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息抜き

 昼休み。


 僕は、教室にて購買で買ったパンを黙々と食べていた。


 これが終わったら体育館裏で少しだけ魔法の練習をして、それが終わったらまた睡眠に戻ろう。


 あくまでメインの練習は夜。夜間でも外出は自由だからな。ほとんどの棟は閉鎖しているが。


 僕は食事を終える。


 さて、体育館裏へ……


 ガサッ!!


 その時、僕の視界が真っ暗になった。


「うわぁ!」


 びびって思わず声が出る。


「確保ぉ!!」


 デリヴェの声が聞こえてきた。


 この質感……紙袋か!?


 しかし、なんで!?


「え!?ちょっ……」


 僕は、紙袋をかぶされたまま誰か二人によって両腕を掴まれ、地面を引きずられる。


「んだこいつ!!重ぇぞ!!」


 アリアが大声言った。僕のことを引っ張っているもう一人はアリアか。


 それにしても、失礼な。僕は標準体重……じゃなくて!


「なにしてるんですかこれ!僕は今から……」


「黙るのだ!!」


 キュナの声がも聞こえてくる。


 デリヴェにアリアにキュナ……悪ノリ三人集じゃないか!


 何か嫌な予感がする。


 僕は、手足をばたつかせ脱出しようと試みた。


「動くなヒューマ。あと少しの辛抱だ」


 そのとき、モードの声までもが聞こえてくる。


 モードもいるの!?なんで!?どういうこと!?


 僕は困惑しつつも、モードは真面目だが意外とノリはいいことを思い出す。


 これ、大丈夫な案件なのか……?


 心配になりつつも、されるがままに廊下を引きずられる。


 その状態が数分続く。ずっとゆっくり動いている。


 普通に怖い。何これ、どこ行くの?


 僕魔法の練習したいんだけど。


 ズボンが汚れるのが嫌すぎるし痛いし。


 ガララ


 そのとき、ドアが開くと音が聞こえた。


 そして動きが止まる。


 ドアを開けていたし、どこかの教室だろう。しかし、どこの教室ダル


「着いたぜ」


 アリアの一声で、僕の視界を覆っている紙袋を外される。


 穂枠は周囲を見渡した。


 ……来たことない教室だな。ここは一体どこだろう。


「ようこそ、恋バナサークルへ~!」


 目の前にいるフローレが笑顔で言う。


 眼前に広がるのは、壁を埋め尽くしている本棚と、そこに並べられる整理された本。


 そこら中に机があり、その机を囲うように置かれた椅子。


 図書館とカフェを合わせたような場所だ。


 僕は周囲を見渡す。


 アリアにデリヴェにキュナにモードに、椅子に座って腕と足を組むフェトム。そしてルースにフローレ……クラスメイトのほとんどが集まっていた。


「カンネちゃんとメリーちゃんは呼んでも来なかったの〜。ごめんね、ヒューマくん」


 ルースが申し訳なさそうに言う。


 ごめんねもなにも……なんだ、この状況は。


「よーし、じゃあ今から……」


 みんながそれぞれ椅子を持ってくる。


 そして、各々席に着いた。


 フローレが息を吸う。


「恋バナ、するわよ!!」


 フローレは大きな声でそう言い放つ。


 ……へ?


 こ、恋バナ……?


 なぜ……?


「発案者である俺が説明するぜ」


 デリヴェが口を開く。


「ヒューマ。お前、最近トゥメルトさんと全然喋ってないだろ」


 僕も一応近くから椅子を取ってきてそれに座った。


「詳しい事情は知らねぇ。けど、これは”何かあった”と判断した俺は、お前の事情を聴くためにこの会を開いたってわけだ……!」


 なぜかどや顔でそう言うデリヴェ。


 なるほどね。


 僕が最近魔法の訓練で忙しくなって、それに伴いメリーと喋ることが減った。僕は訓練のことを誰にも伝えていない。だから、僕とメリーの間に何かがあったと考えたのだろう。


 そして、野次馬根性が働いて、メリーよりも話しかけやすい僕から事情を聴取しようということになったんだろうな。


「ヒューマよ、先に言っておくが、俺は巻き込まれただけだ」


 フェトムがため息をつきながら言う。


 まぁ、そうだろうね。フェトムはこういうのに興味なさそうだし。


 しかし、困ったな……魔法祭に向けて魔法の訓練をしているなんて言ったら他の人も魔法の訓練を始めてしまうかもしれない。そうなれば、魔法祭で戦うライバルを無駄に強くしてしまうだろう。


