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中間試験

「この学園に入ってからそこそこ経って、お前らはさぞかし学園生活に慣れたことだろう。だがな……」


 朝のホームルーム。


「この醜態は許せんぞ!?」


 ナヅ先生が机をたたき、叫んだ。


 僕はクラス中を見渡す。


 クラスメイトの大半は机に突っ伏していたり目をつぶったり大声でいびきをかいていたりして寝ている。


 酷い惨状だ。


「先生、多分みんな中間試験の勉強で疲れてるんですよ……」


 僕が庇うように言う。


 ちなみに僕は普段から勉強を頑張ってきた甲斐があってか睡眠を削るほど勉強をする必要はない。多分、メリーもそうだろう。


「分かってるよ、中間試験近いもんな。でも流石にここまで寝られると教師として気分が悪ぃ」


 先生がそう言ってため息を吐いたとき、隣の席で寝ていたフェトムが目を覚まし、顔に被せた教科書を少しずらした。


 フェトムは机の上に両足を組みながら寝ている。なんで授業中も休み時間も机の上に両足を組んでるんだろうな。偉さが態度ににじみ出ているのか?


「教師ナヅよ。知っての通り、俺たちのほとんどは授業が長ったらしくて真面目に受けていない。だから、授業外で頑張っているのだ。この睡眠は努力の形跡である」


 そして、フェトムは再度顔の上に教科書を乗せた。


 えぇ、なにその理論……授業ぐらい頑張って真面目に聞こうよ。そっちの方が絶対楽でしょ。


 アイマスク代わりに教科書を使って寝るよりベッドの方が圧倒的によく寝れるでしょ。


「はー。私も同じタイプとはいえ、”授業も勉強もしてきませんでした”をここまで偉そうに言われるとムカつくな……まぁいい、これで朝のホームルームは終わり。メリー、ヒューマ、モード。お前らだけがこのクラスの良心だ」


