思いが全部口に出る魔法
「僕さぁっ!!ミスってもうてん!!」
とりあえずネビレを椅子に座らせ、甘い水を渡す。
ネビレはそれを一瞬で飲み干した。ドンッ!と思いっきり机にコップを叩きつける。
味の感想はなさそうだ。
「どないしたらええんよ!こっからキャラ変えるとかできへんで!?普通に!!」
ネビレが頭を抱えた。
「ははは……」
僕は笑うことしかできない。
「ずっと好きやってん!魔法騎士団入ってから!魔法騎士団のやつら十人全員人殺しみたいな顔しかいねぇのに、一人だけかわいー副団長おるなぁおもて!!人殺してそーではあるけどごっつかわええなって!!」
「どうにか好かれようおもて生意気後輩ポジなったのに!速攻で教師になっちゃうし!!なんやねんほんま!!」
ネビレがわめき続ける。
「水ぅ!!」
そして、コップをサーシアに向けた。
サーシアが水を入れる。そして、水が甘くなる魔法もかけた。
ネビレはまたそれを飲み干す。
「なんやこれ甘ったるいのぉ!!こんな恋がしてみたいもんですわほんま!!」
……それが言いたかっただけだろ絶対。
喋りのなまり的に西のほう出身なのだろうか。
「まぁ落ち着いてくださいよ……ですが、ナヅ先生に近づきたいならネビレさんも教師になればいいんじゃないでしょうか?」
僕が助言をする。
距離を近づけたいなら物理的に近づくのが一番だ。多分。
「なれるかぁ!花形の魔法騎士から!?教師に!?なれるかぁ!!一瞬悩んだけども!!親がキレるわ!」
ネビレが大声でまくし立てる。
わぁ、もう、喋りの勢いが。もう、すごい。
「頼むわ君ら!君らに頼むのは違うのはわかっとる。でも、何とかして僕とナヅちゃんをくっつけてくれや!!」
ネビレが手を合わせる。
「くっつけるったって……ねぇ?」
僕はメリーとサーシアの二人を見た。
ネビレからナヅ先生への好感度の初期値は最悪。しかもネビレはキャラを変える気はなく、明らかに恋愛能力は低そう。
……うん、無理だな。諦めて次の恋を探してもらおう。
「おい男のガキィ!君、あきらめるなや!」
ネビレが立ち上がり僕を指さす。
わぁ、バレた。そんな顔に出てたかな、僕。
「でもくっつけると言いましてもなぁ……あ」
サーシアはメリーを手招き、何か耳打ちする。
「いえ、まだ……」
サーシアの声は聞こえなかったが、メリーが抵抗を示した。
「大丈夫でありますよ!良い感じの実験体が来ただけであります!!」
し、試作品……?
なんか物騒じゃないか?内容は聞こえてないけど。
「僕には全部聞こえてんでー。魔法騎士団舐めんなよ」
ネビレが言う。魔法騎士団って耳までいいのかよ。
「と、とりあえず試すだけでもいいんじゃないんでありますか!?」
サーシアが冷や汗を流しながら言う。
この動揺具合……聞かれたらダメな内容なのかよ。
「えぇ、でもなぁー。上手くいくもんかな?それ」
「いけますいけます!大丈夫でありますよ!!」
「はぁーほんまかいなー。失敗したら泣くでー?僕」
ネビレが嫌そうな視線をサーシアとメリーに向ける。
「物は試しでありますよ!さっ、メリーちゃん!」
サーシアがメリーの背中を押した。
「え、えぇ……」
メリーは少し抵抗しながらも、手のひらをネビレに向ける。
「……魔法」
そして、小声でそう言いネビレに魔法をかけた。
「……なんやこれ。なんも変わらへんやんけ。やっぱガキなんて頼るもんとちゃうな。それになんやねんその聞いたこともあらへん魔法……ん?なんやこれ」
ネビレの喋りが止まらない。
「なんやこれ思ったことが全部口に出てまうぞ!おいお前ガキ!これどないなっとんねん!」
ネビレがメリーを詰める。
「では正しく作用していますね」
メリーが冷ややかな顔で言った。
これが正しく作動……?もしかして、思ったことを全部喋らせる魔法か!?そんなことできるのか、すご!!
……あれ?メリーが研究するオリジナル魔法が決まったのってサークル合宿の途中だったよな?初日はまだ悩んでたけど、二日目からは何やら集中していたし。
っていうことは、たった一日でこの魔法を習得したってことか……?天才だな。
「……確かにな。その通りや。あー恥ずかしガキに完全に論破されてもうた。大人やのに。てか顎疲れるわこれ喋りまくりで」
急激に落ち着いた様子のネビレが再度席に着く。
「……ところで、これでどうするんや?」
そして、サーシアにそう聞いた。
「ふっ……知らないんでありますか?恋を発展させる方法……それは、想いを伝えること。要するに、告白であります!!」
サーシアが自信満々に言い放つ。
「告白ぅ!?」
ネビレは目を丸くした。
「はぁ!?できるわけないやんそんなん!僕生涯を魔法と剣にささげてきたせいで女性関係ゼロやで!?ナヅちゃんからの好感度も最悪やし……無理やろ!!顔はええけどな!!」
「いけます!!私は恋愛百戦錬磨なので、知ってるんであります!!」
サーシアはなぜか自信満々だ。
サーシアって恋多き人生を送っているんだな……そういうイメージ一切ないけど。
「……ほんまやろな?」
ネビレが白い目でサーシアを見る。
完全に疑ってる顔だな。まぁ、僕も疑っているけど。
「おいチビ。やったれ」
ネビレがメリーに顎で指示する。
「はい」
ネビレがメリーに顎で指示する。
メリーがサーシアに手を向けた。
「ちょ、やめっ……」
メリーがサーシアに魔法をかける。
「まずいまずい彼氏なんて居たことないのバレるどうしよう恋愛とか小説でしか知らないよやばい声が聞こえてしまう関係ないことを考えないと。私は海に居る。私は海に……」
あ、やっぱり嘘だったんだ……。
「ほらぁー!嘘やんけぇ!ぶっ飛ばすぞ!!」
「ごめんなさいぃいぃ!!」
……何見てるんだろうなぁ、僕。
そういえば、もとより恋愛相談なんて受ける気なかったんだった。
逃げよ。
僕はこっそり部屋を抜け出そうとする。
背後から、僕を覆うような魔力の気配を感じた。
僕はバッと後ろを振り向く。
……あれ?
