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おしゃれ研究サークル

「ここがおしゃれ研究サークル……」


 目の前にあるのは、普通のドア。


 ドアの横に打ち付けられた看板には”おしゃれ”と書いてあり、ハートとか花とかいろいろ落書きをされていた。


 あとなんか看板だけでなく、近くの壁にも落書きされたりして彩られてる。


 まぁ異常ではあるが異常だ。しかし、それ以上に……。


「なんだ……?この紙……」


 周囲には、大量の紙が散らばり落ちている。


 僕は不審に思いつつもその紙たちを拾って、形を見てつぎはぎにつなぎ合わせていった。


 な……入……体……る……絶……


 絶対入るな……?


 えぇ……?何これ、怖い。この部屋は呪いの部屋か何か?


 落書きに見えるこれも何か呪いの紋様だったりするのかな?もしかして魔法陣?


 うわぁ……なんかいきなりそういう風に見えてきた。雑な落書きが逆に恐ろしさを際立てている気もする。


 よし、無理だ。帰……


「あらぁ?見学の子かしらぁ」


 僕が心に決めた時、後ろからおっとりとした声がした。


 すると、僕の視界に影が差す。


 バッと後ろを振り向くと、そこには身長の高い女性がいた。


「いえ、ちがっ……」


 僕が何かを喋ろうとしたとき、僕の口元が押えられる。


 は?え?まじ?


「あらあら~」


 女性は僕の体に抱き着き、動けないようにする。


 は?ちょっ、待っ……


 ガチャ


 そして、僕は抵抗もできずにドアの向こうに連れ去られていった。




 数時間後。


「ひ、ひぃ……」


 委縮し、恐怖の音を上げる僕。


「あら~。これも可愛いわね~」


「ゆ、許してくださいぃ……」


「「あらあらぁ~」」


 僕はおしゃれ研究サークル室内にて、三人の女子サークル員によって着せ替え人形にさせられていた。


 まず、この部屋に連れ去られた瞬間二人の双子と思しき見た目がほぼ同じ女性に襲われ、身ぐるみをはがされた。そして次に化粧台の前まで連れていかれ、顔面にいろいろ塗りたくられる。そして最後に、僕で着せ替えごっこが始まったのだ。


 着る服や髪飾り、イヤリングなどは多種多様。執事服から大道芸人の着るような服、時には女性用のメイド服まで着た。正直訳が分からない。


「もうちょっと待ってね~」


 また僕の服が着せ替えられる。


 そして数十分後。最終的に落ち着いたのは……


「これね……!」


 傑作が出来上がったと言わんばかりに額の汗をぬぐう、最初に僕を部屋に連れ込んだ背の高い女性。


「……キレそう」


 僕が来ている服は、制服だった。


「貴方みたいな真面目可愛い子はなんやかんやこれが一番似合うのよ~」


「「ね~~」」


「…………っ」


 僕は何かを言い返そうとして、やめる。


 この部屋にいる人は僕含め総勢四名。


 うち三人は結託しているため、僕に勝ち目はないのだ。


 明らかに僕が正しいとしても。


 数時間経ってるんだぞ?時間的にそろそろ日が暮れるんだぞ?こんな結末でいいのか?


「ところで、フリエア先輩。この子はどこで捕まえてきたの?」


「そうですよ。どこに居たんですか」


「さぁ~?」


 双子の質問に、フリエアと呼ばれた女性が不思議そうに首をかしげる。


 サークル室の前に居たら誘拐されたんだよ。割と強めに。口押さえられたぞ。抵抗する暇なかったぞ。


 人によってはトラウマになっていてもおかしくない出来事ではあったと思う。


「えっと……僕はサーシア先輩の知り合いで……」


 僕が怒りを何とか落ち着かせながら言う。


「あらあら~。サーシア先輩の?うーん、そういえばどこかで見たような……」


 フリエアは僕の顔をまじまじと見た。


 化粧されまくってるけど分かるのか?


