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好き?

 禍々しいドアが開かれる。


 その向こうにあったのは……


 大量に積まれた、服の山。


 しかし、ただの服の山じゃない。


 自作したであろう不格好な服や、明らかに高そうな宝石の埋め込まれた服まで多種多様。それが、服とは思えないほどぎっしりと、しかし丁寧に置かれている。


 丁寧で、気持ちのこもった狂気。


 ちゃんと情熱を感じる……が、狂気が圧倒的にそれを上回っていた。


 なんだろうな……なんでだろうか?なぜか分からないが、紫色のオーラを放っている気がする。魔力が込められていそうな気配があるな。


「では教えるわ。おしゃれとは……」


 フリエアが溜める。


「ふりふりよ!」


「人による!」


「性転換です」


 三人が同時に言い、


「「「は???」」」


 そして、にらみ合う。


 え?そこ意見合わないの……?


「いい?二人とも。一年生だから知らないかもだけど、可愛いは正義なの。可愛い子のふりふり、可愛いわね。かっこいいの子のふりふり。やーん、ギャップ。可愛いわね?」


「人によるでしょ。その人に会ったおしゃれを追求するのが最適。一つのもので不格好な可愛さを求めるのもいいが、結局は相性だ」


「女は男装、男は女装。それだけでいいんですよ」


 三人の間に火花が散る。


 可愛いの過激派、一番一般的そうな意見、そして……君は何?


