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好き

「うーん、どうしましょうか……」


「無限にあるからね~。なやんじゃうよね~」


 おしゃれ研究サークルの服置き場。


 僕は、そこにある大量の服に頭を悩ませていた。


 良いものは確実にあるのだろう。ただ、物が多すぎてどれがいい物なのか、また、どうやってそれを見つければいいのかの目途が立たない。


「でも、良いものは突然グッ!って目にくるやつなのよ!根気よく理想に近いのを探すといいわ!」


「いろんな服のいい部分だけ切り取るのもありだぞ~」


「男装をさせましょう。私の好みですので」


 三人が僕にアドバイスをする。


 まぁでも幸い今は夏休み。時間は無限にある。


「私も勝手にヒューマくんのお洋服作っちゃお~。あの子と相性ばっちりの物をね!」


「みんなでつくろーよ」


「いいですね」


 三人は僕のすぐ近くまで来て、服を見ている僕をまじまじ観察する。


 しかも、僕がちょっと動くだけでその一挙手一投足を観察された。


「あのー、やりにくい……」


「やっぱり制服似会うわね~」


「真面目っぽいからな」


「はっちゃけギャル……」


 三人は僕に似合う服のイメージを考え込んでいる。


 多分、もう僕の声はもう届かないな。これ……。


 まぁ、視線が痛いだけで実害はないからいい……のか……?


「やっぱりふりふりはつけたいわね……」


 フリエアがぼそっと言う。


 男にふりふりは流石にないだろう。怖いからやめてくれ。多分冗談じゃないし。


 僕は視線を全身に浴びながらも服を探し続ける。


 カラッ


 その時、遠く……サークル室の方のドアが開いた。


「失礼します」


 小さくだが、声が聞こえる。この声は……メリー?


