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『一条山開拓記』閑話:モモちん特製部隊章ワッペン

【前書き】


※本エピソード(一条山開墾記)は『Bar風花』本編の設定をベースにしたスピンオフ/パラレルストーリーです。

※本編との時期・時系列に一部独自のアレンジやIF要素が含まれますが、白黒赤三人娘と結社長の賑やかな日常をお楽しみください!


錦秋の一条山。急傾斜を降りてきた山親方・まひろの左肩には、遠目には特殊部隊章と見紛うばかりの武骨で渋い円形パッチ。

けれど、そこに刻まれていたのは……愛らしくデフォルメされた現場の小さな相棒「モモちん」の顔でした。

ガチすぎるミリタリー規格に込められた、現場の安全祈願とちょっぴり重すぎる(?)愛。

山仕事を終えた夕暮れ、それぞれの愛機を走らせて向かうのは、いつもの止まり木『Bar風花』。

サクサクの和牛パイ包み焼きと、シナモン香る温かなホット・トディを片手に、どうぞごゆるりとお楽しみください。

第一章:肩口の精鋭パッチ

 

 木々が鮮やかな錦に染まり、朝晩の澄んだ冷気に冬の足音が混じり始めた十一月上旬。

 一条山の南東斜面に広がる危険木伐採の現場で、タイガーストライプのブッシュハットを目深にかぶった白石まひろが、色とりどりの落ち葉を踏みしめながら、足場の悪い急傾斜を軽やかな身のこなしで降りてきた。

 その使い込まれたオリーブドラブのフィールドジャケットの左肩——パッチ装着用のベルクロ(面ファスナー)部分に、見慣れない渋い円形ワッペンが誇らしげに貼り付けられていた。

 直径八十ミリ、堅牢な高密度ナイロンツイル地。遠目には米海軍特殊部隊や陸上自衛隊の空挺部隊章と見紛うばかりの、武骨極まりない佇まいを放っている。

 しかし、玉掛けワイヤーを束ねていた黒木葵が、その刺繍を凝視した瞬間——。

「……っ!? ま、まひろ先輩! その左肩のワッペン……!!」

 葵は作業用ヘルメットの下で、大きな目をまん丸に見開いた。

 パッチの中央に緻密な糸運びで刺繍されていたのは、両前足をきゅっと揃え、つぶらな黒い瞳でこちらを見上げる、愛らしくデフォルメされたモモちんの顔だった。

 小さな頭の上には一条山自生の和ハーブ(ハッカ)の葉がちょこんとあしらわれ、背景には山師の象徴である交差した二本の手斧(ハチェット)が控えめに配置されている。

 さらに、上下のアーク枠に刻まれた英文字は——

 上部:『AIRBORNE GLIDER SQUAD(滑空空挺部隊)』

 下部:『MOMO-CHIN / M-01』

 文字色はミリタリー感あふれるFDE(フラット・ダーク・アース)カラーのマットな刺繍糸で、寸分の狂いもなくバシッと縫い上げられていた。



 

第二章:重すぎる愛と現場の安全祈願

 

「……まひろ先輩、その肩のモモちんワッペン、なんすかそれ! 完成度高すぎるっすよ! 遠目から見たら完全にガチの特殊部隊章にしか見えないっす!」

 葵が素の声を上げて驚嘆すると、作業道の下からアロハシャツの上に厚手の防寒ベストを羽織った赤城遥花が、チェンソーの燃料缶を抱えて駆け寄ってきた。

「ウチも思ったッス!! 遠目から見て『米陸軍特殊部隊』かと思ったのに、近づいたらモモちんッスか!! 超絶エモいッス!!」

 まひろは至って真面目な顔のまま、左肩のワッペンをポンポンと手のひらで叩いた。

「これかい? 風花町の街道沿いにある老舗刺繍屋の親方に、ミリタリー規格の高密度ナイロン糸とベルクロで特別に誂えさせた特注品さね。山林で枝やササに引っかかっても、絶対に千切れたり剥がれたりしないヘビーデューティー仕様だよ」

「わざわざ米軍規格で特注したんッスか!? モモちんへの愛が重すぎるッス!」

 遥花が腹を抱えて笑い声を上げていると、まひろのジャケットの左胸ポケットから、ぽこっと小さな灰褐色の毛球が顔を覗かせた。

 本物のモモちんである。

 モモちんは、自分の顔が緻密に刺繍された肩のワッペンを「ちっちっ」と鼻先で器用に突っつくと、納得したように目を細め、再びポケットの奥へと潜り込んで「カリカリ……」と和胡桃を削り始めた。