 さて、なんて答えようか……。


「別に、特に何もないですよ。ちょっと趣味が忙しくて……」


 僕は最初にふわっとした内容で答える。


「嘘ね。どう見ても無趣味なヒューマくんにメリーちゃん以上の用事なんてないわ」


 フローレが速攻で僕の嘘を見抜いた。


 失礼な。僕にも趣味はあるよ。最近はもっぱら魔法創造だが、家にいた頃はお絵描きとか軽い狩猟とかしてたし。


「ヒューマは自己紹介でトゥメルトさん目的っつってたしな!なぁ!?」


 アリアが叫ぶ。


「どうなんだよ?」


「どうなのだ!」


 フェトム以外の全員から圧がかかる。なんでそんなに圧が強いの……。


「べ、別になんでもないですよ。本当になんでもないです」


 僕は慌てながら言う。


 うーん、それにしても、何かいい感じの言い訳はないだろうか。


 僕の中でメリーよりも優先するべき事項といえば……そんなのなかったわ。どうしよう。


「なるほど……何もない。何もなくて、マンネリ化していると」


 フローレが勝手に妄想解釈する。


 なんだよそれ。そんなこと一言も言ってないぞ。


「何もない。それは本当に言葉の通り、関係性に一切の進展がないこと。「いつも隣にいる彼女、いつも何もできない僕。あれ?メリーさんは本心から僕に興味が無いんじゃないか?」そう思ってしまい、距離が開く二人……」


 そしてさらに何かぶつぶつと小さい声で語り始めた。まじでなに。


「流石恋バナ部!恋の考察がえぐいぜ!」


「流石よ~!フローレちゃん!」


 デリヴェとルースが盛り上がる。盛り上がるな。そんな謎の部分で。


「……まぁ、この妄想は押さえておくわ。不確定だから」


 フローレは咳払いを一つする。


「恋とは関係ないにしても、ヒューマくん最近様子がおかしいじゃない?授業も真面目に受けてないし、メリーちゃんによるとサークルにも行ってないそうじゃない。悩み事があるなら相談乗るわよ」


 そして、真剣な顔で僕を見つめた。


「ずっと顔色悪いしな」


「あぁ」


 アリアとフェトムも同意した。


 なるほど。この会の本題は様子がおかしい僕のことを心配してくれてってわけね。


 ありがたい。本心から、ありがたい。けど……。


 相談は、できないんだよなぁ。


 僕が不利になるから。


 でも、嘘は貫くのは無理だろう。僕がメリー第一な生活を送っていたのに急にそれを変えたわけだし。生半可な嘘じゃさらに心配をかけるだけだ。


 うーん、じゃあなんて言おうか……。


 魔法祭を意識させないような話題の転換か。


 ……あ、いいの思いついた。


「実は、最近筋トレをしてまして。夜はずっと動いてるから昼は眠いんですよ」


 僕が言う。


 筋トレは筋トレでも魔法の筋トレだけどな。


 これならば夜中にどっか外出しているという目撃情報があったとしても走り込みということで言い訳ができるし、割と良い感じの言い訳じゃないか?


「なるほど……「僕は考えていた。いざっていうとき、僕はメリーさんを守れるのか?というとを。メリーさんは勉強でも魔法でも僕より優秀。いざっていうときに、ただの僕じゃ……」そう思い、肉体改造に励む日々。授業以外の時間は全て筋トレに費やし、来たる日、鍛えられた肉体で彼女を守った僕は、彼女に告白を……」


 フローレがまた高速詠唱する。しかし、今度は早すぎて何も聞き取れなかった。なんて言ったんだろうか、まぁろくなことではないだろうけど。


「筋トレ……ヒューマの体型で筋肉つくのはなんか嫌なのだ」


 キュナが控えめに言う。


「まぁ、背も高くなる予定なので……」


 この話題も深掘りされたらまずいかもな。筋肉を見せてと言われたら詰む。


 別の話題に意識をもっていかせるしかないな。


 何かいい話題はないかな?


