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魔法禁止の世界で魔法少女をやる馬鹿 〜みんなも魔法使いなのに、今飛んでるのはわたしだけ〜  作者:
第二章 わたしの名はトワイライト・ウィッチ

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第14話 親友も魔法を嫌っている

 芽衣ちゃんに詰められてほとんど自供することになった。目を見ていると、隠さなきゃいけないことは全部口から出ていってしまった。


「魔法使いアリスって絵本がね、鍵? みたいになってて、信じられないとは思うんだけど……」


 芽衣ちゃんは食い気味に聞いてきた。


「魔法使いアリス?」

「う、うん、馬鹿みたいな話だけど本当の話、信じてほしい」


 芽衣ちゃんは手のひらを弄りながら、考えを巡らせているのか黙り込んだ。うつむき加減になって、やがて指は止まり顔を上げた。


 笑顔の名残は消えて、無表情だけがあった。


「そんなことがあったのなら、ちゃんと学校に報告するべきだと思う。不可抗力だったんでしょ? 非がないのなら、事実を伝えて指示を仰いだほうがいいよ」


 正座するわたしは、芽衣ちゃんに見下ろされている。


「うん、それって正論だと思うけど……でも、もう遅いかなって、それに……」

「それぐらいのことは黙っていてあげる。私も協力するから、一緒に言い訳考えよう」


 ちらちらと芽衣ちゃんを窺い見る。正論だ、とても正論だ、いつまでも隠していたらどんどん立場は危うくなる。外でのことも、目撃者がいないのなら一度限りの夢として処理できる。


 だけど、それじゃわたしは。


「本音を言うとね、わたし、わたしね、そういうのは嫌なんだ。もう魔法を手放したくない。自分にも、できることがあるんだって思えたから、だから、後戻りはしたくないんだ」

「人助けって言えば聞こえがいいけど、やってることは犯罪だよ?」

「わかってる、わかってるけど、わたしにはどうしても悪いことだって思えない。その自分の気持ちに素直でいたい……お願い、一生のお願い、このことは誰にも言わないでほしい」


 そのまま頭を下げて、土下座のようになった。


 床に額を擦り付けていると、芽衣ちゃんの冷たい声が聞こえてきた。


「人の迷惑を考えているの? はるかさんだけの問題じゃない。魔法の不正利用が明るみになれば私だって疑われる。それ以前に、そのお願いを聞いたら共犯になっちゃう」


 胸が締め付けられる。芽衣ちゃんは正しい。間違ったことなんてひとつも言ってない。


 わたしの我儘で負担をかけて、土下座なんかしたって許されるはずがない。


「私にもご家族にも迷惑がかかって、それでもはるかさんは諦められないの?」

「わた、わたしは!」


 顔を上げる。芽衣ちゃんの目を見つめる。


「もう絶対に諦めたくないんだ」

「誰かが泣くことになっても?」


 自分の思いを信じた。正しいって思うことを、信じた。


 だからわたしは、首を縦に振った。


「うん。そんなことは望んでないけど、この想いには替えられない」


 芽衣ちゃんの大きく開いた目が小刻みに揺れていた。


「そう、そうなんだね。はるかさんは私よりも魔法が好き」


 わたしを映して、まばたきすらも忘れてじっと見つめている。静寂を裂くように、声にならない吐息がわたしの耳に届いた。


 ほどなくしてその息は「馬鹿……」つぶやきへと変わった。


 芽衣ちゃんは立ち上がって、わたしに背を向けた。


「ど、どこ行くの」

「おトイレ。消灯時間とっくに過ぎてるんだよ。早く着替えて、ベッドに戻ったら?」

「う、うん、それはわかるけど、もう少し話がしたいんだ。芽衣ちゃんにはわかってもらいたいから」

「私を説得したいなら力でどうにかしたら? 脅して口止めするくらい簡単だよね」


 芽衣ちゃんの背中が遠ざかっていく。手を伸ばそうとして、伸ばし切れなかった。


「そんなことはできないよ……わたしは正しいことに魔法を使いたいんだ……」


 ぴたりと芽衣ちゃんの足が止まった。


 その場で数秒間立ち尽くして、それからほんの少しだけ上を向いた。


「なら、証明してみせて」

「……え?」

「本当に正しいことをしてるのか、行動で示して」


 ドアの閉まる大きな音が、薄暗い部屋に響き渡った。


「あの」


 戻ってきた芽衣ちゃんは、なにも言わずにベッドへと入っていった。


 静まり返った空間に、ひとり取り残される。


 証明。


 膝立ちのままその言葉の意味を噛み砕く。だらんと垂れ下がった指の先に血が集まって、ほんの少しの熱と痺れを感じる。段々と力がこもって、気付けば握り拳を作っていた。


 見逃してくれたってことだ、たぶん。見守ってくれ――違う、と頭を振る。甘えるな、そうじゃない、言葉通りだ、わたしが嘘つきなのかどうか試されてる。


 自分だって危ないのに、チャンスをくれた。


 そういうことなんだ。


 ぱちんと頬を挟んでひっぱたいた。丸まった背中を見つめた。


「芽衣ちゃん」


 わたしはどうすればいい、わたしはなにをすればいい、わたしがしてやれることはなんだ。


「たくさんたくさん頑張るよ。みんなを笑顔にして、絶対に認めてもらうから。そしたらね、芽衣ちゃんにも魔法は良いものなんだって知ってもらえるから」


 胸の中から込み上げてきた言葉を、息継ぎもせずにぶちまけた。


「いつか一緒に箒に乗ろう。空は嬉しいんだって、教えてあげるから。約束、絶対に約束」


 返事はなく、寝返りを打つ音だけが聞こえてきた。


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