「右肩には『一条山農林・現場識別章』、左肩には『モモちん部隊章』さね。これを身につけてると、山の小さな命への誓いと、現場の安全第一に自然と背筋が伸びるんだよ」

 まひろがハスキーに笑い、左腕のプロトレックで気圧傾向をチェックし、梢を揺らす大気から風向きを真剣な眼差しで見定めた。

 胸ポケットには温もりを宿した本物のモモちん、左肩には本気仕様のモモちん部隊章。タフな山親方の完璧すぎるギャップ装備に、危険作業が続く張り詰めた現場が一瞬で温かな笑いに包まれた。



 

第三章:完璧なる法務と安全助成金

 

「……お見事! 現場の安全意識向上と、チームの士気高揚を見事に両立させておりますえ〜♪」

 斜面の下、安全通路が確保された作業道から、バインダーを抱えた一条結が長い黒髪を揺らして優雅に歩み寄ってきた。

「結社長! モモちん部隊章ワッペン、現場への実戦配備完了っす!」

「全員の士気、最高潮ッス!」

 葵と遥花が揃って敬礼を決めると、結はおっとりとタレ目を細め、計算データが整然と並ぶタブレット画面を提示した。

「ええ。本日の『作業安全衛生管理およびチームビルディング備品整備事業』ですが、厚生労働省の【労働環境改善推進助成金】における安全衛生意識向上枠の要件を、百パーセント完璧に満たしておりますのや〜♪」

「おや、結社長。モモちんのワッペンを刺繍屋で作ったのにも、お上から補填が出るのかい?」

 まひろが面白そうに眉を上げると、結は上品な京言葉で微笑みを深めた。

「もちろんどすえ、まひろちゃん。作業員の安全意識を明確にし、現場の視認性と一体感を高める統一識別装備の導入には、正規の安全衛生助成金が適用されますのや。今回の申請通過により、老舗刺繍屋さんへの特注製作費が全額補填され、さらにモモちんワッペンを誇らしく装着して安全作業にあたったみなさまへ、正規の『安全衛生推進特別手当』ならびに現場安全手当が全額支給されますのや〜♪」

「結社長、マジで神の中の神社長ッスーーーー!! 可愛いワッペンに癒やされまくった上に手当まで満額支給とか、一条山農林は向かうところ敵なしッスよーーー!!」

 遥花が抜けるような秋晴れの青空を仰いで歓喜の声を上げ、錦に染まる一条山に弾けるような笑顔が広がっていった。



 

第四章:夕陽の街道と三台の咆哮

 

 やがて太陽が西の稜線へと傾き、山林の紅葉が夕陽を浴びて深紅に染まり始めた夕暮れ時。

 無事故無災害で本日の伐採作業を終えた三人衆は、泥を綺麗に洗い流した社用車のサンバーをプレハブ拠点の駐車場へと収めた。事務所の更衣スペースで作業着から私服へと手早く着替え、それぞれが駐輪スペースに留めてあった愛機へと歩み寄る。

「よし! 本日のモモちん部隊章デビュー作戦、これにて完全完了ッス!」

 ヴィンテージミュシャ柄のアロハシャツの上に防寒ベストを羽織った遥花が、愛機——ホンダ・CBR900RR FireBlade “MYSTIC EAGLE”(SC28改)のシートへ飛び乗った。

 カウルをすべて剥ぎ取ったアグレッシブなストリートファイター仕様。大型丸目一灯の武骨なフェイスに、アップライトなパイプハンドル。クリスタルホワイトの車体を焼き尽くすように走るインフェルノナパームの鮮烈なフレアラインが、夕暮れの斜光を浴びて妖しくギラついている。

 遥花は、タンク上面のセンターに鎮座する天直伝の『血の十字架(ブラッド・クロス)』のステッカーと、タンク両サイドに宿る『MYSTIC EAGLE IV』の美しいヴァルキリーノーズアートへ愛おしそうに指を這わせ、ペタッと燃料タンクを叩いて快活に笑った。

