メリーの言葉
研究室。
僕とメリーは黙々とオリジナル魔法の研究を続け、サーシアは楽しそうに家を探索したのち部屋まで戻って来た僕たちに助言し、ナヅ先生は少しボケーッとしたのち、海に遊びに行った。
「ナヅ先生はオリジナル魔法が完成したらしいでありますよ」
ナヅ先生から話を伺ったサーシアが言う。
「どんな魔法なんでしょうね」
「さぁ?でも、頭の中戦闘しかないので攻撃魔法かなと」
あー、少しだけ想像できる。
殺傷能力が高いうえ広範囲の殺戮魔法を使いほくそ笑むナヅ先生の姿が。
攻撃魔法の授業中楽しそうだからなぁ。特に、実践練習と称して生徒をボコボコにしてる時。
「ヒューマくんはどうであるか?魔法の方は」
「部分部分は作れるので、全体図を掴むところができればって感じですね」
僕が答える。
このペースなら、夏休み最終日ぐらいには流石にものにしているはずだ。
「なるほど、順調でありますな」
サーシアはそう言うと僕に近づき、耳打ちをする。
「感動させるなら、なるべく早くバッとできた方がイイでありますよ」
なるべく早くか……確かにその通りだ。
一気にパッて変えた方が雰囲気が出る気がする。
「メリーちゃんの方はどうでありますか~?」
サーシアがメリーのもとへ向かって行った。
僕は再度魔法の練習に取り掛かる。
「ん-、その魔法本当に必要ですかなぁ?」
奥でサーシアが訝し気にメリーに聞く声が聞こえてくる。
「……わたくしにも、分かりません」
メリーの声は明らかに沈んでいた。
そんなに難しい魔法なのだろうか?まぁメリーのことだ。簡単な魔法では済ませないような気がする。
「うーん、その系統の魔法は難しいと思いますぞ。魔法創造は同じような魔法から派生させていくのが基本ですからなー。同系統の魔法がどれだけあるか……」
サーシアが言う。
メリーは一体どんな魔法を創造するのだろうか。
同系統の物が少ない魔法か……そして、メリーの性格に合うもの……見当がつかない。
バンバン!!
その時、部屋の窓が思いっきり叩かれた。
顔を上げると、そこに居たのはずぶ濡れのナヅ先生と……
「サメ!?」
横たわる、体長五メートルはある巨大なサメ。
サメって言うか多分サメ型の魔物……あ、背びれが二つある。ラトゥトゥラザメだな。結構危険な魔物だったはずだ。
へぇ、サメ型の魔物って陸に上がれる……訳ないよな!?
何してんだこの先生は!!
僕たちは急いで部屋を出て、ナヅ先生のもとへ向かう。
「何してるんですか!?泳ぎながらサメで遊んだんですか!?」
「頭おかしいでありますぞ!!」
僕たちは先生を糾弾する。
「ちっ、違うんだ!近くにサメの背びれが見えたから、魔法試そうと思ったら、なんか襲ってきて……」
「半分あってるじゃないですか……」
僕たちは呆れる。
「ちなみに、どんな魔法でありますか?」
サーシアの問いに、先生は少し言いにくそうにして、
「地形を変える魔法……」
と言った。
僕は海を見る。
そこには、明らかに不自然な新しい土地ができていた。
……まぁ、ギリギリすごいが勝つかも。
「どうしたの~!みんな~!」
その時、ザンが家から出てくる。
「おっ!そいつは……最近ビーチに現れてた凶悪な魔物じゃないか!」
ザンが嬉しそうに笑う。
「こいつのせいで最近海に人が寄り付かなかったんですよ~!速いのですぐ逃げられてしまいますし。お手柄ですね!」
ザイの言葉に、僕たちはナヅ先生を見た。
「……ふっ。生徒の模範になるのが、教師だ」
ナヅ先生が冷や汗をかきながらどや顔をする。
「「「…………」」」
僕たちは白い目で先生を見ることしかできなかった。
「そうだ。せっかくです。人がいない今のうちに海で遊んだらどうですか?こいつがいると思われてる限り貸し切り状態ですよ」
ザンが僕たちに提案する。
「でも、僕たち水着なんて……」
「近くに水着の店がありますぞー。海辺ですからな」
サーシアが言う。
「私は疲れたからパスで」
