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侵入者

 二日間はあっという間だった。


 そして、圧倒された日々でもあった。


 全部がデカい。家も、食事も、サメも、海も、土地も、何もかも。サーシア家は全体的に体もデカいし。]


 ザイの魔法を見せてもらったりだとか、家にある魔道具の数々。近くにある美味しい魚の料理……僕の知らないことをたくさん体験できた。とても有意義なサークル合宿だったと思う。


「いやー、楽しかったですね」


 魔法陣の上でぎゅうぎゅうになりながらも僕が言う。


「えぇ、そうですわね」


「飯がうまい」


 メリーとナヅ先生も僕に同意した。


「いつでも来てくれていいんだよー」


 ザイがハンカチで涙を拭いながら言う。


「楽しんでくれて良かったでありますよ。それじゃ……」


 サーシアが魔力を魔法陣に込める。


「転送魔法!!起動!!」


 魔法陣が光った。


 すると、周囲の景色はいつも通りのあのサークル室になる。


「やっぱりすげーな」


 ナヅ先生が改めて感心する。


「戻って来たって感じがありますねー。それじゃ、こっちでもちゃんとオリジナル魔法の研究を……」


 僕が言いかけた時、ドアが開いた。


「バカでかい魔法使わなかった!?何事!?」


 ドアを開けたのはコット。


 珍しく、かなり焦った顔をしているな……あ、そっか。この転送魔法には莫大な魔力を消費する。そりゃ気付けば騒ぎにもなるか。


「あー、ちょっと魔法を……」


 サーシアがためらいながら言う。


「誰のだよ!!一年ぐらい溜めた魔力全開放みたいな魔力を探知したんだぞ!!」


 ……ん?一年くらい溜めた魔力?


「この魔法陣は魔力を溜める効果もありましてな。今までの二年間せっせか溜めてきた魔法なのであります。ちなみに、あと一年魔力を溜めてやっと片道切符が手に入りますぞ」


「…………」


 僕は絶句する。


 そんな大変な魔法を、サークル合宿に……


「でも、楽しかったであろう?」


 サーシアがニヤッと笑う。


 まぁ、楽しかったけど……。


「そういや、二日前ぐらいもこんなことあったな。生徒も先生たちも大騒ぎったぜ……と、そんなことはどうでもいい」


 コットが咳ばらいをすると、顔つきが変わった。


 明らかに重大な用だな……僕たちがいない間に学園で何かあったのか?


「二日間お前らが見当たんなかったからな、これをお前らに話すのが最後になる」


 コットが前置きをし、話し出す。


「この学園に、侵入者が現れた」


「侵入者……?」


 コットの発言に耳を疑った。侵入者?この学園に?


 ありえない。


 この学園は学園長先生やその他結界魔法の先生による世界最高峰の魔法で守られている。巡回をしている警備員だっているしな。


 侵入なんてできるものじゃない。


 どんな人間だろうと、関係なく。


「マジだ。二日前、学園長が不在の時の話。全ての警戒網や魔法結界を全部潜り抜けられて学園の内部に誰かが侵入した。偶然休憩中だった警備員が後ろ姿だけ発見したそうだ」

「学園の結界には一人の人間が侵入された形跡だけが残ってた。だから学園は見回りを強化。そして、念のためしばらくは魔法騎士団の一人が在中することになってる」


 コットが説明をする。


「魔法騎士団まで……」


 かなりの大ごと……だが、当然だ。この学園に侵入できるレベルの人間。しかも、なぜか痕跡はあるのに結界が反応していない。


 明らかな異常事態だ。


 僕たち生徒も警戒しないとな。


 ダッ!!


 その時、微かだが、誰かが何かを蹴る音が聞こえた。


 ダッ!ダッ!


 その音はどんどんとこの部屋に近づいてくる。


 ザザザザ……


 次に、ドアの前で地面をこする音。


 なんだ……この気配。


 体中から冷や汗が流れる。ドアの向こうに来たやつは、何かやばい。


 もしかして侵入者か?なんだ、この異常な魔力。


 死ぬ?


 殺される……?


