二回戦
ナヅは実況席から、退場していくヒューマとコットを眺める。
(あのコットにまさか勝てるとはな……)
ナヅがヒューマに教えたことに嘘は何もない。それだけじゃなく、自身が実際に魔法騎士団で通用させてきた魔法のノウハウでもあった。
しかし、ナヅ自身がそれをものにするのに何年の時間をかけたか。
教えはした。しかし、実用には至らないだろうと思っていたのだ。
(でも残念だな。あんだけ魔法の速射を極めたところで、あいつは優勝できない)
ナヅは一年A組の観客席を見る。
視線の先に居る人物は、デリヴェ・トラル。
この学園において、教師を含めた誰よりも早く攻撃を仕掛けられる男だ。
目が覚める。
白い天井……闘技棟の保健室だな、多分。
体はどこも痛まない。回復魔法をかけてもらったのだろう。
えっと、何があったっけ……魔法祭で、僕はコットに勝って……。
あぁ、そっか。
勝ったんだった。
勝った。コットに。
これは確実にメリーを救う一歩につながっているはずである。
勝った。
勝った……!
「っしゃぁ……!」
小さくつぶやく。
「そーんなに嬉しいか?」
隣から突然声がする。
「うおぉ!」
びっくりして体が動く。ベッドから落ちるところだった。
「おはよーさん。ヒューマ」
「コットさん……」
僕のベッドの隣に居たのはコット。
試合が終わった後にわざわざお見舞いに来てくれたのだろう。
僕は周囲を見渡す。
複数のベッドに保健室の先生。そして保健委員と思しき生徒がいた。
……あれ?僕ってどれくらい寝てた!?
今は一体誰と誰の試合が……。
「まだヒューマくんの出番じゃないから安心してね~」
僕の焦りが顔に出ていたのだろう。近くにいた保健室の先生が言う。
あぁ、良かった。まだ僕の出番じゃないのか……。
「どう?ヒューマくん。もう復帰できそう?」
「はい、大丈夫です」
僕が答える。
回復魔法っていうのはすごいな。気絶するくらいの攻撃を受けたのに、どこにも異常はない。
「じゃあ、ぺトくん。オーリア先生にこのこと伝えてきて~」
「承知いたしました!」
保健委員の生徒……ぺトが保健室を出ていく。
「今は一試合目の最終試合だな。見に行こうぜ」
そう言い、コットは立ち上がる。
一戦目の最後……次の試合が僕なのか。
僕はこのまま順調に勝ち進んで、メリーに負ける。
それが作戦だ。
メリーと当たるまでの試合、他のA組のメンバーで気を付けるべきはやはりフェトムに……魔力量で見たらカンネとキュナだな。
できればほかの生徒みんなの戦い方も見ておきたかったが……気絶してしまったなら仕方がない。
僕はコットと一緒に保健室を出て階段を上がり、最前列から中央を見た。
「なんだあの魔法はー!!」
実況が叫ぶ。
「なんだあの魔法……」
対戦しているのはキュナ対フローレ。
しかし、キュナの背中には見たことがない大きなコウモリのような翼が生えていた。
「フハハハ!!すまないなフローレよ!アクマの力による裁きを食らわせてやろう!!」
キュナが観客席にも聞こえるような大きな声で言う。
あの翼……魔法、でいいんだよな?
オリジナルの魔法か?でも、あそこまで精巧なものが……
「相伝魔法。有名どころの貴族様じゃたまにその家に代々伝わる魔法があんだとよ」
「へぇ……」
相伝魔法……そんなものがあるのか。初めて知ったな。
しかし、コットはなんでその知識があってテストで0点だったんだよ。
それにしても、あの魔法は……
「弱そうじゃないですか?」
僕がキュナの翼を見ながら言う。
翼の魔法には攻撃手段はあるのだろうか?
