サークル合宿
夏休みが始まって十数日。夏休みをもう半分以上消費した。
僕は順調にオリジナルの魔法の想像を固めてきている。
小さい範囲であれば服の色を変え、形を変えることができるようになった。
あとはドレスの想像をさらに鮮明に、明確にするだけ。
360度、内装まで全て。
……まぁ、あまりにも難しすぎるが。
朝。
いつものようにメリーと朝食を食べ、サークル室にやって来て、ドアを開ける。
すると、中にはいつもと様子の違うサーシアの様子がいた。
何かそわそわしていて、サプライズ前の子供のような笑顔を浮かべている。
「二人とも、今日が何の日か分かりますかな?」
サーシアが僕たちに聞いた。
「いえ、分からないですね」
僕が答え、メリーも首を横に振る。
すると、サーシアは胸を張り、
「そうでしょうね!教えてないので!」
と言い放った。
……色々な暴言は一旦飲み込んどくことにしとくか。
とりあえず、一個だけ。教えてないなら知ってるわけないだろ。
サーシアは部屋の奥からいつものようにホワイトボードを持ってくる。
「なんとなんと!今日は待ちに待った~~~!!」
そして、ホワイトボードをひっくり返した。
「サークル合宿です!!」
「!!」
サークル合宿……今日がか!!
……事前に教えてくれれば「明日が合宿だ~」とかわくわくできたのに!!なんで直前になった今言うんだよ!!
まぁサプライズ的な嬉しさはかなりあるけど!!
……って言うか、それより。
「準備とかしなくて大丈夫なんですか?着替えとか一切持ってないですけど……」
僕が言うと、
ガララッ
「そうだぞー」
部屋のドアが開き、ナヅ先生が顔を出した。
「ふっふっふ~。問題ないですぞー。事前にお三方のお洋服のサイズは聞いておりますし、何せ宿泊先が宿泊先ですからなー」
得意げな顔を浮かべるサーシア。
服のサイズは恐らくおしゃれ研究サークルの面々に聞いていて、サーシアの方で用意をしてあるのだろう。ナヅ先生とは随分前からの仲だそうだし、知っててもおかしくない。
しかし、宿泊先が宿泊先とはいったい……。
サーシアは、部屋の中心にある机を横にずらした。
「じゃーん!この魔法陣を見てください!」
机の下にあったのは、大きな魔法陣。
……あれ?こんなのあったか?
いや、無かったはずだ。恐らくだが、今まで隠されていたのだろう。
魔法陣。魔力を込めるだけで魔法が発動させられる上級魔法。
もちろん、使い方はそれだけではないが。
「これは、転送魔法を行うための儀式用の魔法陣であります……!」
サーシアが言う。
「「転送魔法……!?」」
その言葉に僕とメリーは驚きを隠せない。
転送っていうことは瞬間移動とかそういう感じの魔法だよな……?そんな魔法、想像できるのか?
「ふっふっふー。私の圧倒的な経験と試行錯誤で実現化した空間移動の魔法。魔力を死ぬほど溜めることで、魔法陣の上にあるものと魔法陣の上にあるものを交換することに成功したのであります!」
「マジか……すげぇ……」
サーシアの説明に思わず声が漏れる。
「流石……」
「やるじゃねぇか」
二人もさすがにこれには賛辞の言葉を送った。
「本当に、難しかったのであります……一年生の頃から計画を立て、苦節二年とちょっと……やっとなのであります……」
サーシアが遠い目をして上を向く。その顔からは、苦労と達成感が伺えた。
「では、さっそく向かいますぞ!おいでおいで!」
サーシアが魔法陣の上に乗るよう手招きする。
僕たちはぎゅうぎゅう詰めになりながら魔法陣の上に乗った。
僕以外は女性なので、何とかギリギリ当たらないように苦心をしつつ。
「これ、どこに行くんですか?」
僕がサーシアに聞く。
「私の実家、フロンラン家であります!!」
サーシアが答える。
へぇ、サーシアの実家。フロンランか……。
ん?フロンラン……?
フロンラン!?!?