 よく分かんないけどとりあえず三人の意見は対立しているな。


「だからぁ!ふりふりは……」


「違うって!それは……」


「性転換というものはですね……」


 三人はその後もギャーギャー話し合い……もとい自身の意見の押し付け合いをした。


「もういい!」


 フリエアは怒りながら置かれた服の山に飛び込む。


「やっぱりそこの子の所に案内を……!」


 そして、僕の方を見た。


「あっ、それはダメです」


 それだけは無理。僕がじゃなくて、メリーが。


「大丈夫だよ、あたしたちこのサークルの外だとクソ内気だから」


「会いに行くだけでしたら大丈夫ですよ、乱暴はできません。近くに服がないと緊張して死にかけますしね」


 マリアとメリアの二人が言う。


 えぇ、そうだとしても……うーん……。


 僕は少し考え込んだ。


 ……まぁ、本人を見た方が具体的なアドバイスが来るかな。


「手を出したら、本当にただじゃ済ませませんよ」


 もちろん、僕じゃなくてメリーが。


 僕はちゃんと最後に念押しし、魔法創造サークルへと向かった。




 カラッ……


 少しだけ魔法創造サークルのサークル室のドアを開く。


 そして、ドアの隙間から四人で中を覗いた。


 すると、机の上で何かを書いていたメリーがすぐにこちらに気付き、こちらを向く。


「サーシア先輩、あれ……」


 メリーがこちらを指さしながら言った。


「あー、無視でいいよ」


 サーシアは僕たちの方を一瞥だけして笑いながらそう言う。


「そう……ですか……」


 メリーは困惑し、僕たちを二度見してから、机に向きなおす。


「あらあら~。魔法祭に居た可愛い子じゃないの~。お名前はなんだったっけぇ?」


 フリエアが恍惚した顔でメリーを見る。


「あら……トゥメルトさん……」


「あら……スゥー……そっかぁ……」


 しかし、一年生である二人の反応は渋い。


 まぁそっか。怖いことで有名なメリー・トゥメルト。誤解が解けているのは一年A組の内部だけで、あんまりメリーを知らない人からしたらまだ怖いよな。


 フリエアはまだメリーがトゥメルトということに気付いていないようだから大丈夫そうだが……。


「ヒューマくん、やめたほうがいいんじゃない……?」


「そうですよ。流石にトゥメルトさんは……」


 二人は心配そうな顔で僕を見る。


「大丈夫ですよ」


 しかし、僕は当然と言わんばかりの顔でそう答えた。


「いや、確かに顔は良いけど、その、恐怖が……」


「そうですよ。まず、彼女に服を着せる許可は貰ってるんですか?」


 二人が言う。


 それは、まぁ、確かにそうだけど……。


 でもなぁ……やっぱり、可愛いメリーを見てみたい。


「サーシア先輩!こっちこっち」


 その時、フリエアがサーシアを小声で手招いた。


「はいはーい」


 呼びかけに応じ、サーシアは小走りででこちらまでやってくる。


「どうであります?経過の方は」


 サーシアがにやにやしながら聞いてくる。


「順調よ~。ところで、あの子に一つだけ聞いてほしいことがあってぇ……」


 フリエアがサーシアに何か耳打ちする。


 ん?順調……?今までやってきたことって僕を着せかえただけでは?


「え~。それって……」


「ちょっとだけ!ちょっとだけだからぁ~」


 多分無理を言ったのだろう、サーシアの顔は渋い。しかし、フリエアは必死に何かを頼み込んでいた。


「えー。もー……しょうがないなぁ……」


 サーシアはためらいつつもメリーの方を向く。


「ねぇ、メリーちゃん。ヒューマくんがね、メリーちゃんの服を作りたいそうなんでありますけど……」


 そして、言いにくそうに続ける。


「メリーちゃんは、ヒューマくんのことを好きでありますか?」


 ……………………?


 は?


 時間が、止まったように感じた。


 頭がくらくらする。


 メリーは無言のまま。


 ただ、何もなかったようにペンを動かす。


 やがて、ペンが止まった。


「そ……」


 メリーが何かを言いかけ、やめる。


「クラスメイトです」


 そして、そう一言だけ言ってまたペンを走らせるメリー。


 そ……?


 …………どっちだ?


 そうです?そんなわけないです?


「よし!退散!!」


 瞬間、フリエアは僕を抱えて走りだす。


「やりすぎだよ!フリエア先輩!」


「そうです!禁じ手ですよ、今の!」


 どっち?


 どっちだ……?


 どっちなんだ……?


 走っている揺れを感じる。


 どっちなんだ?メリー。


 君は、僕のことを……。




 おしゃれ研究サークル、サークル室。


「き、きっといい返事よ!私もやりすぎちゃったわ、でも、あれはいい返事だったのよ!」


 フリエアが放心状態の僕を励ます。


「そ、そうだよ!大丈夫!まだわからん!」


「そうですそうです!まだ分かりません!」


 マリアとメリアの二人も僕の背中をポンと叩いた。


 僕は動きだすことができない。


「そ、そんなことより!服!服考えようよぉ!」


 フリエアが冷や汗をだらだら書きながら言う。


「……あ。あぁ」


 そっか、服の話だった。そうだった。


「そう、服……そうですね、服、考えないと」


 僕は、やっと喉から声が出る。


 なんでか分からないけど喉が渇くし頭が痛い。


「そ、そう!服!でも、トゥメルトさんなら並みの服じゃむしろ服が見劣りしちゃうな」


「そうですね。かなり上等な服でないと……」


「何か良い服はないかなぁ~?」


 三人が頭を悩ませる。


「あっ!」


 その時、フリエアが何かを思い出したように声を上げた。


「こういう時こそ、”あの人”を頼るべきよ!」


「「あの人?」」


 マリアとメリアの二人が首をかしげる。


 あの人とは誰だろうか?この学園は夏休み。もう人なんてほとんど残っていないはずだが……。


「じゃあ連れてくるわね!」


 爆速で部屋を出ていくフリエア。


 そして十数分後。部屋のドアが開いた。


「この人よ!」


 フリエアが連れてきた人物は……


「え~なに~?」


 現れたのは、保健室の先生。


 そういえば、雰囲気はかなりこのサークルに近いな。


「あら~。たまに来る子じゃない~」


 保健室の先生が僕を見て、頬に手を当てながらそう言う。


「ラーデ先生はすごいのよ~!王族の服飾をしてたことがあるの!」


 なぜか自慢げに保健室の先生……ラーデ先生について語るフリエア。


「そうなのよ~。フェトム王子がちっちゃい頃とかお洋服を仕立ててたのよ~」


 ラーデ先生が言う。


 王族の服飾……かなりすごいな。おしゃれ代表みたいな肩書だ。


「それで、なにかしら?」

 

