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決勝戦

 メリーとフェトムの魔法が中心でぶつかり合う。


 メリーの氷は溶け、フェトム炎は霧散した。


 初撃は完全に互角。


 しかし、両者はどちらも現状を悲観していなかった。


 魔法の相性。


 氷魔法は氷であり、炎魔法は炎。


 その時点でフェトムはメリーに比べて有利である。が、威力は互角だった。


 しかし、魔法の種類と規模。


 氷塊アイニはもとより範囲の広い魔法。それに対し、炎槍ファリアは一点突破寄りの魔法である。

 フェトムは魔法をそう多く知らない。そのため、最適化された炎槍ファリアではなく想像で範囲を拡大した炎槍ファリアを撃ったのだ。


 それでは、炎槍ファリアの特性は最大限に生かせない。


 が、威力は互角。


 お互い手の内を詳しくは知らない、小手調べの範囲攻撃。


 すべてを加味した結果の力量は互角。


 しかし、両者は共に”奥の手”を持っている。


 それさえ使えれば勝てると確信していた。


 あとはどう最適にそれを使えるか。いつその場面が来るか。それをしっかりと見極められるか。


 それが問われる。


炎弾ファール


「防御魔法」


 次に仕掛けたのはフェトム。炎弾ファールによる猛攻。


 ドン!ドン!


 パリィン


 メリーの防御魔法が破られた。


 飛んでくる複数の炎弾ファールをギリギリで避けるメリー。


「すげええええ!!!」


「やっば……」


 魔法とは関係ない体術の巧みさに観衆は盛り上がる。


氷の壁(アイルーカ)


 メリーが唱えると、メリーの前に氷の壁が出来上がった。


 フェトムが攻撃をやめる。


 (流石にリスクが高いな……)


 魔法は実体化する。


 魔法は同時に一種類しか扱えない。しかし、実体化してしまえばそれは魔法ではないのだ。自身を守る氷の壁の奥で、メリーは魔法を放つことができる。


 元より氷魔法は質量がある魔法であり、一般魔法の中でも攻撃にも防御にも優秀な魔法である。しかし、それを防御魔法レベルの耐久度で運用するのは圧倒的な魔力量が必要であった。


 メリーには可能であるが。


「互角だな~」


 一年A組の観客席でコットが呟く。


「お前、なんでここに居んだよ……」


 アリアはコットに肩を組まれ、若干嫌そうな顔でコットを引きはがそうとしながら言う。


「いや、あんだけイキったのに初戦敗退したの恥ずかしくて……」


 コットが何故か自慢げに鼻をこする。


「まぁ、あんだけかっこつけといてぼろ負けじゃクラスメイトには顔向けできねぇか……」


 デリヴェはコットを憐れむような眼で見た。


「これ、勝負結果ほぼほぼ運だろ」


 コットを無視して、モードが試合を見ながら口にする。


「魔法の威力は互角。魔力量は若干フェトムが上だけど、戦いで魔力を使い切るなんてまずねぇ。んで魔力放出量は互角。読み合いでどれだけ差をつけられるかだが……そんなの俺らじゃ測りようがねぇからな」


