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メリー

 メリーが突然実家に帰省した。


 帰ってくるのは二学期の始まる日の早朝ぐらいらしい。


 …………。


「ヒューマくん。魔力ぶれっぶれですぞ」


 サーシアが僕の魔力を見て言う。


「す、すいません……」


 サークル室。僕は服を変える魔法の練習していた。


 しかし、魔力がぶれ、魔法の発動がうまくいかない。


 理由は単純、不安だからだ。


 メリーが隣に居ないっていうのがじゃない。それも少しは寂しくあるが、そうじゃない。


 メリーは夏休みが始まる前実家に帰る理由がないと言っていた。


 しかし、メリーは突然実家に帰ることとなったのだ。


 ……嫌な予感がする。


 メリー、夏休み、トゥメルト家。


 罰、暗殺、闇落ち。


 …………。


 大丈夫かな、メリー。


 いや、大丈夫なはず。何も問題はないはずだ、今までのすべてにおいて。


 中間試験は一位、魔法祭だって優勝。メリーには何も落ち度がない。


 なのに、何か不安だった。


 あの漫画のことを思い出せ。なにか分かるかもしれない。あの漫画の中に何かヒントがあるかも……。


 ガラララッ!!


 僕が考え込んでいると、サークル室のドアが思いっきり開く。


「もう限界だ!お前ら、匿ってくれ!!」


 部屋に入ってきたのはコット。


「いきなりどうしたんですか……」


「いきなりじゃねぇよ!」


 コットは勢いよくドアを閉める。


「だって俺は……」


 ピィィィィ!!


 笛の音が聞こえてきた。


「コットォォォォ!!!どこだぁぁぁ!!!」


 この声は……生徒会長か。


「逃がさないぞぉぉぉぉぉ!!!」


 しばらくして、部屋の前を誰かが走り去って行く音が聞こえる。


「あ、あぶねぇ……」


 その音を聞いて、ドアの前で口を押さえていたコットが胸をなでおろす。


「なぁいいだろー?見回りってめんどいんだよ。夏休みだけでもサークルのメンバーってことでどうだ?な?」


「いや、そんな雑なの……」


 僕が反論しかける。


「っていうか、メリーはどうしたんだよ」


 が、コットは僕の発言を遮って僕に質問した。


 こいつ本当に自由だな、相変わらず。


 魔法祭が終わってからたまに休み時間どころか授業中とかにすらA組に遊びに来てるし。


「メリーさんは実家に帰省しました」


「そうなのか。みんな家近くて良いなー」


 ガララッ!!


 またドアが乱雑に開かれた。


「どうもー!見回り暇やから来たでぇ!クソ平和やわこのお金持ち学園」


 ドアを開けたのはネビレ。


「お?ネビレ」


「ん?コットやん」


 二人の目が合う。


「「うぇーい」」


 そして、二人は拳を合わせた。


「サボってんじゃねぇよー」


「君とおんなじサボりくんやで~」


 コットとネビレが仲良さそうに話す。


 この二人仲いいのか……まぁ二人とも強者だもんな。そういうところで意気投合したのかもしれない。


 っと、この二人のことよりも、まずは僕のことだ。


 オリジナル魔法はほぼ完成しているが、最後の仕上げがまだ必要。


 この二人は無視しして魔法の修練にいそしむとしようか。


「おいヒューマー。もしくは……えっと、サーシア先輩?だっけ。かまってよ~」


「せやでー。僕とも遊ぼうやー」


 二人が当然のように椅子に座った。


「サーシア先輩……」


 僕はちらっとサーシアを見る。


「追い出した方がいいでありますか?」


 僕が頷こうとしたとき、


「あ。そういえば、あれだ。面白い話あるぜ」


 とコットが切り出した。


「おっ、なんやなんや?君ら、聞くべきやでー。おもろい話は」


 面白い話か……まぁそんな前置きをするくらいだし、聞き流す程度には聞いてやろう。


「なんと、侵入者は、魔力が一切ないらしい」


 コットが言う。


 魔力が……ない……?


 ありえるのか?生物であれば植物でも魔力は宿るんだぞ。


「信じらんねーよな。ジジィの痕跡魔法?だっけ。魔力の形跡を辿る魔法に一切反応がなかったらしい。魔力がない人間か、はたまた幽霊みたいなやつか。どうなんだろ」


 魔力がない人間……ね。


 …………あれ?