 ラーデ先生の問いかけに、


「実はかくかくしかじかで……」


 三人がこれまでの流れを説明する。


「あらあら~」


 話を聞き終え、ラーデ先生は三人と同じような反応をする。


 全員あらあらって言うんだな……。


 もしかしたら、こういう系統の人がサークルに入るのではなくこのサークルがそういう系統の人を作るのかも知れない。


「でも、それは私の出る幕じゃないわね~。ヒューマくんは、メリーちゃんにどんな服を着てほしいのかしら?」


 ラーデ先生はすでに結論が出ているようで、僕にそう問いかける。


「そうですね。できれば、綺麗で可愛い服を……」


 僕が曖昧なことを言うと、先生はにこやかに笑った。


「そっかぁ。じゃあ、それが答えよ。あと必要なのは知識だけだね。ここにあるお洋服たちでお勉強するといいわよ~」


 そして近くの服を一つ手に取る。


「いろんな服を見て、ヒューマくんにとっての理想の服を作るのよ。似合うかどうかより、自分が好きかどうか」

「貰うなら好きが詰まった服が一番うれしいわ!メリーちゃんだって女の子だもの~」


 ラーデ先生は何かを思い出したかのようにうっとりとした顔をした。


 僕の好きが詰まった服……か。


 そんな好きの押し付けみたいな行為、よくない気が……。


 僕は今ままでを思い返す。


 自己紹介の告白、勝手について行ってる食事、半ば無理やり誘ったサークル……。


 ……あぁ、意外としてるかも。


「今日はもう遅いから、また明日。いっぱいお勉強しましょうね!」


 ラーデ先生が僕に笑いかける。


「はい」


 僕は考えながら返事をした。


 僕の”好き”か。


 頑張って考えないとな。




「いやー、ごめんなのであります。メリーちゃん」


 魔法創造サークル、サークル室。


 ナヅはすでに職員室に帰っていて、そこはサーシアとメリーで二人きりだった。


「でも、いつかされる質問でありますよ。あれだけバレバレな好意、気付いてないわけではないでありますよね?」


「……うるさいです」


 サーシアの問いに、メリーは小さな声で反抗する。


「一年生。まだ学校は始まったばかりで関係性が浅いのは分かるでありますよ。ですが、少しぐらいは……」


 サーシアが何かを続けて言おうとしたとき。


「……ないです」


 メリーはその言葉を遮った。


「浅く、ないです」


 そして、力強くそう断言する。


「……そうでありますか」


 サーシアはメリーの隣に座る。


「じゃあ、ちゃんと答えは出さないとダメでありますね。まぁ……」


 そして何かを言いかけ、やめた。


 そして、少しうつむいているメリーの顔を覗く。


 そのメリーの顔は、赤く染まっていた。


(羨ましいですなー。たったちょっとの間で……)


 サーシアはにやにやしながら考える。


(まっ、時間なんてどうでもいいのですかなぁ)


 そして、サーシアはメリーの書きだした”創造魔法でしたいこと”の案を見た。


「……ふふっ」


 サーシアは思わず少し微笑む。


 動きをまねする魔法 正直になる魔法 見た目を変える魔法 過去に戻る魔法 逃げだす魔法 嘘が分かる魔法 気持ちを整理させる魔法 相手の考えが分かる魔法


 一緒に居られる魔法


「何個かはすでに出来てそうですけどなー」


 サーシアがそう言うが、メリーは何も返さなかった。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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