表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法禁止の世界で魔法少女をやる馬鹿 〜みんなも魔法使いなのに、今飛んでるのはわたしだけ〜  作者:
第二章 わたしの名はトワイライト・ウィッチ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/59

第23話 こういうの「ドブ板」って言うらしいよ

 依頼者のところへ行ってみると、山道で脱輪した車が立ち往生していた。サクッと、でもなく気合を入れて持ち上げてあげると、大学生のお兄さん四人は照れるくらいに感謝してくれた。かわいい子だなんて声が聞こえてくるのも、まぁ、悪い気はしないよね。


「じゃねー」


 手を振ると


「俺らもさ、魔法はもっと人のために使われるべきだって思ってた!」


 と熱く振り返してくれた。


「勝手にら扱いすんなー」


 みたいな軽いノリが聞こえてきたけど、それはよしとしましょう。


 なんだ、最初から好意的な人もいるじゃん。依頼を送ってくるくらいだから当然かもしれないけど。よーし次、次。


『木から降りられなくなった猫を救ってください』


 深夜にメルヘンすぎる依頼、とりあえず行こう。


 小さな子かなと思ったら、依頼者はOLっぽいお姉さんだった。猫ちゃんを助けてあげると、お礼に財布を出してきた。けどそういうのはお断り。


「ごめんなさい、魔法使いさんはお金に馴染みがないのでしたね」


 なにその認識。違う違うと手を振る。


「お金よりも、魔女は悪い人じゃないってみんなに教えてあげて。それが一番嬉しいから」


 都会の夜空を駆け上がると、山とはまた違った、じとっとした空気が額をすり抜けていった。


 火照った身体を冷ますための、上空でのクールダウンが気持ちいい。


『彼に振られたしにたい』


 慰めてあげて、手元で花火のように魔法を弾けさせた。


「魔法ってちょっとだけいいかも……」


 多少は気が紛れたようだった。


『財布を居酒屋に忘れた!』


 もぅしょうがないなあ、近くだから行ってあげる。……届けてあげると酔いつぶれて寝ていて、探すのに苦労した。


「ふひぇ、ひゃー魔法使いってのはべんりべんり、財布を作っちゃった。せっかくだしふたつみっつに……え、違う? なんだぁそうなの」


 おかしな依頼に切実な依頼。選り好みしないヒーローは、たくさんの感謝と笑顔をもらってしまうのだった。



 順調に活動を続けて一週間。SNSではにわかに話題になっていて、知名度はまさにうなぎのぼりだった。たまに殺意の籠もった言葉が送られてくるけど、それは我慢。


 そんな魔女っ子活動にもなれてきた水曜の深夜。雲の多い郊外を低空飛行していた。眼下の住宅地に明かりはほとんど見えない。みんな夢の中のようで、依頼も止まっている。


 地上のトラブルに目を光らせながら、片手で口を押さえた。


「ふぁあ、今日もいっぱい頑張ったなあ。ツキノワグマを山に返したり、暴走バイクを止めたり……応援のメッセも貰っちゃったし」


 頬が緩んできて口元がだらしなくなる。スマホを取り出してもう一度確認しちゃう。


『華やかな魔法の力に感動しました。イメージとは全然違ってて、怖いなんて感じませんでした。これからも、魔法使いさんだからこそできる活動を是非続けてほしいです。がんばってください』


 全身がむず痒くなってくる。胸が火照って頭の中がふわふわする。ジーンとしびれが広がって、喉で弾けて熱い吐息が漏れた。


 まだ始めたばかりなのにわたしの思いは確かに伝わっている。無駄じゃなかった。やってよかった。魔法はいいものだって人の役に立つんだって感じてくれてる。


「いやぁ、明日こそニュースになっちゃったりして」


 ふへへ、朝が楽しみ。


 英雄、正義の味方、そんなふうに呼ばれたりして。


 あり得る。だってみんなわたしを褒めてくれるし、警察だってあの火事以来出くわしていない。あのノブレス・ウィッチこと師匠もなんにも反応してないし、たぶんこっそり認めてくれてるんだと思う。


 なんてね、ふふ、さすがに妄想し過ぎかな。でも、このまま頑張り続ければ本当に認めてくれるかも。わたしを、魔女を、魔法を。


 そうやって妄想したり依頼をこなしたりしていると、いい時間になっていた。


「今日はこれくらいでおしまいにします。明日の夜もお楽しみに……っと」


 SNSを更新していると、大きなあくびが出た。学校はどっちだったかなあと探していると、ふいに冷たい風が首筋を撫でた。背筋がゾクッとして鳥肌が立った。


 背後に気配を感じた。なにか悪いものが浮かんでいるような気がした。


 振り返るとそこにはなにもなく、変わらず街の灯りが夜を照らしていた。


 無意識に握りしめた手が、少し汗ばんでいた。なにもない、と思ったその瞬間に嫌な気配は消えた。気のせい……ブーと腰のあたりに振動を感じた。


「ひゃあっでたっ……って、なんだおメッセージ」


 ふぅと息を吐きながらスマホを取り出して、内容を確認する。依頼DMみたいだけどなんだか他とは雰囲気が違う。


「同士とコンタクトが取りたい……? なにこれ」


 見れば投稿の存在しないアカウントで名前は「結城」。イタズラかな、頭飛んじゃってるメッセはたまにくるけど、でも、あんまり見ないやり口だ。だって。


「この人魔法使いを自称してる」


『同士トワイライト・ウィッチよ、私は魔法使いだ。あなたの助力が得たい。私は今、窮地に立たされている。一刻の猶予を争う。連絡を待つ』


 デタラメ言ってるだけかもしれない。作ろうと思えばいくらでも設定は作れる。でも、なんか必死な感じだ。本当に魔法使いなのだとしたら、無視するべきじゃないかな。


『詳しいお話を聞かせてください』


 そう返信してスマホの画面を消した。とりあえず連絡を待って、もし具体的な依頼があるのならその時に考えよう。


 五分ほど待ってみたけど、すぐに返事はやってこなかったので、今度こそ学校に向かって飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