「なにごとや?」


 コットの後ろに姿を現したのは、糸目の男。


 赤い逆十字の紋章の付けられた黒い帽子。胸元にも同様の紋章に、黒いマント。


 あぁ、知ってる。


「魔法騎士団……!」


 全部魔法騎士団の象徴だ。


 人も殺せるような威圧する圧倒的な魔力量に存在感。


 確実に本物だ。すごい。


 絶対に勝てないというのが、居るだけでわかる。


「……ネビレ」


 男を見てナヅ先生が呟く。


 この人の名前だろうか……?あ、そういえば、先生は元々魔法騎士団の副団長。知り合いなのかな?


 ネビレと呼ばれた男は、ナヅ先生に気付いた瞬間、表情が一瞬で柔らかくなる。


 そして、魔力も威圧もすべてが一瞬で消え去った。


「おっ、ナヅちゃんやん!やっほー!」


 そして、軽快にそう言い放つ。


 ……へ?ナヅちゃん?


 さっきまでの威圧感は一体どこに……?


「そういえばここの教師やってるんやっけ?再会できてほんま嬉しいわぁ」


 ネビレが笑う。


 仲がいいのかな……?あんなに怖い人だったのにこんなに雰囲気が変わるだなんて。すごいな。


「チッ」


 しかし、ナヅ先生は大きく舌打ちを一つした。


 ……あれ?


「気分が悪い。私は帰るぞ」


 そして、部屋を出ようとする。


 その顔は明らかに機嫌が悪そうだった。


「おいおいひどいなぁー!ちょっとぐらい話そうや」


 そのように言うネビレの横をナヅ先生が通り抜ける。


「お前と話すことはない」


 ナヅ先生はネビレの顔を見ようともしなかった。


「じゃあ殺し合いでもええで。暴力ならナヅちゃんでも理解できるやろ?」


 ネビレが挑発するような声色で喋る。


「なぁ、ええやん。お得意やもんなぁ、ナヅちゃんの」


「……私に勝てると?」


 その時、ナヅ先生が魔力を周囲に放った。


 その魔力はネビレのものにかなり近い……が、少し違う。


 こちらの方が怖い。まとわりつくような、重い魔力。


「ひどいなー。現役やで、僕」


 そして、二人の間に一触即発の雰囲気が流れる。


 かなりまずいな。もしここで本当に殺し合いが始まったら……確実に巻き込まれる。


「死ぬか?三下」


「今の僕は強いで」


 二人が手のひらを向け合った。


 ピピー!!


 その時、笛の音が鳴る。


「お前ら!何をしている!」


 このデカい声は……生徒会長か!


「魔法を使用した模擬戦なら教師に許可を取り、闘技棟でやってもらおうか!」


 この雰囲気の二人にも強く出る生徒会長。すげぇ。


「いややなー。冗談やん、会長くん」


「白けた」


 ナヅ先生はコツコツと歩いていく。


「また会おうなー」


 その背中にネビレは手を振った。


 ピィィ!!


 生徒会長の笛の音が再度鳴り響く。


「コット!お前またサボりじゃないだろうな!?」


「ちげぇよ!!」


 生徒会長の声に、なぜかコットは走って逃げだす。


 君はちゃんと正当性があってここに来たのに……生徒会長に何回も〆られてるんだろうな。多分。


「待てー!!」


 コットを追いかける生徒会長の姿が一瞬ドアの隙間から見える。


「学生は楽しそうやなー」


 ネビレは笑いながらその様子を眺めていた。


「さて……」


 そして流れるように部屋に入ってくる。


 すると、ネビレは直角に腰を折り曲げた。


「君たち、僕の恋を手伝ってくれへんか!!」


 ネビレが大きな声で言い放つ。


「……は?」


 その様子を見て、僕は困惑することしかできなかった。


 こ、恋……?


 ……え?いやまさか、ありえない。


 あの態度で?いや、まさか。無い無い。


「あのーネビレさん。もしかして貴方、ナヅ先生のことが……」


 僕がためらいながらも聞く。


「好きやねん!!!」


 えぇ……。


「あの態度は……?」


「生意気な後輩って可愛いやん!?」


「嫌われてたのは……?」


「生意気すぎたんや……」


 あぁ、なんて言うか。うん。


 ここまでバカな男っているんだな。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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