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VS主人公

「それでは改めまして、魔法祭一、二年生の部の実況を務めます!二年国語担当のオーリアです!よろしくお願いします!」


 観客席にある実況席からオーリア先生がメガホンに声を乗せる。


「そしてさらに、魔法模擬戦がよく分からないよーっていう人のために解説をお呼びしました!」

「一年A組担任!攻撃魔法の先生であり、かっけー教師ランキング一位、ナヅ先生です!!」


 オーリア先生の隣にいるナヅ先生がメガホンを取り出す。


「一般生徒ども、そして私よりかっこよくない教師どもおはよう。ナヅだ」


 ナヅ先生が挨拶をする。


 大分喧嘩を売った挨拶だが。


「ひゅ~!うぜぇ~!では早速、魔法模擬戦とは何か!ということの解説していただきましょうか!」


「あいよ~」


 ナヅ先生は魔法模擬戦の解説に移る。


「でも、解説っつってもな……魔法模擬戦は一対一、魔法で戦いあう競技だ。生徒にはそれぞれ防御魔法学の教師であるクリア先生から魔法にしか反応しねぇ防御魔法が張られる。その防御魔法が割れるまで戦いあうっつーのが基本のルールだな」


「え~!単純で分かりやすい!」


 オーリア先生が大げさに反応した。


「ちなみに防御魔法は割れるとクソでけぇ音が鳴るし、クリア先生がどっちの防御魔法が割れたか判別できるからズルとかの心配はねぇ」

「せいぜい楽しめ」


 ナヅ先生がメガホンをしまうと、歓声が沸く。


「さて!解説も終わったということで……それでは始めます!第一回戦目、第一試合!」


 オーリア先生が手元を見る。


「なんと!一試合目から参戦します!期待のD組、コット・オールくんと~~!!」

「入学次席、中間試験二位!ヒューマ・スノーベルくんだあああ!!」


「おっ」


 思わず声が出る。


 一戦目から僕かよ。


 運営としては初戦からコットを次席である僕に当て、僕をボコボコにして会場を盛り上げるつもりだな。


 コットの実力をアピールするために。


 でも……悪いけど、そう上手くは行かせない。


 あいつは、僕が倒す。


「っしゃ!気張ってこい!ヒューマ!」


「俺ら唯一の共通敵!ぶちのめせ!」


「頑張るのよ~」


「ヒューマ。貴様なら勝てる」


 みんなから激励をもらう。


「はい!」


 僕は立ち上がると、メリーのことをちらっと見る。


 メリーは、少しだけこちらを見て、すぐに前を向いた。


 よし。十分だな。


「行ってきます!」


 僕は階段まで向かい、深呼吸をしてから階段を降り、中央へ向かう。


 中央に入ると、改めて舞台の広さと周囲の熱気に気付かされた。


 緊張してきたな。


 でも、戦いに不安点はない。


 魔法模擬戦に向けて入念に対策を練ってきた。


 確実に勝つ。


 しばらくして、僕の正面にコットが歩いて来た。


「おっ、ヒューマか。よろしくぅ~」


 コットは足元をならす。


「悪いけど、勝たせてもらうぜ」


 不敵に笑うコット。


 コットのは、威圧目的なのか大量の魔力を体中から漏らしている。


「そうですか。よろしくお願いします」


 コット。僕は君に勝つ。


 絶対に。


 余計なことは考えるな。


 風槍ウィーリアと身体強化魔法以外のイメージはいらない。


 あとは予定通り動く。


「それでは、ヒューマ・スノーベル対コット・オールの対戦を始めます!!」

「開始!!」


風槍ウィーリア


 勝つ。




 コット・オール。

 俺は天才だ。


 ガキの頃からそうだった。


 平民で、畑仕事を手伝っていたからか体躯は普通だが力が強く、近所のガキ大将。


 そして、なぜかすべての物事がうまくいく。


 理由は分からない。けど、遊びも喧嘩も負けたことがなかった。


 順風満帆。俺はこの村で満足しながら一生を終える。


 そう、思っていた。


 魔法。


 それに目覚めたのが何歳の頃だったかは分からない。


 だが、気付けば俺は魔法を使えていた。


 普通平民じゃ魔法は使えない。一部の人間にしか使えない、選ばれた力。


 でも、俺は天才だ。だから、魔法が使えても何も不思議には思わなかった。


 とある日、村に元魔法騎士団所属と名乗るのジジィがやってきた。


 魔法騎士団の勲章が入った帽子を見せてもらったし、多分本物だったのだろう。