「え!?それって……」
めっちゃ有名だぞ!魔法研究にしか興味が無いせいで何度も貴族から没落しかけている魔法狂いで、現代の一般魔法の基礎を作った一家。めちゃくちゃすごい家じゃ……
「転送魔法!!起動!!」
サーシアが唱える。
魔法陣が光った。
「ここは……」
周囲を見渡すと、机があったりフラスコがあったり、色々な魔道具があるあまりサークル室と変わらない部屋。
しかし、部屋の奥には豪華なベッドが置かれていた。
「私の自室であります!」
サーシアが言う。
すげぇ。これが転送魔法か……すごい。実感が湧かないレベルで感動だ。
すごいな……一瞬で長距離を……へぇ……。
しかし、自室に転送か……僕だったら結構嫌だぞ。
でもまぁ結構想像通りの部屋ではあるな。”家でもこんなことしてそう”を忠実に実現している。
「サーシア、帰ったのか~!?」
その時、どたどたと誰かが走ってくる音が聞こえた。
ドアが開く。
「パパ!」
サーシアが嬉しそうに顔を明るくする。
現れたのは、太った背の高い男。
しかし、身長や髪の毛の色などからサーシアらしさを感じた。
パパ……サーシアのお父さんか。
「おぉ!客人か!嬉しいぞ、やっと友達ができたんだな!」
サーシアの父親がサーシアを抱き上げ、高い高いをする。
サーシアって結構大きいはずなんだけどな……すごい筋力……いや、もしかしなくても魔法か。
完璧な調整の身体強化魔法……かなりの使い手だ。
「どうもお友達の方々!俺はザイ・フロンラン!ぜひこの家を楽しんでってくれ!」
サーシアのお父さんのザイが僕たちの方を見て言う。
なかなか陽気な人だ。全身から良い人のオーラが流れ出ている。
「わたくしはメリー・トゥメルトと申します」
「ヒューマ・スノーベルです」
「引率のナヅでーす」
僕たちも挨拶を返した。
「なんと!トゥメルト家のお嬢さんにナヅ様とは!うちなんかじゃ恐れ多い……」
「そんなことないですわ。サーシア先輩には日ごろからお世話になっていますので。今後ともよろしくお願いいたしします」
「私ももう魔法騎士団は辞めた。そんなすごくねーです」
二人が謙遜をする。ついでのようにこの二人に混じっている本当にすごくない僕。悔しい。
「それで、何日滞在するんだ?」
ザイがサーシアに聞いた。
「一泊二日ぐらいかなー。魔法と、あと海で遊ぶだけ!」
「二日かぁ……」
ザイはあからさまにしょんぼりとした顔をする。
その様子を見て、僕の家族も僕に会えなくて悲しんでるのかなと思った。
流石に冬には帰るか。妹の顔も見たいし。生意気に育ってなきゃいいけど。
「じゃっ、さっそく魔法の研究しましょう!学校よりはかどると思いますぞ~!」
サーシアはザイの腕から降り、僕たちの方を見る。
「研究室はあっちであります!」
そして、サーシアの先導で廊下を歩いた。
僕は廊下を見渡す。すごい、めっちゃ広いな。一時期は怪しかったらしいが、流石は名家と言ったところか。うちとは比べ物にならないレベルだ。
「パパも手伝おうか?」
こっそりついてきていたザイが聞く。
「ダメ!このサークルでは私がリーダーなのです!」
「そっかぁ……じゃあ悲しいけどお仕事戻る……」
ザイは落ち込み、とぼとぼと大きな体を曲げ廊下の反対側に歩いて行った。
「ここですぞー!」
少し歩いて廊下の突き当り。大きな両開きのドアをサーシアが開く。
そこには、大きな机が二個に、大量の魔道具が雑多に置かれた部屋があった。
正面にある大きな窓からは外の景色が見え、青い海が広がっている。
「おー……」
あれが海か。初めて見た。
デカい、青い。綺麗だ。
僕の地元は白いか緑。同じ国でもこんなに景色が違うなんて。
「それでは!オリジナル魔法制作の続きであります!!」
サーシアが言う。
一泊二日。僕たちのサークル合宿が始まった。
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次話もお楽しみに!