 しかし、フリエアは合点がいったように手をパンと叩く。


「あ!一年A組の次席の子だわ~!えーっと、ヒューマくんだっけ?魔法祭で見たわよ~!」


 魔法祭で見たのか……先輩とも呼ばれていたし、この人は二年生か。


「「あ~!」」


 双子も何か思い出したように声を上げる。


 ……よくよく考えたら、気付くの遅くないか?僕の顔にめちゃくちゃ化粧してたじゃん。大分まじまじと見てたじゃん。そこで気付いてよ。


「サーシア先輩の後輩となると……大丈夫ぅ?魔法の実験台にされてないぃ?」


 そう言いながら僕の頭を撫でまわすフリエア。


 なんだろうな……なんか……知っている気がする、この感じ。


 あっ。もしかして……


「ルースって人、このサークルに居ますかね?」


 僕が聞いてみる。


「あら~。知ってるわよ~。仲いいもん。ね~?」


「「ね~!」」


 三人が答える。


 あぁ、やっぱり……雰囲気近いもんな。多分、ここはそういう人が集まるサークルだ。


 人の頭を撫でる人が集まるサークル。


 アリアはルースと同じサークルに入ったと聞いたが……この雰囲気に馴染めているのだろうか?


 って、そんなことはどうでもいい。


「いきなりで申し訳ないですけど、僕はこのサークルにおしゃれを学びに来たんです」


 僕が本題を切り出す。


「「「あらあらあら~~」」」


 すると、三人は同時にそう言って、頬に手を当てた。


「歓迎よ~!男の子でおしゃれ好きな子少ないから嬉しくなっちゃう~!」


「うちの部男の子すくないからな~!」


「素材が足りないですからね」


 そして、三人はぎらぎらした目つきで僕を見る。


「で、何系がいいの?」


「可愛い系?かっこいい系?クール可愛い系?キュートかっこいいけい?」


「逆にギャグ系まで行ってしまう?行ってしまわれるの?」


 そして、僕とほぼゼロ距離まで顔面を近づけた。


 あまりにも近い……どころか圧が強い圧が強い。


「えっと……そういうのはまだ決まってなくて、これから……」


 僕が言うと、


「「「あらあらあら~~!!」」」


 とまた三人同時に言った。


「おしゃれの卵ちゃんなのね!そういう時は大事なことがあるのよ~!」


 先輩が化粧台に置いてあった手鏡を僕に見せる。


「どういう自分になりたい?」


 手鏡に映るのは、ギリギリ僕には見えない人間。


 ……誰だこいつ。こいつを見ても自問自答できねぇよ。


「いえ、僕にではなく、他の人に……」


「他の人……?あっ」


「「なるほどねぇ~」」


 三人がにやつく。フローレといいサーシアといいこの三人といい……なんなんだよ。


 他人の恋路の何が面白いんだ?女子はみんな恋バナが好きなのだろうか。恋バナサークルもあるくらいだしな。好きなのかもしれない。


「その子はどんな子なのかしら?」


 フリエアが僕に聞く。


「え、えーっと……」


 後ろで双子はメモ用紙を取り出していた。


「えっと……クールなんですけど、顔は結構可愛くて、ふわふわな長い金髪に赤目……」


「「「ふむふむ」」」


「身長はちょっと小っちゃくて、白くて細い……です……」


 うーん……言ってて可愛すぎるな、メリー。


 僕じゃ釣り合わないだろ、完全に。


「「「あらあらあら~~~」」」


 三人は頭を抱える。


「お人形さんだわ。特徴を真逆にしてもお人形さんなレベルのお人形さんだわ……」


 そして三人は背中を向け、何かひそひそと話し合いだす。


 数分後、三人は満面の笑みでこちらを向いた。


「それじゃ、その子連れてきて?」


 そして、僕にとんでもない提案をする。


「え?嫌です」


 この笑顔、怪しい。絶対にメリーがめちゃくちゃにされる。


 その場合、まずいのはメリーではなくこのサークルだ。


 誘拐まがいのことをされたらメリーが怒ってこの部屋が破壊するかもしれない。まぁ、メリーが起こってる姿なんて見たことないけど。


 それに……


「僕が着てほしいと思う服を着せたいので」


 僕の発言に、三人は顔を見合わせた。


「「「あらあらあら~~」」」


 ……なんか君ら反応ずっとそれだね。


「じゃあ、可愛い服いっぱい教えちゃう~。こっち来て~」


 そして、僕は招かれるままに部屋の奥に行く。


 部屋の奥にあったのは、禍々しい雰囲気をまとっているドア。


 なんだ……なんか圧というか……風情があるな。このドアは。


 特に装飾とかをされているわけではないが……。


「あ、そういえば私の名前はフリエア。よろしくね、一年くん」


「あたしはマリア」


「私はメリアです」


 三人が名乗る。僕も名乗っとくか。知ってるだろうけど。


「ヒューマ・スノーベルです」


「じゃあ、ヒューマくん。おしゃれ研究サークルの深淵へようこそ~」


 その発言に僕は息を呑む。


 ドアが、開かれた。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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