを打ち込めば、台風が来ようがビクともせん頑丈な現場事務所ができるぞ!」

「ふふっ、おおきに大岩さん♪ 地盤耐力の計算も水脈の流路シミュレーションも、わたしの脳内でコンマ一ミリ単位の精度で完了しておりますのえ〜♪」

 作業服姿の一条結が、おっとりとタレ目を細めて微笑んだ。

 その隣では、スーツ姿にメガネをクイッと上げた橘栞弁護士が、バインダーに挟んだ書類を念入りにチェックしている。

「大岩さん、防火地域外における十平方メートル超の新築に係る建築確認済証の交付を受け、山林管理契約に基づく工作物設置の届出手続きも、すべて私が完璧に完了させてありますわ。法的な隙は一切ありませんので、安心して施工に入ってくださいませ!」

「がはは! さすが橘法律事務所の敏腕弁護士先生だ、仕事が早くて助かるぞ!」

 大岩棟梁が豪快に笑い、手下の若い職人たちへ威勢よく指示を飛ばした。

 広場の端では、ワークマンプラスの最高級ピンクヘルメットを被った黒木葵が、お揃いのモモタロウピンクに塗装されたサンバートラックの荷台に腰掛け、目を輝かせて施工図面を覗き込んでいた。

 ヘルメットの側面には、お気に入りの猫キャラがポーズを決める『ご安全に!』のステッカーが貼られている。

「……っす! 四坪二階建ての組み立て式プレハブ……! 一階をツールラックと資材・バッテリー整備ステーションにして、二階を休憩室と結さんのスパコン作戦本部にすれば完璧なレイアウトっすね!」

「あはは、葵ちゃん、すっかり頼もしい現場監督の顔だねぇ」

 天が爽やかに微笑みながら、自衛隊仕込みの水準器で基礎の水平を確認した。

 その足元では、黒虎毛の甲斐犬・カイくんの背中に乗ったフェレットのカモくんが「きゅっきゅ〜♪」と楽しそうに鼻を鳴らしている。

 首に防音イヤーマフをかけた深雪は、フーフーと冷ました焼き芋をモグモグと頬張りながら、じっと現場を見守っていた。

「よし、コンクリート独立基礎の固定とアンカー打ち込み完了! 鉄骨フレーム立ち上げるぞーっ!」

 職人たちの手際が見事だった。

 レベルで正確に水平を出した基礎の上に、厚手の軽量鉄骨フレームが次々と組み上げられていく。

「……うわぁ、凄いっす……! ユニックで吊り上げながら、一気にパネルがハマっていくっす……!」

 葵が黒を基調としたスタイリッシュな作業服姿で、職人たちのボルト締めを食い入るように見つめ、手帳にメモを取っていた。

「……葵ちゃん、ボルトの締め付けトルク、例の『確認ヨシ!』の指差し確認でダブルチェック手伝ってあげたらどうだい?」

「っす!! 天さん、言われなくてもトルクレンチ借りて全ボルトの締め付けと指差し確認するっす!!」

 葵がピンクのヘルメットを締め直し、職人たちと意気投合して「ボルト締めヨシ!」「アンカー固定ヨシ!」と元気よく声を張り上げた。

 

 半日も経たないうちに、木の温もりが漂うオシャレなサンドイッチパネル調の外壁を持った『四坪二階建てプレハブハウス』が、しっかりとした基礎の上にドカンと立ち上がった。

 続いて広場の少し離れた一角に、同じく工務店の手によって、木の香りが清々しいログ風の木造小建築が二つ組み立てられていく。

 ひとつは、結がこだわり抜いた『快適バイオトイレ』。

 もうひとつは、山作業後の泥や油汚れをサッと洗い流せる『簡易シャワー室』だ。

「大岩さん、このバイオトイレ、杉とヒノキのバイオチップを撹拌する電動モーターと暖房便座の配線、完璧どすえ〜」

「おうよ! トイレ自体が水を使わねぇ自己処理型なのはもちろん、手洗いやシャワー室の生活排水の方も、山頂からの清流を一切汚さねぇよう、綺麗に浄化する特殊なバイオ浄化タンクを埋め込んであるからな! シャワー室はLPガスボイラーと高圧ポンプで、冬場でもあつあつの湯が勢いよく出るぞ!」

 完成したバイオトイレの扉を開けた葵が、中に入った瞬間、目を丸くして歓声を上げた。

「……っ!? な、なんっすかこのトイレ……!! 杉とヒノキの良い匂いがして、暖房便座であったかくて、センサー自動照明までついてるっす……!! 工事現場の仮設トイレのイメージが完全に崩壊したっす……うちの家のトイレより快適っすよーーー!」