 まずい。メリーがこのサークルに来たら……


「さぁ行くわよ二人とも!着せ替えを……」


 そう。この三人が動き出してしまう。


 メリーを逃が……


「いえ、ちょっとあたしは……」


「私も……」


 しかし、幸いなことにマリアとメリアは動かなかった。


 あれ?なんで大丈夫……あ、そっか。メリーはトゥメルト家だった。


 恐れ多くて動けないのか。


「え~?も~!」


 フリエアは残念そうな顔をし、


「じゃあお出迎えに行くわよ」


 と言ってメリーを迎えに入口まで向かって行った。


 僕とマリアとメリアもその後ろについていく。


「なにしにきたの~?メリーちゃん」


 フリエアがドアの前に居るメリーに聞く。


「サーシア先輩が急用が入ったため、今日は早退しました。一応ですが、その報告ですわ」


 メリーが言う。


「そうなんですか。わざわざありがとうございます」


 急用で早退ね……そんなことをわざわざ伝えに来てくれたのか。ありがたい。


「失礼しました」


 お辞儀をし、この場を立ち去ろうとするメリー。


「ちょっと待ってよ~」


 そのメリーの肩をフリエアが掴んだ。


「可愛いお洋服、着てみたくない~?」


 そして、そうメリーに提案する。


「ちょ、フリエア先輩……」


「ダメですって……」


 マリアとメリアがフリエアの服の袖を引っ張った。


「…………」


 メリーは不思議そうな顔をし、何も答えない。


「お願い!一着だけ!一着だけだから!!」


 その様子を見て、フリエアが食いつく。


「……まぁ、断る理由はありませんわね」


 メリーがゆっくりと部屋に入る。


「やった~!」


 フリエアがメリーの両手を取り喜ぶ。


「じゃあ、ヒューマくんは奥に入っててね~!お着替えするから、開けちゃだめよ~」


 僕は奥の服置き部屋に押し込まれ、ドアを閉められる。


「じゃあお着換えしちゃいましょ~!」


「ごめん!トゥメルトさん!」


「後で謝罪します!!」


 マリアとメリアも腹をくくったような声がドア越しに聞こえてくる。


 ……さて、僕は服を探すとしようか。


 何日かかってもいいから、なるべく理想の物を……


 服をかき分け、探し続ける。


 これは違うな。これも見た目は良いけど……。




 そして、数時間後。


 部屋のドアが開いた。


「できたわよ~」


 フリエアが僕に声をかける。


「分かりましたー」


 僕は後ろを振り向き、ドアの方へ向かおうとした。


 その時、一つのドレスが目に入る。


「これは……」


 黒を基調としていて、ところどころオレンジ色の入った服。ふりふりもついている。


「あら~。私が作ったドレスじゃない」


 フリエアが僕の目に着いた服を見て言う。


「みんなからは子供っぽいって言われちゃったんだけど、可愛いわよね~?」


「……そうですね、ちょっと子供っぽいです」


「ひどい!」


 けど、これは……


「想像は固まりました。ありがとうございます」


 僕が頭を下げる。


「あら。もういいの~?」


「はい」


 この服だ。この服のおかげで、理想は決まった。


「それじゃ、さっそく新しいメリーちゃんを見てみよっか!」


 フリエアはそう言うと、僕の目を両手で塞ぐ。


「気を付けて歩いてね~」


 そして、おぼつかない足取りで歩いてた。


 そして、多分メリーの前まで着く。


「さん、にー、いち」

「どーん」


 僕の視界が開ける。


 目の前には、純白のドレスを着、髪を後ろにまとめ、手には花束を持ったメリーがいた。


「どう……?」


 メリーが無表情のまま口を開く。


 目を、奪われた。


「…………」

「綺麗」


 いつか、隣に並んで、こんな姿が見たい。


 そんな、きっと敵わないであろう夢を思い描いてしまうほどに。


 綺麗で、美しかった。


「……よかった」


 メリーがそう言うと、しばらく沈黙が流れる。


「この服、買いますわ。いくらでしょう」


 メリーがフリエアたちの方を向く。


「無料よ無料!当然じゃない!」


「そうだぞ!着替えさせてもらった身だからな、こっちは!」


「そうです!このドレスがお着換えさせてもらった代です!」


 三人が口々に言う。


「いえ、価値への対価を……」


 しかし、メリーが食い下がった。


「うーん、そうだわね~……じゃあいつか、その服を着てる姿を見せてもらおうかな?」


 フリエアが譲歩するように言った。


「ほら、そうすれば私たちの服の宣伝にもなるわけだし!いいでしょ?」

「ね?」


 そして、珍しくメリーに圧をかける。


「……じゃあ、そういうことで」


「はい!約束かんりょーう!その服はお持ち帰りね!二人とも、脱がせてあげて!ヒューマくんはあっちの部屋行き!」


 僕はフリエアによって奥の部屋にまた押し込まれる。


 その時、フリエアが何かをこっそり拾った。


 あれ?何を拾ったんだ?


 バタン


 服置きの部屋のドアが閉まる。


 フリエアも何故か僕の部屋に入ってきていた。


「あのー、なんでフリエア先輩まで……」


 僕が言いかけたとき、


「はい、これ」


 フリエアが僕に一着の服を手渡す。


「これって……」


 それは、黒いタキシードだった。


 タキシードって、結婚式とかで着るやつじゃ……。


「約束、だからね」


 いたずらそうに笑うフリエア。


 …………。


「じゃ、あとは頑張って!応援してるから!」


 フリエアはそう言って僕に手を振り、部屋を出る。


 ……頑張んないとなぁ。


 いつか、メリーと二人で並んで歩ける。


 そんな人に、なれるように。




 サークル室からの帰り道。


 僕はメリーと一緒に歩いていた。


 そうだ。そういえば、メリーにこの前のこと謝罪しないと。


 フリエアが僕のこと好きか聞いた件。


「メリーさん、その……」


「お互い様よ」


 メリーがいつも通りの表情で言う。


 お互い様……?


 あんまりよく分かんないけど、気にしてなさそうか……?


 そっか、ならよかった。じゃあ……


「メリーさん、お願いがあるんですけど、いいですか?」


 僕が緊張しながらも切り出す。


「なにかしら」


「えっと……僕が、そのー。魔法の練習で……いや、違うな」


 僕は言葉を選ぶのをやめる。


「僕の作った服を着てほしいです」


 メリーは僕を見る。


「そう。楽しみにしておりますわ」


 微かに口角を上げるメリー。


「はい。楽しみにしててください」


 服の想像はできた。


 次に魔法。


 メリーを喜ばせる服を作らないと。


最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!


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