魔法模擬戦はあくまで戦い。攻撃手段が無ければ勝つことができない。」
「さぁな。相伝魔法は何も戦いのためだけに作られた魔法じゃねぇし……」
コットが頭を掻きながら言う。
やっぱりそうなのか……あの魔法は、どう見ても戦いに使う魔法ではないように思える。
それに、魔法なんて同時に一個しか使えないのだ。翼の魔法を使ってしまったら、キュナはもう飛んだりして逃げ回ることしか……
「アクマの羽ばたきを食らえ!!!!」
キュナがバサりと翼を動かす。
すると、キュナの体が宙にちょっとだけ浮いた。
本当に、ここから見える程度に、ちょっとだけ。
……多分、飛べないな。あれ。
フローレは手をキュナに向ける。
そして、魔法を撃った。
水魔法……水刃か。
それを見て、キュナは翼でゆっくりと移動し、避けようとする。
しかし、キュナが遅すぎて普通に魔法が直撃した。
「待つのだ!待って欲しいのだ!!」
フローレはガン無視で魔法を撃ち続ける。
パリィン!!
当然、すぐにキュナの体に展開されている防御魔法が割れた。
「勝者、マユトゥリア・フローレ!!」
実況が叫ぶ。
しかし、会場は冷え切っていた。
「これで一回戦は終わりか……次、お前だな」
コットは僕を見る。
「俺に勝ったんだ、勝ち進めよ」
そして僕に拳を突き出した。
「はい。任せてください」
僕はそれに応え、拳を合わせる。
「では、一戦目終了!勝者は以下のようになります!」
「ヒューマ・スノーベル、デリヴェ・トラル、ルース・ルーノイル、フェトム・ラリエル、フローレ・マユトゥリア、そしてシードのメリー・トゥメルトの六名です!」
ぱちぱちと拍手が聞こえる。
さて、僕もそろそろ中央へ向かうか。
僕は中央へ続く階段に歩き出す。
「次、頑張れよ!ヒューマ!」
近くに居た見知らぬ男が僕の名前を呼ぶ。
「はい」
まだ負けるわけにはいかない。
「ヒューマ!やったれ―!」
「勝てんぞー!!」
道中、たくさんの声援が飛んできた。
僕は勝つ。
そして、メリーを救う。
変えるんだ、未来を。
「二回戦、第一試合!対戦するのはこの二人いいい!!」
僕は中央に出る。
「D組の新星を倒したヒューマ・スノーベくんと~~!!一戦目を爆速で終わらせたデリヴェ・トラルくんだぁああ!!」
僕の正面に立つのはデリヴェ。
デリヴェの戦闘スタイルはどのような感じなのだろうか。
まぁでも、どんな戦い方でも関係ない。
僕の計画は変わらない。デリヴェが魔法を発動させる前に倒すだけだ。
「けけけっ!ぶっ殺してやるぜぇ!!」
デリヴェが笑う。
……君ってそんなキャラだっけ。
「それでは、ヒューマ・スノーベル対デリヴェ・トラルの対戦を始めます!!」
「開始!!」
「風……」
バンバンバンバンバン
?????
なんだ、これ。
目に見えない謎の猛攻を体が受ける。
なんだ?見えない。攻撃?しかし、何の攻撃だ?
僕は腕で顔を覆い、体が吹っ飛ばされそうなのを耐える。
その間も、得体のしれない衝撃だけが僕の体を襲い続けた。
バンバンバンバンバンバンバンバン
……攻撃か?
僕より早い……攻撃?
なんで?
「わりぃな。勝てるうちに勝たねぇと」
デリヴェが言う。
どんな攻撃だ?攻撃の仕組みが分からない。
……やばい!!考えすぎた!!
防御魔法を張らないと!
僕は手を前に突き出す。
あ、やばい。
バンバンバン
間に合わ……
バン
パリィン!!
「勝者、デリヴェ・トラルくん!」
……嘘だろ?
試合を開始して数秒。
僕は、二回戦で敗北した。
最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!
面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!
次話もお楽しみに!