「ハハッ!初戦敗退が偉そうに解説してるのだ!」


キュナがモードを茶化す。


「よし、お前あとでタイマンな。普通に殺す」


 モードがキュナの頬を引っ張る。


「やめるのだ!やめるのだああああ!!」


 キュナは泣きながら抵抗を示した。


「じゃあさ、みんなのお昼ごはん代賭けてみようよ!私フェトムくんで!」


 フローレが元気よく提案する。


「それいいな!俺はトゥメルトの勝ちに賭けるぜ!」


 デリヴェが乗った。


「私もトゥメルトちゃん!」


「俺はフェトムだなー。得意魔法の属性相性あるし」


「我はトゥメルト!」


「じゃ、俺はフェトムで!」


 各々が勝つと思う方を宣言する。


「カンネちゃんはどっちが勝つと思う~?」


 ルースが端っこに居たカンネに喋りかけた。


「ひっ!わ、私はそんな他人を評価できるような……」


 カンネは元々端に居たというのに、さらに端っこの方へ、後ろの方へ潜っていく。


 それをみんなは変なものを見る目で見ていた。


「えっと……ヒューマは……聞くまでもねぇか。コットはどう思う?」


 アリアがコットに聞いた。


「俺か?俺は……そうだな……」


 コットが考え込む。


「俺のがあいつらより強い」


「お前はヒューマに負けてんだろうが」


 デリヴェがコットの頭に手刀を振り落ろす。


「ホントなのに……」


 コットが落ち込みながら言った。


「あ、そろそろ動きますよ」


 盤面をじっと眺めていたヒューマが言う。


 次に動いたのは、メリーだった。




 しばらくの膠着状態。


 メリーが、一瞬早かった。


風槍ウィーリア


 メリーが普通よりも魔力を絞った風槍ウィーリアを撃つ。


「防御魔法」


 再度広範囲攻撃をしようとしていたフェトムは、とっさに魔力を防御魔法に変換する。


 が、広範囲に広めていた魔力から具現化された防御魔法は風槍ウィーリアを一瞬止めることしかできなかった。


 パリン


 防御魔法が崩壊する。


 フェトムはその一瞬で何とか風槍ウィーリアを避けようとしたが、右腕に攻撃が掠ってしまった。


「クッ……」


 お互いの一撃一撃が重く、模擬戦のルールである防御魔法を破るのには十分。


 掠っただけの一撃でも、あと少し触れるだけで十分なほどにフェトムの防御魔法は削られた。


 よって、メリーは攻撃方法を変える。


 一撃必殺ではなく、回数攻撃へ。


氷龍の鱗(アイ・ドューロ)


 複数の薄い雹のような氷の魔法を撃つメリー。


 複数個の氷の魔法。しかし、それは範囲攻撃に近いもので、込められた魔力も少なく今までの魔法と比べて速度が遅い。


 フェトムは、それを好機と捉え、防御魔法を展開しなかった。


「身体強化」


 ダッ!!


 ドン!!


 フェトムは真正面に駆け、メリーの横を通過して反対側の壁に突撃する。


 フェトムが発動したのは身体強化魔法。


 全身の魔力を一方向へ流すことで高速移動をし、壁に激突することで強制的に止まった。


 ヒューマの動きを見て、自身でも利用できると踏んで習得した技である。


 クリアの防御魔法は衝撃に反応するのではなく、魔法にしか反応しないからできる暴挙。


 移動によってフェトムはメリーの攻撃の軌道から完全に外れた。


 まだ授業では習っていなく、習得難易度が高い身体強化魔法。


 完全に意表は付いている。


 しかし、移動直後にも攻撃にはほんの少しの時間が必要だ。


 その時間はメリーが別の攻撃をするには足りないが、防御魔法を貼るには十分な時間であった。


 しかし、魔力放出量はほぼ同じ。ならば、一手先を取ったフェトムが圧倒的に有利。


 そのうえ、後ろを向いている状態ならば、こちらを視認し、攻撃を避けるというのでかなり後れを取る。


 フェトムが撃つ魔法は風槍ウィーリア


 フェトムの知る中で最も速度が速い風魔法。その中で、威力も安定して出せる魔法だ。


(よし)


 フェトムが魔力を溜める、魔法を撃とうとする。


 メリーは、バッとフェトムの方を向いた。


 そして、少し笑う。


 すると、一枚の氷龍のアイ・ドューロが、円を描くような挙動でフェトムの方へ向かって行った。


 フェトムは目を見開く。


 攻撃魔法を撃つときは、基本的に軌道は一直線だ。


 攻撃魔法は魔法を魔力で覆い、その魔力を動かすことで魔法を撃つ。


 その際、魔法を覆う魔力量で速度は変わる。


 攻撃魔法で最も魔力を消費するのはこれだ。


 その覆う魔力は狙った速度にぴったりが理想である。自身の狙った速度以上の魔力で覆っても何の意味もなく、魔力の無駄にしかならない。


 本来なら。


 魔法のコントロール。


 放った魔法を余剰な魔力で覆うことで、その魔法を制御すること。


 勢いに任せれば魔法はまっすぐ飛ぶ。これが最も速く、簡単で、威力が乗るため一般的。


 攻撃魔法を曲げるのは魔力と想像力のリソースの無駄であり、弱い。


 だから使われなくなった。


 時代遅れの、魔法の扱い方である。


 ヒュッ!


 本来の進行方向から曲がった一つの氷龍の鱗(アイ・ドューロ)がフェトムを襲う。


 フェトムは、すでに魔力を風槍ウィーリアに変換していた。


 パリィン!!


 フェトムにかかった防御魔法が破られる。


 一瞬遅れて、メリーにフェトムの風槍ウィーリアが直撃した。


 メリーにかかった防御魔法は割れない。


(魔力量も見誤っていたのか……)


 フェトムは静かに目を閉じる。


「フッ。完敗だな」


「勝者ァ!!メリー・トゥメルトォォォ!!」


 実況の合図で、歓声が上がる。


「魔法模擬戦、一年の部!!優勝者はメリー・トゥメルトだぁあああ!!!」


 わあああああああああ!!!


 メリーへの賛辞の言葉が闘技棟中に飛び交う。


 メリーは、ゆっくりと一年A組の観客席の方を向いた。


 そして、最前列で飛び跳ねているヒューマを見つける。


 メリーは少しもじもじした後、腕を控えめにヒューマに向け、親指を立てた。


 それを見て、ヒューマも笑顔でグッドサインを送る。


 魔法祭、魔法模擬戦一年の部の優勝者は、メリー・トゥメルトという結果で幕を閉じた。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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