 そのとき、アリアが視界に入った。


 ……いい囮になりそうだな、こいつ。


「そういえばアリアさん、アリアさんとルースさんには何か進展はあったんですか?」


 僕は唐突にアリアに聞く。


 ごめん、話題の生贄になってくれ。


「は、はぁ!?突然何言って……」


「確かに気になるな……どうなったんだ!アリア!」


「言うのだ!!」


「あらあら~?」


 全員の視線の先がアリアに向く。


 よし、これでかなりの時間が稼げる。僕と違ってアリアは反応が大袈裟でピュアでわかりやすい。こいつらなら面白い方に流れるはずだ。


「だから!俺は別に好きとかそういうんじゃ……」


 アリアが顔を赤くしながら抵抗をしようとする。


「あれぇ?でも、一緒のサークルに来てくれたじゃーん」


「そ、それは……!」


 アリアがたじろぐ。


「詳しく」


 そのとき、フローレの眼光が恐ろしいほど鋭くなった。


「おい待てよお前ら!今回の主役はヒューマじゃ……」


「こいつ多分喋んねぇよ!お前なら喋るだろ!?」


 デリヴェが言う。


「そうなのだ!!言え!!言うのだあああ!!!」


 キュナが叫んだ。


「えぇ、でもぉ……」


 部屋の奥の方へゆっくりと逃げていくアリア。そのアリアにフェトムとモード以外のみんなはジリジリと近づく。


「よし、逃げる!」


 アリアが走り出した。


「とらえろおお!!」


 みんながアリアを追いかける。


 そして、椅子に座っているのは僕とフェトムとモードだけになった。


「まぁ、そうだな……」


 フェトムが久しぶりに口を開く。


「俺は貴様の心配など微塵もしていない。何をしているかは気になるがな」


 そして、腕を組みがらそう言った。


「俺はちゃんと心配してるぜ。明らかに顔色悪いしな。まぁ、深く聞くつもりはねぇけど」


 モードも僕の顔を見る。


「何やってるかは分かんねぇ。でも多分、お前ならきっとできる」


「そうだな。貴様は努力だけでこの俺に勝っている……適度に自信を持て」


 モードとフェトムが言う。


 …………。


 僕は時計を見る。


 この時間なら、もう魔法の練習なんてできないだろうな。


 ……きっとできる。それに、適度な自信ね。


「ありがとうございます」


 僕は二人に頭を下げる。


 なんか、気が軽くなった。


「俺は何もしていない。感謝はあいつらに言え」


「そうだな。主犯はあいつらだ」


 二人は奥にいる連中を見る。


 全力で恋バナをしている連中を。


 恋バナね……。


「そういえば、フェトムさんやモードさんは好きな人とかいるんですか?」


 僕は二人に聞く。


 うちのクラスではフローレのせいでしょっちゅう恋バナが起こるのだが、この二人の恋バナはあまり聞いたことがない。


「俺は居ねぇ……が、次期国王様の恋事情は気になるな」


 モードが僕の話に乗っかる。


「俺も同様に居ないな。俺は王。釣り合う女は家が用意する」


 フェトムは当然のように言う


 そっか。フェトムは王族。政略結婚以外の道は無いか。


 っていうことは……


「恋愛するなら今のうちですね~」


「だな。学生っぽいことができんのは学生の内だけだ」


「話しましょうか、恋バナ」


「するか、恋バナ」


 僕たちはにやにやしながらフェトムを見る。


「……貴様らもあいつらに混ざったらどうだ?」


 フェトムが白けた視線をこちらに向けた。


「いやいや、あんなの結末分かってるでしょ。こっちはどうなるか分かったもんじゃないですからね」


「…………」


 フェトムは呆れたように片手で顔を覆う。


「なぁ、どうなんだよ。フェトムサマ」


 モードがフェトムに聞く。


「実は、俺は人に恋をしたことがなくてだな……」


「え~!?まさかまさか~!!」


 久しぶりののんびりとした会話。


 緊張していた糸が少しほぐれた。


 しばらく恋バナをして、昼休みは終わりを迎える。


「クソッ!なぜかしぶてぇ!」


 向こうはアリアが沈黙を貫き通したようだった。


 教室に帰り、いつも通りメリーの隣に座る。


 ……確かに、最近は話すことが減ってたな。


「こんにちは、メリーさん」


 僕はメリーに話しかける。


「こんにちは」


「しばらくしたらまたごはん一緒に食べてもいいですか?」


「ご自由に」


「学食のメニューって変わってます?」


「一部は変わったわね」


「そうなんですか」


 魔法祭。


 運命を変える日まで、努力は怠れない。


 けど、今日は久々に楽しかった。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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