しかし、一足先に海を楽しんだナヅ先生は玄関の方へ歩き出した。
「店の方には俺の客って言っといて。娘の友達となれば、かっこつけなければな!」
ザイが胸を張りながら言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
かっこつけなら遠慮はできない。
僕たちはとりあえず水着屋へ向かうこととなった。
「いらっしゃいませー」
店に入る。
そこには、空間中に水着がいっぱいあった。当然だな。
なるほど、これが水着……初めて見るが……うーん……。
「じゃ、二人は選んでていいよー」
サーシアはそう言うと店の奥に行く。
僕は、ためしに近くの水着を一つ手に取ってみた。
「…………」
しかし、圧倒的な抵抗。
こんなのただの下着でしょ。
パンツ一丁で人前……それも、メリーの前に?無理だ。無理に決まってる。羞恥心で死ぬ。
「てんちょーさんひさしぶりー」
「おっ、サーシア様!お久しぶりです!背、高くなりましたね!」
サーシアは店の奥で顔見知りと思しき店長と喋っていた。
「ど、どうしましょう……」
僕はメリーの顔を見る。
「……わたくしは、見学で」
メリーが言う。
まぁ流石にそうだよな。異性の前でこんな服装なんてありえない。女の子なら特にそうだろう。
じゃあ僕も見学って言うことにしちゃお。恥ずかしいし。
メリーはしばらくして、小さく口を開いた。
「わたくし、次着る服はヒューマの作った服と決めてますの」
そして、僕にそう告げる。
僕は驚いて目を丸くしながらメリーの顔を見た。
メリーの表情はいつもと変わらない。口調だって淡々としている。
けど。
けど、それでも……
「ありがとう」
僕の顔がほころぶ。
とても、嬉しかった。
僕との約束を大事に思ってくれていて。
「おーい!お二人は水着着ないのでありますかー!?」
すっかり水着姿に変わったサーシアが僕たちの前にやってくる。
わぁ。恥ずかしくないのかな……。
「僕たちは見学で」
「えぇぇぇえ!?なんででありますかああ!!」
サーシアがその場に崩れ落ちる。
「海がない地域だと水着は下着にしか見えないからなぁ……」
同時にやって来た店長が僕たちの気持ちを代弁してくれた。
「もういいであります!私は一人で泳いでくる!!」
サーシアはずけずけと水着屋を出ていく。
「僕たちは砂浜でも歩きましょうか」
「そうですわね」
僕たちも店を出て、ゆっくりと砂浜へ向かった。
砂浜を二人で歩く。
会話はない。
海のさざ波、海鳥の鳴き声、サーシアのはしゃぎ声。それしか聞こえない。
天気は快晴。暑いな。
しかし、景色は良い。
白い砂浜に青い海。涼し気な横顔のメリー。
こんな優雅な時間が、続けばいいのにな。
それなら、ずっと僕はメリーの隣を歩けるのに。
しかし、メリーはトゥメルト。
きっと知らない高貴な誰かと一緒になるのだろう。
…………嫌だなぁ。
僕はこの学園で、絶対に大物になる。
上まで上り詰めて、メリーの隣に立てるような、そんな人に。
メリーの横顔をバレないように眺める。
つまらなそうな、いつも通りの横顔。
いつか、君が笑顔で溢れる人間になればいいな。
「メリーちゃんはそれでいいのであります?」
夜の暗い研究室。そこに、サーシアとメリーは二人きりだった。
夕食も、入浴も、研究の続きも終え、屋敷の人間はほとんど眠りについている。
「……これが、一番だと……思います」
「……そっか」
少し悲し気な表情を見せるサーシア。
メリーが創造する魔法。
それは、普通の人にとって、少し抵抗はあれど、なんてことはないこと。
子供でもできること。
「練習、頑張ります」
「応援してる。本当に」
サーシアが両手で震えるメリーの手を包み込む。
「きっとできるよ。メリーちゃんなら」
メリーの本当にしたい魔法。それは、
気持ちに正直になる魔法、だった。
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