 その隣で、地雷系ファッションに身を包んだ葵が歩み寄ったのは、スズキ往年の名車——RG250Γ『ウォルター・ウルフ(Walter Wolf)』。

 紺と赤のワークスカラーを纏ったレーサーレプリカ草創期の伝説的マシンだが、葵の手によって純正フルカウルは潔く剥ぎ取られ、大型丸目一灯とアップハンドルで武闘派ネイキッドへと仕立て直されている。

 何より異様な凄みを放つのは、車体下部でとぐろを巻く『SRSスガヤ』の当時物レーシングチャンバーだ。ヤフオクで落札した無残な凹み品を、葵自らがガスバーナーで炙り修整して耐熱ブラックを丹念に焼き付けたDIYの結晶である。

 天が手掛けた既存サスの精密オーバーホールと高粘度フォークオイル、そしてニッシンのラジアルポンプマスターとベスラパッド。足元にはバイアス最高峰のグリップを誇るダンロップ『TT900GP』が履かされ、二次減速比はショートに振られている。低速トルクは完全にスカスカだが、七千回転を超えた瞬間にフロントが軽々と浮き上がる強烈な「ドッカン2スト」——軽量百三十キロ台の車体を、繊細なクラッチワークと高回転維持だけでねじ伏せる葵の相棒だ。

 そしてまひろは、ブッシュハットを脱いでオフロードヘルメットを被ると、タフなホンダ・XR400R『Street Tracker』へと跨がった。

 エンデューロレーサーの獰猛な骨格に、他車種のフューエルタンクを流用したスカチューン・チョッパー仕様。自家塗装されたメタリックディープグリーンの外装が、夕暮れの薄暗がりの中で妖しい深みを見せている。

 バッテリーも電装ボックスも撤去されたスカスカのフレームワークの真ん中には、ボアアップによって排気量を拡大された空冷ビッグシングルの巨大なシリンダーヘッドが鎮座し、鋭利な冷却フィンが荒々しい機能美を誇示していた。延長フォークでカチ上げられた車体にはワイドなスーパーバイクハンドルが組まれ、右サイドを這う極太エキパイの先には、エンド皿の枚数を絶妙に間引いて排圧と音量を調律したスーパートラップマフラーが鈍く光る。フェンダーレスの二十一インチ大径フロントホイールと、軽量アルミドリブンスプロケットでローギアード化された足回りは、大地を力づくで蹴飛ばす気迫に満ちていた。

「みなさん、本当にお疲れ様でしたえ。……さあ、今夜は『Bar風花』で、美和さんと千草さんがワッペン完成を祝う最高のお料理をご用意して待っておられますのや〜♪」

 結が現場用愛車である三菱・パジェロイオの運転席から窓を開けて手を振ると、三人衆はヘルメット越しに満面の笑みを交わし合った。

「っすーーー!! 美和さんのご馳走っす!!」

「あはは! 今夜のご飯も楽しみだねぇ」

「無事故無違反で安全運転ッスよーーー!! 残高三十八円の魂のガソリン、今夜のフルコースで満タンにしてご機嫌で快走ッスよーーー!!」

 ギュンッ、と遥花がセルボタンを押し込んだ瞬間、天の狂気的な精密チューンが施された893ccの心臓部が目覚めた。

 Keihin FCR39レーシングキャブが「キュコココッ……!」と鋭利な吸気音を刻み、鏡面ポートとヨシムラST-1ハイカム、そして零点零一グラム単位で重量バランスを取られたクランクが、一切の不快な微振動を消し去って滑らかにアイドリングを刻む。遥花が軽くスロットルを煽ると、月木レーシング製『アレーテ・デクスター』の手曲げエキパイから、高回転へ向けて突き抜ける甲高い「龍の咆哮」が山あいに木霊した。

 そこへ、葵がキックペダルを踏み下ろす。

 一発の点火で目覚めたRG250Γのスガヤチャンバーから、青白い排気煙とともに甘い2ストオイルの芳香がふわりと立ち上った。

 アイドリングの「ポツポツポツ……」という乾いた小刻みな排気音から、葵がアクセルを軽くスナップさせた瞬間、「キンキンキン! パァァァン!!」と金属が弾け飛ぶような鋭利な高周波サウンドが鼓膜を震わせる。

 トドメは、まひろのXR400Rだ。

 セルモーターなどという軟弱な装備は最初から存在しない。手元のデコンプレバーを引き、キックペダルをゆっくり踏み下ろしてピストン上死点を慎重に探り当てると、一瞬の静寂の後、ジャングルブーツの踵を全体重で一気に振り抜いた。

 ズドンッ……!!