気のせいか?
ネビレがサーシアと言い合いをし、メリーはそれをどうでもよさそうに眺めている。
……気のせいか。
とりあえず、今の内だな。
こっそり、こっそり……
「バレてんでー、君」
……マジ?完全に死角でしょ。そっち喋りに盛り上がってたじゃん。
「もっかい言うけど、魔法騎士な。僕」
あ、そういえばそっか。耳もめちゃくちゃいいし、気配とかで人の動きも察知出来たもするのだろう。
「君たちにはナヅちゃんと僕をくっつける大役があるんやからな。逃がさへんで―」
ドアの前に立ちはだかるネビレ。
ガララッ
その時、ドアが開いた。
「……ネビレ。まだいんのかよ。魔力量的にコットかと思ったのに」
現れたのはナヅ先生。
露骨に嫌そうな顔をしていた。
「酷いなぁナヅちゃん。あの子より僕の方が何倍も強いのに。なんでか勝てるきはせぇへんけどな。にしてもナヅちゃんはかわええなー。僕のが強ければ結婚してるわ」
ネビレの口から様々な失言がまろびでる。
「ん?なんかうるせぇな、お前」
ナヅ先生がそれに気付いた。
そう言われ、ネビレがはっとした顔をする。
「まずい!このままやと僕がナヅちゃんのことが好きなのバレる!バレた!あかん!……終わった!やばい!どうしよ!あかん終わったどうしようあかん終わったどうしよ……」
ネビレの口からあかんとどうしよという言葉が溢れていく。
「はぁ?お前、私のことが好きなのか?よく分かんねぇけどそのキメェ態度改めたら考えてやるよ」
「で、サーシアたち。私のペン知らねぇ?」
ナヅ先生がネビレのことを雑にあしらう。
すると、ネビレは喋らなくなった。
喋らない。つまり……思考が止まっているな。
「あ、ここにありますぞー。いつものペン」
サーシアが机の上に会ったペンを先生に手渡す。
「おっ、サンキュ。それじゃな」
「ネビレ。私の生徒に迷惑かけんなよ」
ナヅ先生が部屋を出る。
しばらく、ネビルは硬直していた。
そして数分後。
「今のって……告白……?」
ネビレがやっと喋りだした。
「違うと思います」
僕が言う。しかし、ネビレの嬉しそうな表情を見る限り、この言葉は届いていない。
「ちょ、ちょっと僕行ってくるわ!こうしちゃおられへん!!」
ネビレが強化魔法を駆使し、一瞬で部屋を出る。
ダッ
ダッ
と思ったら、戻ってきた。
「君たち、ありがとうな!あと、この学園の安全は僕が守るから!任せてくれ!」
ダッ
そしてまた消えて行くネビレ。
……まぁ、悩みが解決したようなら良かった……かな?
そんなことより、
「メリーさんのオリジナル魔法ってなんなんですか?」
僕がメリーに聞く。
概要は分かったけど、詳細はまだ分かっていない。
「……秘密ですわ。それに、まだちょっと失敗作ですもの」
メリーが言う。
心の声が全部漏れる魔法が失敗作……その魔法はどのように進化するのだろうか。
とりあえず、お互いオリジナル魔法の研究の進捗状況は順調そう良さそうでよかった。
僕も、もう少しで完璧だ。
待っててくれ、メリー。
コツ……コツ……コツ……
サークルが終わり、メリーは女子寮の廊下を一人で歩いていた。
ガチャ
そしてドアを開け、自身の部屋に入る。
その瞬間、真っ先にメリーの目に入ったのは、部屋の中央に落ちている一通の手紙。
手紙にはトゥメルト家の蠟が垂らされていた。
メリーが手紙を開き、内容を読む。
「ヤダ……」
そして、ベッドに飛び込んだ。
手紙の内容は、家に帰れという命令。
「なんで……」
そう呟くが、メリーは気付いていた。
この命令がなぜ下ったのかということを。
そして、学園への侵入が身内による犯行だ問うことも。
メリーはベッドの上から動かない。
制服にしわが付くかもとか、外着でベッドの上は汚いかもとか、そんなどうでもいいはずの思考がメリーの頭の中をめぐる。
「ヒューマ……」
メリーは何かを言おうとして、やめた。
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次話もお楽しみに!