 先生は呆れた顔で教室から出ていく。


 世界でもトップレベルの王立魔法学園。そこのトップともなれば毎日ちゃんと勉強してる人が大半だと思っていたが……実情はこうだったとは。


 みんな中間テストは大丈夫なのだろうか……。


 この学園では中間試験や期末試験の成績次第でA組とかB組とかのクラスが上下する。


 このクラスからクラス降格者が出なければいいが……。


「皆さん大丈夫なんでしょうかね」


 僕がメリーに聞いてみる。


「さぁ。わたくしには関係ありませんわ」


 メリーはいつものように答えた。


 まぁ、そうだよね……僕も僕の心配をするべきか。


 授業毎にちゃんと予習復習をしてはいるが、念には念を入れておいて損はない。


 それに、特待落ちするわけにはいかないからな。


 僕は教科書を開き、次の授業の予習を始めた。




 休日。


「勉強会っ!!なのだぁ!!」


 クラスの男子が全員僕の部屋に集まっている。


 理由は勉強会。


 勉強をするのは別にいい。が、しかし……


「なんでよりにもよって僕の部屋なんですか……」


 一人用の部屋に六人。流石に狭い。


 それに、勝手に誰かが持ち込んだ大きな机が部屋のほとんどを占領している。


 勉強をするなら図書館にでも向かえばいいのに……。


「まぁいいだろうヒューマ。あとでこの俺が使用料金をやる」


「お金の問題じゃないです……」


「やる気出ねーんだよいつもと同じ環境だと!分かるっしょ!?」


「僕は同じ環境です……」


「ヒューマが男子で一番頭良さそうだからな!部屋にもご利益がありそうだ!」


「ないです……」


 何人か適当な理屈を並べてきたが、まぁいいだろう。


 そこそこの期間同じ教室で過ごしてきたメンバー。なんとなくだがみんなBクラスに落ちてほしくはない気持ちがある。


 だけど、一つの部屋にこんな人数が集まったら何が起こるかなんて大体見当は付くんだよなぁ……。


 一時間後。


「なぁーフェトム様ぁ。お金ちょーだいよ。なんか購買で買ってくるよ」

「ほう、いいだろう。アリア、貴様のセンス頼りで人数分の菓子でも買ってきてもらおうかな」

「でさぁ!俺魔法下手なのに魔法系のサークル入っちまってぇ……」

「ははは!我もアクマサークルは想像と違って二秒でやめたぞ!!」


 まぁ、こうなるよな。


 勉強なんて他人とやるもんじゃないのだ。誰か一人がちょっとふざけ出したらそれに誰かが乗っかり、おふざけは加速し、伝播していく。


 唯一真面目に勉強してるのはモードだけだ。


「モードさんは真面目ですね……」


 僕はこの中で唯一勉強をしているモードに喋りかける。


 あんまり喋ったことはないが、どんな性格の人間なのだろうか。


「……多分だけど、俺以外が不真面目すぎるだけだと思うぞ」


「……まぁ、確かに」


 僕は答える。


 よっしゃ、まともな人だ。


 流石このクラスの良心。


「前提として、俺がそこまで優秀じゃないっていうのもあるけどな。真面目に頑張んねぇとこの学園に食らいつけねぇ」


 モードは勉強をする手を止めない。


 真面目に頑張んないと食らいつけない……僕と一緒だ。でも、


「真面目なのは優秀だと思いますけどね」


 僕も取り柄なのは真面目なことぐらいだけど、それを卑下する気はない。


 何なら自分の数少ない長所だと思っている。


「そうか?……まぁ、そうだな」


 モードは問題を解き終わり、答え合わせに入る。


「ヒューマ。俺はお前を勘違いしていたかもしれねぇ。狂ってたのは自己紹介の時だけだったんだな」


 モードが言う。


「いやまぁあの時は……はは……」



 自己紹介………ね。うん、あの時の自分のことは擁護できない。


「そうだ、ヒューマ。せっかくだからこいつらになんか喝入れてやってくれよ」


 モードは顎でふざけてるやつらをさす。


「っしゃお前ら!菓子買って来たぞぉ!!」


 そのとき、アリアが部屋のドアを開けた。


「Fooooo!!!」


 僕の部屋はブチアガる。人の部屋でブチアガるな。勉強会中に。


 僕はため息をついて立ち上がると、アリアの腕にあるお菓子たちを速攻で取り上げ、ベッドにぶん投げる。


「なっ!なにすんだよ!!」


 アリアが僕の肩を思いっきり揺すった。


「お菓子は没収です!!」


 僕は大声で言い放つ。


「「「「!?!?!??」」」」


 すると、僕の耳に聞くに堪えない非難が飛んだ。


 だが残念なことに、勉強してないやつらの声なんて僕の耳には聞こえない。


 さて、じゃあ計画通り……


「その代わり、ゲームを開催します」


 僕は問題集を手に取った。


「ゲーム……?」


 デリヴェがかみつく。


 予想通りだ。


「ゲームは単純、”勉強ゲーム”。今から問題集を解いてもらって、僕が丸付けします。そして、その問題の量と正答率、難易度を僕が加味してお菓子を軍配しましょう」


「なにっ……!?」


 キュナも嚙みついたな。


「簡単な問題をちまちま解いてお菓子をちょっとづつ乱獲するもよし。難しい問題をたくさん解いて一気に貪り食うのも良し。勉強の仕方は各々のスタイルに任せます」


 僕は息を吸った。


「いい加減、勉強してください!!」


「ヒューマ、貴様……」


 フェトムが震える。


「天才ではないか!?」


「画期的だ!!これで勉強できる!!」


「アクマ的であるぞぉ!!」


「俺は喋らない俺は喋らない俺は喋らない俺は喋らない俺は喋らない」


 全員が勉強モードに突入した。


 よし、これで全員がまじめに勉強をする。


 そしてさらに……僕が丸付け役を担うことで全員の学習レベルも知ることができる。


 このゲームの本質は勉強をさせることではなく、クラスメイトのレベルを知ること!ライバル視察と言っても過言ではないだろう。


 さぁ、勉強しろ。そして、どの程度の学習レベルなのかを僕に教えてくれたまえ。




 数時間後。


 お菓子が底を尽きた。


「はい、終了!!」


 そして、勉強会は幕を閉じる。


「いやー、なんやかんやで楽しく勉強できたぜ~!」


 デリヴェが伸びをしながら言う。


「一人より断然楽しかった!!良きなのだ!!」


 他のみんなも満足そうだ。


 モードもちゃんと参加してくれたし、僕はクラスメイトのレベルを知れて大満足である。


「じゃあまたなー」


「ういー、あざしたー」


 みんな僕の部屋を後にする。


 ……さて。


 結論から言おう。


 僕が、かなりまずい。


 全員解くスピードが速いうえ正答率もかなり高く、授業をさぼってるとは思えないレベルだった。


 僕だって正答率は高い。が、時間の観点から見てかなり不利である。


 あいつらやっぱA組だ。全員頭がいい。言動あれなくせに。


 少なくとも男子にBクラス落ちはいないと思う……が、あいつらにテストの点数で負けるのはなんか嫌だ。


「……勉強するかぁ」


 僕は机に向き合う。


 中間テスト。


 次席の力を……日々の積み重ねがどれだけ大事なのかを見せつけてやる。




 中間試験が終わって数日後。


 その結果の順位が一年棟の廊下に張り出されていた。


「あっぶな……」


 結果は二位。


 一位は全科目ほぼ満点のメリー。そして、三位のフェトムとは一点差だった。


「一歩及ばずか……」


 隣でフェトムが舌打ちをする。


 危ない。なんとか……なんとかギリギリ次席の座は独占できた。


 ついでに、一位から十位までは僕らA組が総なめ。十位のアリアでもB組のトップとは五十二点差をつけていた。


 A組は上位十人が選ばれると聞いていたが、ここまで差が開くのか?まぁでも、授業のスピードや質が他のクラスよりも少しだけレベルが高いのだろう。だとしたら差が開くのもありえなくもないか。


 B~D組では何人か人員の移動があったらしく、少数だが、絶望してる人間や狂喜乱舞している人間を見かけた。


 人数多いなぁ……そういえば、最下位は何点ぐらいなんだろうか。


 僕は興味本位で最下位を見てみる。


 コット・オール 0点


「……は?」


 目を疑った。


 れ、0点……?


 何か聞き覚えがある名前だな……っていうより、そんなの退学ものじゃ……


「あーあ、ゼロ点だったわ。最悪~」


 その時、後ろから声が聞こえた。


 僕はその声がする方向を見る。


 0点の男。コット。


 その男の後ろ姿が……


 グルンッ


 コットの頭が急速に僕の方を向く。


 そして、目が合った。


 なんでバレ……いや。


 この顔、知っている。


「ん?誰?」


 コット・オール。


 あの漫画の、主人公だ。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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