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13 エロに羞恥心は必須事項です

 朝の日差しに目が覚める。

 壁にかけてある時計に目を移せば、針が示すは午前八時。

 俺にしてはなかなか健康的な目覚めだ。

 昨日はその後、俺たちがリーヌ橋の上で寛いでいるとやって来たガブにタルトを引き渡して俺は帰った。

 待ってましたとばかりに手をわきわきと動かすガブを見て、タルトは捨てられた子犬のような顔をしていたが、無視して帰った。

 まあ、いくらガブ好みの銀髪幼女といえど保護対象にそこまで酷いことはしない、と思う。……しないよね?

 やるとしてもせいぜい髪に顔をうずめて匂いを嗅ぐ程度だろう。


 シャワー……浴びるか。

 昨日は風呂に入らずそのまま寝たから、若干べたべたして、肌にまとわりつくような不快感が、完全には覚醒しきっていない頭にじんわりと訴えかけてきている。

 俺は身を起こして、階段を降りると、工房の横を通り、浴槽へとつながる脱衣所の扉を開けた。


「………………」


 その瞬間、視界を占領する磁器のように白い肌。

 しっとりと濡れたそれに水滴が艶めかしく伝っている。

 濡れた金髪が背に張り付き、その隙間からうっすらと見える細い背骨のライン。



 ――そこに全裸のガブがいた。



 こちらに背を向け、綺麗な曲線を描く形の良い胸部を下からすくい上げるようにタオルで拭いているところだった。

 扉の音に反応して首だけを動かしたガブと目が合う。

 そのオッドアイからは何の感情も読み取れない。静かな眼差しだった。


「…………」


 俺はその口が開かれる前に勢いよく扉を閉める。

 そしてすぐさま回れ右。

 その足で通り過ぎたばかりの工房へと舞い戻り、


「ティ姉!なんでガブがうちの風呂入ってんの!?」


 相も変わらず魔導具をいじっているティ姉に詰め寄る。


「朝から元気だなお前。ガブリエルなら今朝、お前に話があるっつってやってきてたぞ」


 ティ姉は視線を手元の魔導具から微塵も動かさず、飄々と答える。


「答えになってねえよ!なんでガブがうちの風呂に入ってんのか聞いてんの!」

「昨日から入ってなかったからティ姉にお願いして借りたんだよ。ティ姉、ありがとねー。いい湯だったよー」

「うおっ!?」


 横から顔を出すのは、首にタオルをかけたガブ。

 こいつ、着替えるの早すぎだろ。

 その服装はへそ出しスタイルにショートパンツという露出度高めのいつもの装い。いつもならそんな服装に対しても特に何も思わないのだが、裸を見た後だとその下を想像してしまって気まずい。

 この服の下に……。


「にひー、それで?どうだった?ルーくん」


 なんとなく目を逸らしていると、ガブが回り込んで意地の悪い笑顔を浮かべる。


「な、なにが?」

「あたしのは・だ・か」


 ガブが耳元に口を寄せそう囁いてくる。

 風呂上がりの温かい吐息が耳に当たり、ぞくっと体を震わす。

 ……なんでこいつこんなに楽しそうなんだよ。


「やめろよ感想求めるの。間違って見ちゃったのは謝るからさあ。羞恥心とかないのかお前」

「なくはないけど……、今はルーくんいじる方が楽しそうだし!それで、それで?乙女の裸を見たんだから何かいうことあるでしょ」


 さも女というものは事あるごとに感想を求めたがるのか、俺は服屋でのタルトとの会話を思い出す。

 なんか最近こういうの多いな。


「あー、うん、綺麗だった綺麗だった」


 事実半分、照れ隠し半分の返答。

 そんな俺のぞんざいな態度に、


「あー!なんかテキトー!」


 などとガブは憤慨したように言うが、よく考えてみてほしい。

 ここで真面目腐った顔をして、「ガブの体はお尻のラインが」とか「メリハリのある健康的なくびれが」とか評論し始まる方がよっぽどやばい奴だろ。彫刻や絵画に対してならまだしも。


「まあ、仕方ないかーこんないい身体を毎日拝んでたら目も肥えちゃうってもんだね」

「あ、おい、やめろガブリエル」


 だが、ガブは俺のテキトーな返事に別の理由付けをしたらしく、突然ティ姉の胸を後ろから鷲掴みにする。

 生まれてこの方俺は姉をそういう目で見たことは一度としてないが、ガブの言う通り客観的事実としてティ姉のプロモーションは抜群である。背が高く、乳がデカく、尻がデカい。ガブが取り回しの良い双剣だとすると、ティ姉は破壊力抜群の大剣って感じだ。


「むー、やっぱり大きいなーティ姉。あたしも小さくはないんだけどなー」


 ティ姉の胸を揉みしだきながら不満げに唇を尖らせるガブ。

 こいつ、女同士でもセクハラが成立することを知らないのだろうか。

 それにしても、ティ姉でこの感じならガブがエレナさんの存在を知ったらどうなってしまうのか……。

 一応二人を剣に例えたのだから、エレナさんも剣に例えると、エレナさんはただの鉄塊だ。それは剣と呼ぶにはあまりにも大きく、分厚く、重く、そして、大雑把すぎる、まさに鉄塊である。


「あはー、肌もさらさらー」

「おい、それ以上邪魔するならぶっ殺すぞ」


 あ、俺には分かる。ティ姉の我慢がそろそろ限界だ。

 セクハラをされているというのに、ティ姉の顔には羞恥の色はない。あるのは作業を邪魔されたという純粋な怒りのみ。


「運動音痴のティ姉がどうやってあたしを殺すってのさ。無理だよ無理」

「おまっ!この!」

「だめだめ。拘束されてるのに闇雲に動いちゃ」


 しかしガブはもがくティ姉を的確に拘束してその肌に手を這わせる。

 やり手だ。やり手のセクハラ野郎だ。

 しかし、あれだな……それなりに見目麗しい二人がくんずほぐれつしているはずなのに、ぜんっぜんエロくないな。

 やっぱ羞恥のないエロとかクソだわ。


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