「ふふっ、現場で働く葵ちゃんや、遊びに来る深雪ちゃんたちが気持ちよく過ごせるのが一番ですからねぇ♪」

 結がおっとりと微笑むと、シャワー室の脱衣所を検分していた白石まひろも深く頷いた。

「これなら夏のガサガサや、冬の炭焼きで真っ黒になっても、サッとシャワーを浴びて着替えられるさね。結さん、大岩の棟梁、最高の設営だよ」

 

 夕方、出来上がった『一条山現場事務所』の内装セットアップが完了した。

 一階には、天のアドバイスで電柱から仮設電源が引き込まれ、壁一面に設置された『マキタブルーのツールラック』が眩しく輝いている。

 マキタの四十ボルトマックス急速充電器と予備バッテリーが整然と並び、作業環境は万全だ。

 中央には大型の作業台と冷蔵庫が置かれ、キャストアイアンの薪ストーブの上ではケトルがシュンシュンと心地よい蒸気を上げている。

 作業台には休憩用の温かい和紅茶やホットレモネードが用意され、甘酸っぱく芳醇な香りを漂わせていた。

 階段を上がった二階は、畳敷きとフローリングが融合した居心地抜群の休憩スペースだ。

 壁には結が作成した『一条山・年間開墾工程表』と、深雪がクレヨンで描いた山とサンバーの絵が額縁に入れて飾られている。

「……ん……プレハブ……ひのきの匂い……すっごく好き……」

 二階の綺麗な畳の上で、深雪がコアラのように天の背中に張り付きながら、ほかほかの焼き芋を小さな手で大事そうに持っていた。

 その隣では、おかっぱ頭に朱色の着物を着た山神様・かみちゃんが小さなモコモコ半纏を着て正座し、深雪と仲良く焼き芋を半分こして幸せそうに頬張っている。

「さあ! 大岩さん、職人の皆さん! 今日は本当にありがとうございましたぁ。温かいうちに特製のお振る舞いを召し上がってくださいねぇ♪」

 結がローテーブルの上に広げたのは、一条山の清流で獲れたヤマメの塩焼き、丹波栗の栗ご飯、自家製のジビエ燻製とあつあつの豚汁だ。

「うひょー! 結さんのお振る舞い、相変わらず料亭レベルで美味すぎる!」

「このバイオトイレとシャワー室、俺たちの現場にも欲しいくらいだなぁ!」

 職人たちが舌鼓を打ち、大笑いしながら薪ストーブのケトルで淹れた香ばしいほうじ茶で乾杯した。

 窓の外を見やれば、夕闇が迫る一条山の広場に、完成したプレハブ事務所の暖かな明かりとバイオトイレの優しいランプが灯っていた。

 モモタロウピンクのサンバートラックと、まひろのバイクが静かに並び、明日運ばれてくる頼もしい重機たちを迎え入れる準備は完璧に整っている。

「ふふっ、立派な現場事務所と快適なお手洗い、シャワー室が綺麗に整いましたのえ。これで明日、葵ちゃんが連れてきてくれる重機たちの受け入れもバッチリどすえ〜♪」

 結がおっとりとほうじ茶を口に運ぶと、膝の上のカモくんが「きゅっきゅ〜♪」、カイくんが「ワン!」と誇らしげに声を揃えた。

 かみちゃんは大福のように福々しい笑顔で「コクリ!」と大きく頷き、着物の袖から山で見つけた一番形の整った小さな水晶の原石を二つ取り出すと、大岩棟梁と結の手元へそれぞれポトンと手渡したのだった。

「おっ、山神様からのボーナスか! こいつは縁起がいいや!」

 暖かな薪ストーブの火と、職人たちの笑顔。

 一条山開墾の最高の拠点が、いまここに堂々と完成したのだった。

【あとがき】


最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第二話では、これから始まる山開墾の要となる「現場事務所」と、みんなが気持ちよく過ごすための「バイオトイレ&シャワー室」の建設を描かせていただきました。

工事現場の仮設トイレといえば無骨な印象になりがちですが、結さんのスパコン計算と職人さんたちの技、そして温かなこだわりが詰まった最高に居心地の良い空間に仕上がりました。

目を丸くして大喜びする葵ちゃんや、薪ストーブの傍らで仲良く焼き芋を分け合う深雪ちゃんやかみちゃんの姿に、ほっこりしていただけたなら幸いです。


次回はいよいよ、葵ちゃんが連れてきてくれる頼もしい重機たちが一条山へ到着し、開墾作業が本格始動します!


「面白かった」「バイオトイレの快適さに感心した」「重機の活躍が楽しみ!」と思っていただけましたら、ページ下部の【★評価】やブックマーク登録、温かい感想をいただけますと執筆の大きな励みになります。


それでは、また次の物語でお会いしましょう。

天照(Bar風花)

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