 超ハイコンプの空冷ビッグシングルが火を噴き、スーパートラップの皿の隙間から「ドコドコドコ……ドカン!」と大地を揺さぶる重爆音の低音波が吐き出された。

 直四FCRの吸気音と龍の咆哮、パラツイン2ストチャンバーの甲高い破砕音、そして単気筒の地響きビート。

 個性の極限を詰め込んだ三台の排気音が夕暮れの山あいに圧巻の三重奏を奏で、パジェロイオを先頭に、茜色に染まる風花町の街道へと颯爽と駆け下りていった。



 

第五章:『Bar風花』の温もりと極上の一皿

 

 夜の八時。

 秋の冷涼な夜風が静かに吹き抜ける路地の奥、古風な真鍮ランタンが暖かな灯りを落とす『Bar 風花 -kazahana-』の重厚なオーク材の扉を開けると、ほのかに漂う桜の花の甘い香りと、程良く空調の効いた澄みきった温もりが一行を優しく包み込んだ。

 磨き上げられた鉄刀木の一枚板カウンターが、間接照明のアンバー色の光を吸い込んで静かに艶めき、奥の戸棚ではバカラやリーデルのクリスタルグラスが透明な輝きを整然と放っている。

「いらっしゃい、みんな。まひろちゃん、モモちんのワッペン見せてちょうだい」

 カウンターの向こうで、右目がワインレッド、左目がアンバーの神秘的な異色瞳を愛おしそうに細めた美和が、穏やかな微笑みで迎えてくれた。その隣には、クラシックスタイルのメイド服を着こなした千草が控え、静かに一礼する。

 まひろがフィールドジャケットの左肩を差し出すと、美和と千草は身を乗り出して目を輝かせた。

「ふふっ、本物のミリタリーパッチみたいに格好良いのに、モモちんのお顔がとっても愛らしいわね。刺繍屋さんの技も見事だわ」

「はい、わたくしもとても温かい気持ちになりました」

「美和さんッッーーーー!! 千草姉さんッッーーーー!! 今夜も神々しすぎて語彙力が完全に蒸発するッスーーー!!」

 黒革張りのローチェアーに腰を下ろした三人衆。まひろのジャケットの胸ポケットからは、安心しきった様子のモモちんがぽこっと顔を出している。

 そこへ、千草の手によって、ふくよかな香気を放つ大皿が恭しく運ばれてきた。

 今夜のワッペン完成お祝い特別膳——千草が腕を振るった『A5ランク松阪牛と一条山キノコ・和胡桃の特製和風パイ包み焼き』と、『一条山プレハブの薪ストーブで焼き上げた極上蜜焼き芋の出汁ポタージュ』である。

「どうぞ、わたくしからの感謝と祝福のお料理です。熱いうちに召し上がってくださいね」

 ナイフを入れると、黄金色に焼き上がったパイ生地がサクッと小気味よい音を立て、中から松阪牛の濃厚な肉汁と、一条山で採れた和胡桃の香ばしい湯気が一気に立ち上った。

「……美味いっす!! パイがサクサクでお肉がジュワッとして最高っす!! モモちんワッペンの後のパイ包みは格別っす!!」

 葵が目を輝かせて頬張ると、まひろと遥花も豪快に箸を進めた。

「……ッハーーー! こいつは五臓六腑に染み渡るねぇ! モモちんへの想いを形にして、こうして仲間と極上の飯を囲む……これ以上の贅沢はないさね!」

「脳汁ブースト限界突破ッスーーーー!! 美和さん、千草姉さん、一生ついていくッスーーー!!」




第六章:風花・部隊章クリスタル・ホット・トディ


 幸福な食事の余韻が漂うカウンターへ、美和が静かな所作で温かみのある耐熱トディグラスを差し出した。

 それは、モモちん部隊章の完成を祝して仕立てられた特製ホットモクテル『風花・部隊章(パッチ)・クリスタル・ホット・トディ』だった。

 丁寧に沸かされた一条山の清らかな天然水をベースに、風花町産の完熟柑橘シロップと自家製和ハーブ、和三盆を合わせ、グラスの縁には部隊章の刺繍糸(FDEカラー)に見立てたシナモンスノーが美しくあしらわれている。

