主人公
「D組にお前みたいなやついたっけ……あれ?知り合いだったりする?」
コットが不思議そうな顔で言う。
コット・オール。
君のことはよく知っている。あの漫画の主人公だから。
飄々とした性格、ぼさぼさの黒髪、全部がどうでもいいとでも言いたげな目。
「あっ、ゼロ点だから?安心してくれよ、俺、戦いじゃ負けなしだから。ははっ」
粗雑でわがまま。そして、戦闘において最強。
あの漫画はコットが圧倒的な戦闘センスで最強を目指すバトル漫画だ。
まぁ、ただコットが無双するわけではない。バトルにおいてはほぼすべての戦いで最終的にコットが勝つが、意外と泥臭く粘ったりとか、戦闘以外の部分では結構無能だったりとかはする。
そして、その作品の中ボス的存在がメリー。
メリーは魔法祭という戦闘イベントで、コットに負ける。
メリーは夏休みに実家で親から酷い罰を受け、そこからトゥメルト家に”二位”の汚名を着せたコットの暗殺編が始まるのだ。
トゥメルト家の暗殺部隊、”幽霊”。そこに、メリーも加わる。
結果的に暗殺は失敗し、メリーが暗殺に加わったことはバレないが、メリー闇落ちの原因の大きな原因の一つである。
……次に僕のやるべきことが決まった。
僕は、魔法祭でこいつに勝てるぐらい強くならないといけない。
「おーい、聞いてる?おーい」
コットが僕の目の前で手を振る。
やばい、一応会話中なの忘れてた。
「すみません。少し考え事を……」
「確かに、考え事おおそー」
コットが笑う。
メリーがコットと対決するのは決勝戦。
本来はA組内でしか行われない魔法模擬戦にコットが乱入するのだ。
コットは実技オンリーで学園に入った特例。学園側としても実技イベントには極力参加させたいのだろう。
トーナメントにおいて主席と次席は恐らく正反対の位置に置かれる。となれば、僕とメリーが当たるのは最後。で、決勝戦でメリーと当たるとなれば僕とコットのが先に当たるはず。
メリーはコットに勝てない。
僕が、コットを倒すんだ。
それしか、無い。
「ナヅ先生、僕に攻撃魔法を教えてください」
学校の教員が集まる教員棟、そこの職員室。
席に座るナヅ先生に話しかける。
ナヅ先生は攻撃魔法の先生だ。戦闘を習うなら適任だろう。
「はぁ?攻撃魔法は授業始まったばっかだろ。これからゆっくり教えるから、急くな」
ナヅ先生がだるそうに言った。
「お願いします」
僕は頭を下げる。
「早く強くならないといけないんです」
そして、続けてそう言う。
「……お前、何があった?」
先生が頬杖を突きながら聞く。
「……」
僕は何も答えない。
答えたところで、何も変わらない。なら、無駄な情報を話す必要はない。
「……しょうがねぇな。いいぜ、魔法での戦い方、教えてやるよ」
ナヅ先生が歩き出した。
「ついてこい。魔法実技棟に行くぜ」
僕はナヅ先生の後ろをついて歩く。
「この学園は王立魔法学園って言うだけあって魔法がかなり大事なってくる。多分、お前が今すぐに攻撃魔法を学びたいのも戦闘がメインの魔法祭があるからだろうな」
魔法実技棟の空き教室。
僕は椅子に座りながら机越しに先生と向き合う。
「で、その大事な大事な魔法っていうのが基本何に使われるか分かるか?」
「はい。権威を示すことです」
先生の問いの僕が答える。
「そ。まず前提として魔法って言うのは高い魔力を持つ人間……血筋が関係するから貴族ぐらいしか使えねぇ。そんだけ狭い界隈でも魔法学園ができるぐらいなのはそれぐらい魔法がすげぇからだ」
「圧倒的な戦闘力を誇る魔法騎士に、普通の人間じゃできないぐれぇ派手なことの数々。それらは魔法にしか実現できない。よって、強い魔法が扱えることは金や権力に直結する」
そこまでなら知っている。
特に魔法騎士というものは有名な話だ。魔法で領地を守る貴族はそこそこいるが、国お抱えの最強の住人の魔法使いのことで、魔法使いを夢見た者がまず真っ先に目指すものでもある。
「でも、そんな魔法にも弱点がある。それは何か分かるか?」
魔法の弱点……そうだな……。
「難しいこと……ですかね?」
魔法は敷居も難易度も高い。ある程度の魔力量やある程度の魔力放出量、そして高い想像力が必要になるからだ。基礎魔法一つの習得だって何日もかかる。
「ん-、ちょっとだけ正解。確かに魔法はムズイ。魔力関連の才能の土台の上に高い想像力がいるからな。でも、そこじゃねぇ。私が話してるのは、”魔法使いと戦う上での弱点”だ」
魔法使いと戦う上での弱点……?
圧倒的な戦闘力を誇り、なんでもできる魔法に弱点……?
それも、話しぶりからして魔法使いのみに発生する弱点があるはず。
なんだ?そんなの……
「それは、溜めが長いことだ」
先生が言う。
溜めが……長い……?
「普通に人を殴るんなら拳を突き出すだけで終わる。けど、魔法は違う」
あ。
そっか。
「魔力を出す、魔力を溜める、魔法にイメージする、そして、基本の攻撃魔法なら飛ばす。普通より工程が多いうえに、どれも時間がかかる」
「なるほど……」
言われてみればそうだ。魔法は発生させるまでの時間が殴る蹴ると比べるとかなり長い。
「じゃ、対魔法使いにおいて最強の戦法は?」
溜めがいる魔法使いに、最も有効な手段……。
「速攻を仕掛けることですね」
「正解」
なるほど、見えてきた。
僕が何の練習をするべきかが。
「お前は魔力量が周りと比べて少ねぇ。でも、魔法を使わせなければ魔力量の差なんて関係ない」
先生が笑う。
「それに、知っての通り魔法っていうのは高い集中力がいるせいで同時発動ができない。魔法発動中は魔力を放つことすら難しいな。一回でも防御に回っちまえば相手の溜めた魔力がなくなるのを待つか、攻撃を避けるしかない」
じゃあ速射で一回でも防御に回らせてしまえば僕はかなり有利になるのか。
魔力を溜めるのも一瞬、魔法を想像するのも一瞬、魔法を放つのも一瞬。
そうすれば、相手に攻撃させる隙を与えずにすむ。
「例えば」
先生は手のひらを僕に向ける。
その瞬間、強い風が吹いた。
一瞬でだ。魔法を使う際に起こる魔力の溜まりが見えなかった。
僕は後ろに耐えそうになるのを、何とか机を掴んで耐えた。
「これ、反応できるか?」
「無理……ですね」
どうやって反応するんだよ、こんなの。
でも、これで速射の強さが分かった。
「可愛い生徒の頼みってことで、特別に私の持つ魔法の速射のコツ教えてやる」
「元魔法騎士団副団長の秘訣。そして、”とっておき”も。全部な」
ナヅ先生が言う。
僕の魔法特訓が始まった。
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