第41話 いつだって、夢見がちな女の子なんだよ
芽衣ちゃんの叫びにぎょっとして、わたしものけぞってしまった。
「あ、芽衣ちゃん、突然どうした、あ、あの、そういうのはあんまり、大きな声で言わないほうが」
手を振ってやめさせようとしても、芽衣ちゃんはそれを突き破ってきた。
「自分は言ってるじゃない、自分は好きなだけ言って、みんなに嫌われても、犯罪者扱いされても、それでも正しいって何度も、何度も何度も言ってた!」
思いっきり首を振って、涙を撒き散らしながら芽衣ちゃんは叫んだ。その声には嗚咽とうめき声が混ざっている。
痛いくらいの強さで、芽衣ちゃんはわたしの二の腕を掴んだ。
「あれは全部、嘘だったの……?」
「ない、ないよ、そんなはずない、わたしは今でもずっと正しいって信じてる。師匠は認定の魔女になって内側から変えてみるのも一つの手だって言ってくれたから」
腕で、芽衣ちゃんの火のような体温を感じていた。
「そんなの違う、絶対に違うもん、認定の魔女なんて、少しも正しくない」
「一旦、落ち着いて、ね? 本当の……周りを気にしないのは、芽衣ちゃんらしくないよ」
わたしたちは抱き合うように密着していた。ぎらぎらの目が、剥き出しの歯が、涙でぐちゃぐちゃの顔が、わたしを胸元から見上げている。
「なにかを怖がるのははるかさんらしくない! わた、私は、そんな姿は見たくない……」
表情がへなへなと崩れていって、それを隠すように芽衣ちゃんは両手で顔を押さえた。
「ねえどうして、なんで芽衣ちゃんは……師匠がわたしを利用してるって思うの」
顔を押さえたまま、芽衣ちゃんは左右に首を振った。
「あの人の耳には、鈴なんてついてない。私たちの方なんて……見ようとしてない」
「それはね、わたしも思ったよ、けどね、きっとそういう決まりなんだ、悪気があってやってるわけじゃ……」
ないと思う――その言葉が出てこない。
師匠はいつだって、鈴の音に怯えていない。
嗚咽混じりに芽衣ちゃんは言った。
「私ね……毎月手紙を書いてたの……規制を緩める方向に働きかけてほしいって……」
「ぇ……芽衣ちゃんも」
「だけど、あの人は一回も返事を返してくれなかった。バラエティ番組なんかに出演してる時間はあるのに……私のために時間を使ってくれなかった……」
すすり泣く声だけが、聞こえていた。
そうだ、わたしだってずっと署名入りで送ってたのに、一度たりとも返事はもらえなかった。なのに師匠は、ずっとわたしを探していたって言ってた。
変だな、それって。おかしいな、それって。
盗聴器だって、なんで反対してくれないんだろう。
芽衣ちゃんの肩に腕を回した。汗で濡れた背中を、軽くさすった。
「ねえ、芽衣ちゃんは、わたしにどうしてほしいのかな?」
途切れ途切れの、涙混じりの返事がやってくる。
「約束を……守ってほしい……私を助けてほしい……」
それは、あの日誓った言葉。
わたしの一番の夢。
絶対に叶えなくちゃいけない、約束。
「大丈夫だよ、忘れてない。だってわたしはね」
芽衣ちゃんの首に手を回す。永久凍土のように冷たい留め具を、指の腹でなぞる。
耳元に口を寄せて、ささやいた。
「いつだって夢見がちな女の子なんだよ」
身体全体で、芽衣ちゃんを抱きしめた。
困っている親友の震えが、ほんの少しでもおさまるように。
師匠と目の前にいてくれる芽衣ちゃん、どちらかを選ばなきゃいけないのならわたしは――