「部隊の安全と、みんなの温かい絆に乾杯ね」

「乾杯どすえ〜♪」

 結と天、そして三人衆もグラスを胸の高さへと静かに掲げ、互いに微笑みを交わしながら目礼した。

 グラス同士を打ち合わせるような無粋な真似は決してせず、温もりを湛えたグラスをスッと掲げるだけで心を通わせる——Bar風花ならではの凛とした、優雅な乾杯だった。

 グラスを傾けると、柑橘の爽やかな酸味とシナモンのスパイシーな温もりがふわりと鼻腔をくすぐり、一日山で冷えた身体を芯から解きほぐしていった。

「あおい……まひろ……はるか……肩のモモちん……かっこよかった……。がんばった……みんなに……やきいも……あげる……」

 隣のローチェアーで、事務所の薪ストーブから焼き上げて持参し、千草が厨房で優しく温め直してくれたアツアツの蜜焼き芋を頬張っていた深雪が、黄金色の瞳をパチパチと瞬かせて覗き込んできた。

「深雪ちゃん! まひろ先輩の肩のモモちんワッペン、めちゃくちゃ強くて可愛かったッスよ!」

 遥花が身を乗り出して満面の笑みを見せると、深雪は満足そうに「ん……」と頷き、蜜が溢れる焼き芋の半分をカウンターの小皿にそっと置き、小さな和胡桃を一粒、ポケットのモモちんの手元へ優しく差し出した。

「……ワッペン……かっこいい……。やきいも……はんぶんこ……」

「……っ〜〜〜〜!? 深雪ちゃん……! ありがとうッスーーー!!」

 遥花が感激のあまり胸を押さえ、葵とまひろも温かな笑顔で焼き芋を分け合った。ポケットの中のモモちんも、小さな前足で和胡桃を器用に抱え、嬉しそうにカリカリと音を立て始めている。

 プロとしての技術と自覚、仲間や小さな命への溢れる愛。

 そしてその成果を胸に、夜は『Bar風花』の温もりの中で、かけがえのない家族と至福の時間を分かち合う。

「ふふっ、美味しいものをたくさん食べて、心もお腹も満たされたことだし、明日からも安全第一でね」

 美和がカウンター越しに手を伸ばし、葵、まひろ、遥花、そして深雪の頭を優しく撫で下ろした。

「「「ご安全に!!!!」」」

 アンバー色の光が優しく満ちる『Bar風花』の店内に、誇らしげなモモちん部隊章と仲間たちの温かな笑い声が、どこまでも静かに溶け込んでいくのだった。

【あとがき】


『閑話 モモちん特製部隊章ワッペン』をお読みいただき、本当にありがとうございました!

今回は、前話で一条山の仲間入りを果たしたモモちんへの愛が爆発した、まひろ先輩の特注部隊章ワッペンのお話でした。

タイガーストライプのブッシュハットに、米軍規格のベルクロパッチ。

遠目から見ると完全にガチの特殊部隊なのに、描かれているのはミントの葉を乗っけたモモちんという……このギャップこそが、無骨で優しい山親方・まひろの真骨頂ですね。

胸ポケットの本物と肩の刺繍が並ぶ姿は、現場の安全を守る最高のお守りです。

そして第四章では、三人衆の愛機のディテールも思い切り書き込ませていただきました!

天ちゃんの狂気的な精密チューンが唸る遥花ちゃんのCBR900RR(SC28改・ストリートファイター仕様)、葵ちゃんの白煙香るRG250Γ、まひろ先輩のXR400Rの単気筒ビート、そして先導する結社長のパジェロイオ。

それぞれのマシンの鼓動が重なる夕暮れの山あいは、書いていて胸が熱くなるシーンでした。

残高38円でも魂で快走する遥花ちゃんのバイタリティ、本当に大好きです(笑)。

現場で泥と汗にまみれたあとは、千草さんの極上パイ包み焼きと、美和さんが仕立てるFDEカラーのシナモンスノーをあしらったホット・トディ。

深雪ちゃんの「はんぶんこ」のように、仲間と分け合う温もりと美味しいご飯があれば、明日も笑顔で現場へ向かうことができます。


もし「モモちんワッペンが欲しくなった!」「三台の排気音に痺れた!」「千草さんのパイ包み焼きがたまらない!」と感じていただけましたら、画面下の【★評価】やブックマーク、温かなご感想などをポチッといただけますと、次のお話を紡ぐ大きな励みになります!


明日からも、みんなで元気にご安全に!

天照(Bar風花)

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