 ジジィから魔法の話を聞き、興味が湧いた俺はジジィに魔法の稽古をつけてもらった。


 最初は負け続けた。俺でも勝てる想像ができないくらい圧倒的な実力差。


 魔法を習い、戦い続けて一か月。


 気付けば、俺はそのジジィに勝っていた。


 あまり覚えていない。ジジィは本気だったのだろう。俺の体はボロボロで、瀕死と言っても過言ではない状態。


 しかし、俺は勝ったのだ。元とはいえ、魔法騎士団に。


 俺は、魔法でも天才だった。


 そして今、目の前の男。ヒューマには、俺の数分の一程度の魔力量しかない。


 こいつだけじゃない。A組の連中全員、魔力量が俺より少ない。


 まず、才能の時点で俺は勝っている。


 こいつらには絶対に負けない。


 一撃も食らわずに全員ぶっ倒す。


「それでは、ヒューマ・スノーベルくん対、コット・オールくんの対戦を始めます」

「開始!!」


 ヒューマは俺に人差し指を向ける。


 俺も腕を上にあげた。


 悪いけど、速攻で……


風槍ウィーリア


 は?


 ドンッ!!


 俺の胸に、何かが当たった。


 負け


 一瞬、何かが頭をよぎる。


 魔法の発動時に起こる魔力の溜まりが少ししか見えなかった。早すぎる。


 開始直後。一瞬。


風槍ウィーリア


 ドンッ!


 やばい、まずい。


 俺は頭上に溜めた魔力を解き、前方に魔力を溜めて防御魔法を展開しようとする。


 ドンッ!ドンッ!


 完全に展開が遅れた。追加で二回風槍ウィーリアが当たる。


 おおおおお!!


 観客共が盛り上がる。


 先制攻撃を取られちまったな。俺は魔力放出速度には自信があるんだがな……魔法ってのはこんなに早く撃てるもんなのか?


 しかも、こいつの魔法は魔法の発動する時間だけでなく、魔法の速度自体もクソ早い。


 風魔法は風だから目視するのもむずいしな……。


 あの速さに、視認性の悪さ。避けるのは不可能とみていいだろう。


 ドンッ!ドンッ!


 防御魔法に風槍ウィーリアが当たる。


 風魔法なこともあってか幸いなことに威力は高くねぇ。これなら俺の防御魔法の硬度的にあと何発も耐えれる。


 攻撃が止んだ。


 が、防御魔法を解くことはできない。


 解いた瞬間攻撃が来る。来ると感じた瞬間張っても防御魔法は多分ギリギリ間に合わねぇ。


 まずは様子見だ。あいつに他の攻撃手段が無いか……


 ビュッ


 ヒューマが高速で横に吹っ飛ぶ。


 ドン!!


 そして、横の壁にぶち当たった。


 なんだその移動……クソ速ぇけど……。


 自滅か?いや、まさかそんなわけが……


風槍ウィーリア


「マジかっ!!」


 ドンッ!


 とっさに防御魔法を張ったが間に合わなかった。移動方法奇抜すぎて思考力が奪われる!うぜぇ!これも戦法のうちか!?泥臭すぎだろ!!


 攻撃を一発受けちまったな……ちくしょう。


 しかし、高速移動の魔法まであるのか……ダリィ。こうなったら体を覆うように防御魔法の展開を……いや、愚策すぎるな。一時しのぎにしかならん。一点突破で壊されるし。


 そうなれば隙だらけ。負けは確定だ。


 だが、あの高速移動……多分身体強化魔法だな。は、移動の仕方的にまだ完全に制御ができてねぇ。


 なくせに、移動後の魔法を撃つ速度が速すぎてそれがデメリットになっていない。


 この模擬戦の敗北の条件が体につけられた防御魔法を破壊されること……ダメージが蓄積できるから、小技バンバンのあいつにとって有利すぎる。


 対策してんな。魔法模擬戦に向け、徹底的に。


 勝ち目ねぇだろ、これ。


 ビュッ


 視界の中心にいたヒューマが右に飛ぶ。


 そっちか。

 

 俺は右に防御魔法を貼る。


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!


 防御魔法で全ての攻撃を防ぐ。


 よし。


 攻撃が止むっつー予備動作があれば何とか展開が間に合うって感じだな。


 ただ、肝心なのはこの防御魔法も時間が経てばいつかは破られるということ。


 その瞬間が来たら終わりだ。


 ヒューマの速射は魔力の放出から魔法を撃つまでの時間が短すぎる。本来の戦いなら相手が一回放出した魔力が尽きるまで防御魔法で耐えるか、避けるのがセオリーだけど、あいつの戦い方ならそれができな……ん?


 じゃあ、あいつがわざわざ移動するメリットって何だ?


