表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法禁止の世界で魔法少女をやる馬鹿 〜みんなも魔法使いなのに、今飛んでるのはわたしだけ〜  作者:
最終章 魔法禁止の世界で魔法少女をやる馬鹿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/59

第55話 片桐芽衣

 その女の子の目は真っ赤で、その顔は今にも崩れてしまいそうで。けれども強い意志のようなものを感じる。わたしを呼ぶ声に、嘆きも諦めも混ざらない。


 女の子はしゃがみこんで、自分の右耳に両手を当てた。指先で耳たぶを掴んで、思いっきり引っ張っている。


「こんなものっ、こんなのがあるから、私は……私だってっ!」


 留め具はびくともしなかった。赤くなった指先が、耳から離れてわたしに近づいてきた。感覚がなくて取れてしまったんじゃないかと思える右手に、人の体温を感じた。


 目と目が重なり合う。女の子は、一切ブレることなくわたしを見つめている。


「私が助けるから、私にしかできないことをしてみせるから」


 手からぬくもりが遠ざかって、今度は首筋に柔らかいものを感じた。


 薄れる意識の底で鈴の音が響いている。その子の耳元で赤いランプが高速点滅している。


「だめ……だよ……芽衣ちゃ……魔法を……みんな見てる……」

「そんなの関係ないっ!」


 頬を伝う涙が滴り落ちてきて、わたしの肌にぶつかった。


「私は、正しいことのために力を使うっ!!」


 喉が微弱な熱に覆われる。痛くない、むしろ心地いい。


 だけど、それよりも体温が失われていく速度のほうが早い。感覚は遠く自分は希薄に、必死に助けようとしてくれるその顔すらも、暗くなっていく。


「なんで……ダメ……! はるかさん、目を開けて、頑張って……私は、私が、必ず……必ず……!」


 手が震えていた。間に合わない。もういいんだよ、って言おうとした。


「そうか、君がはるかの」


 尽きてしまいそうな意識が、足音と声を聞いた。


 その瞬間、わたしたち二人を覆うように竜巻のような砂埃が舞った。


「……その鈴は魔法の力を吸い上げている。ただのセンサーなどではない」


 ふっ、と光り続けていた赤いランプが沈黙した。


「強く願いなさい。自分になら必ずできると、奇跡は現実のものだと信じるんだ。それが魔法の本質」


 赤らんだ顔の芽衣ちゃんは、涙を拭おうともせず声の主と目を合わせた。


「願う……」

「大丈夫。魔法は必ず君の夢を叶えてくれる。彼女を助けたいのだろう」


 芽衣ちゃんが深く頷いた。


 その人、師匠は帽子を取って頭を下げた。


「どうか、この愚か者の尻拭いをしてほしい」


 芽衣ちゃんは片手をわたしの首に添えたまま、反対の手で自分の目元を拭った。


 深く息を吸って目を開くと、緊張が隠れて頬が緩んだ。


「私が、必ずはるかさんを助けるから」


 その顔を見るだけで、胸のざわめきも、全身の脱力感も消え去った。


 首元の熱が広がった。肌の感覚が戻ってくる。心臓は身体中に血液を巡らせ、死にかけていた筋肉が活動を再開する。皮膚から汗が吹き出して、体温が戻った。


 わたしはわたしを見つける。自分はまだここにいる。


 親友の顔を見る。たまらなく嬉しくなって、笑顔が隠せない。


「ありがとう」

「ううん。お礼を言うのは私の方だよ。ありがとうはるかさん」


 明るくなった視界が、わたしの一番好きな笑顔でいっぱいになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