 その人物の話を聞いたことがある気がする。


 なんだっけ、漫画に居たんだよな。


 確かコット暗殺編のキャラクターだったから時期的にもぴったりだし、えーっと、確か……。


 あっ、思い出した。


 トゥメルト家の暗殺部隊、”幽霊”に所属する一人だ。


 名前が公開されてなくて、戦うシーンも一瞬。銀髪の女の子で、一人だけ逃げ切っていたやつ。


 コット暗殺編に登場した暗殺部隊の十人の中で、生き残ったのは確かその子だけだ。


 しかし、コットは魔法祭で優勝していない。つまり、学園に侵入したのはコットの暗殺が目的じゃないというはずである。


 ……何が目的だ?


 なぜこの学園に侵入した?


 どんな意味がある?その行為に。学園に侵入したのがばれたとなればトゥメルト家への信頼にも大きく関わってくるだろう。一体どんな意味が……。


 コット暗殺はない。トゥメルト家がリスクをとる必要もない。


 なんだ?なぜあの女の子は学園に……。


「まっ、君らが考える必要はあらへんわ。生徒会も、一生徒も。」


 ネビレが腰に携えた剣に手を置く。


魔法騎士団ぼくがおる限り、事件は起こる前に解決や」


 魔法騎士団……まぁ、確かに魔法騎士団がいれば安全か。


 漫画でも魔法騎士団と学園長が来た瞬間物語は収束に向かったしな。なにが起こったかは覚えてないけど。


「そんなことより、ヒューマ。君は魔法の練習せなあかんとちゃうか?」


 ネビレが言う。そうだった。つい考えこんでしまったな。


 僕は手にした布の形を少しづつ変える。


「なんやそれ、ドレス?」


 ネビレが聞いた。


「えぇ、はい。物の形を変える魔法で……」


「あー。それじゃあかんわ」


 ネビレが言う。

 

 あかん……ダメってことだよな?今の説明だけで僕に不備があったのか?


「魔法っちゅーのは名前があらへんとなぁ。君、今イメージがうまくできへんやろ?”物の形を変える魔法”って漠然と思ってるんやから。”服飾魔法”とか名前つけな」


 ネビレの言葉に、僕は魔法は名前が大事なことを思い出した。


 名前というのはイメージの中で見た目の次に浮かんでくるもの。人を思い出すときも、見た目の次は名前だろう。


 そうだった。完全に失念していたな。


「あー!完全に忘れてたであります!!」


 サーシアが大きな声を出す。


「それだけやないでー。その魔法はいつ使うんや?どうやって使うんや?誰に使うんや?そーゆー場面のイメージもしっかりできへんと」


 ネビレが続けて言う。


「……なんか私より魔法に詳しいの嫌であります」


 サーシアが口をとがらせた。


「ははっ。僕も一応教師目指そうか悩んどったからなぁ、魔法は詳しいでぇ。才能ないだけで」


 あぁ、やっぱり教師を目指す気ではあったんだな……あの後のナヅ先生との進展は如何程のものなのだろうか。


 それに、才能がないだと?


 あれだけの圧と魔力を放っといてよくそんなことを言えるな……いや、違うか。


 魔法騎士団が果てしなく上澄みなのか。


 っと、そんなことより、この魔法の想像を固めないとな。


 学園に帰ってきたメリーに、この服を着せるために。


 この服を着せる場面を想像しろ。より鮮明に。周りの風景を、メリーの顔を。


「ドレスアップ」


 服は、驚くほど一瞬で思い描いたドレスに変わった。


 完璧だ。


「ええ感じやん」


 ネビレが言う。


 あとは、メリーを待つだけだな。


 お願いだ、メリー。何事もなく帰ってきてくれ。




 早朝の間。


 僕は、いつものように校庭を走り込んでいた。


「ハッ、ハッ、ハッ……」


 魔法祭の訓練でちょっと走っただけなのに、意外と運動が気持ちいことに気付いて、あれからずっとこの時間は走るのが習慣になっている。


 ……そろそろメリーが帰ってきてもおかしくないな。


 僕は休憩がてら校門の近くの建物の陰に座る。


 ここでメリーでも待つかぁ。


 ……キモいかな?まぁいいや、偶然を装おう。朝に僕が走っているのは話したことがあるしな。実質待ち伏せだが……多分バレない。


 あれだ、あれ。お出迎え。そうそう、お出迎えだ。これは。


 僕はふと空を見上げる。


 空が少しだけ明るくなってきていた。


 夏だけど、やっぱり夜は冷えるな。


 早く帰ってきてくれ。


 ……早く、会いたい。


 寂しいよ、僕。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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