 魔力量が少なくても、一瞬で展開した防御魔法を打ち破るのには十分すぎる魔力量。なら、同じ攻撃をずっと続けるのが最適解なはず。


 しかし、ヒューマはわざわざ移動して攻撃を仕掛けてきた。


 なぜだ?なぜ短期決戦に持ち込みたくなる?防御魔法を展開している間に発生するあいつにとって不利な事項……


 思考する時間か。


 となると、あいつは俺に負ける方法がある。確実に。


 まだ勝てるかもしれねぇ。


 しかし、なんだ?ゆっくり思考する時間があればたどり着ける結論ならばある程度単純な方法なはず。頭を回せ。


 攻撃が止む。


 移動だな。


 俺は防御魔法を解く。


 ?


 一瞬の違和感。


 俺の視界の中心には、まだヒューマがいた。


 ドンッ!


 一発食らった。


 しかし、防御魔法は展開でき、後続の攻撃は受けきれる。


 あぶねぇ。


 あと何発耐えれる?俺の体にかかった防御魔法は。


 強度は魔法をかけられたときの魔力量しか情報がないから大体しか判別できねぇ……が、あと四発ってとこか。


 でも、どうするか……面倒くせぇ。ルール無しだったら一発でボコボコに……。


 ……これか!


 三発だけ食らって、その隙に魔力を溜めて一撃でぶっ潰す。


 それしかねぇ!


 気付くのに遅れちまったが、仕方がない。ぎあの攻撃魔法三発分だったらこの体にかかった防御魔法を破壊するには十分な魔力量を溜められるはずだ。


 そして、俺が攻撃するとなれば確実にあいつは避けに回る。


 徹底した戦い方をする奴は安全策しかとらねぇからな。


 正面か右か左。これを外したら負けだ。


 でも、問題ない。


 俺は三分の一までの賭けだったら外したことがねぇ。


 俺は防御魔法を解除する。


 そして、腕を振り上げ頭上に魔力を溜めた。


 ドンッ!


 一発。


 ドンッ!


 二発。


 魔力は溜まった。


 俺の頭上で炎が渦巻く。


 ドンッ!


 三発。


 よし、次は移動だな。


 俺には分かるぜ。


 お前は、また動かない。


 視界の中心には、まだヒューマがいた。


 予想通り。


炎弾フィアール


 勝った。


風槍ウィーリア


 ヒューマの風槍ウィーリアが俺の胴体に当たる。


 パリィン!!


 バカみてぇにデカい音とともに、防御魔法は砕けた。


 ドォン!!


 本当に、本当に一瞬遅れて俺の炎弾フィアールがヒューマに直撃する。


 パリィン!!


 ……マジか。


 これだけ徹底して魔法模擬戦対策してきたやつが、安全策を取らなかった。


 俺の方が魔法を撃つのが早かった。それなのに、こいつは後出しで俺に魔法を撃ってきた。


 自信。後出しでも、俺より魔法の速度が速いという。


 ……これは、負けだな。


 俺の視界に映ったのは、地面に倒れこむヒューマの姿。


「勝者、ヒューマ・スノーベル!!」


 おおおおお!!!


 歓声が上がる。


 ……こんなあっさり、一瞬で負けるなんてな。


 強いことだけが取り柄だった。


 勘がいい。魔力だってある。魔法の択も多い、判断も早い。


 それなのに、こんな凡人みてぇなやつに技術で後れを取り、ルールありとはいえ手も足も出なかった。


「あーあ……」


 負けかぁ。


 ひっさしぶりに負けたな。


 それに、負けるかもなんて思ったのも何年ぶりだろうか?

 

 悔しいなぁ。


 一方的にボコされて、ぼろ負け。


 考えろ?俺はなんでこいつに負けたんだ?


 魔法の速射?戦いの経験?模擬戦に向けての対策?


 ……じゃあ、魔法のお勉強もしねぇとなぁ。こういう初見殺しの戦い方する前例はいたはずだ。


 面倒くせぇ……。


 でも、しっかりやらねぇと。


 強いことだけが取り柄なんだから。


 俺はヒューマの元まで歩いていく。


 「おーい、大丈夫か?ヒューマ」


 ヒューマは何も答えない。


 気絶してんな。


 これは魔力に無駄が大分あったってことだ。防御魔法の強度が分かってるならもっと少量の魔力で良かった。


 そうすれば、勝っていた。


「では、お二人とも退場してください」


 保健委員のやつらが来たが、俺はそいつらを無視しヒューマの襟を掴んで引きずりながら退場する。


 対応が遅れただけ。次があれば確実に勝てる。


 しかし、今回はこいつが勝った。


 これは事実だ。


 でも、俺はまだ強くなる。


 ヒューマ・スノーベル。


 今度は、俺が勝つからな。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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