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サークル体験

 教室の前には、溢れんばかりのサークル勧誘たち。


「やっぱりサークル入りません……?」


 サークル勧誘の時間。


 僕は隣の席で教科書を読み、ノートにペンを走らせているメリーに話しかける。


 帰る人はフェトムについていけば帰れるし、このクラスでは何人かサークルに所属している人もいる。

 

 教室に残っているのは僕とメリーとナヅ先生だけだ。


 聞いた話によると、デリヴェは熱いサークル勧誘を受けサークルに所属することにしたらしいし、キュナは悪魔サークルとやらに、ルースやフローレもサークルに所属している。


「勉強」


 メリーは一言だけ返した。


 そして、黙々と勉強を続ける。


 多分、このサークル勧誘の時間を今日の授業の復習の時間だとしか思っていないだろう。

 まぁ僕も同じような考えだが。


 それでもやっぱりなぁ……サークルには興味がある。


 だって悪魔サークルがあるんだぞ?サークル自体はどうでもよかったとしてもどんなものがあるのかと多少なりとも興味は湧く。


「ナヅ先生、なんかサークルの帳簿とかってあったりしますか?」


 僕が教卓の奥にある椅子に座るナヅ先生に聞いた。


「私は持ってないな。この学園はサークル数がかなり多い。私みたいな顧問がついてるサークルもあるが、三、四人で経営している身内サークルが大半だ」


 先生が答える。


「そうなんですね……え?先生顧問してるんですか?」


「ん?あぁ、一応な」


 僕は目を丸くする。


 マジか……超意外だ。


 この先生はとにかく雑で粗暴。顧問とかいう面倒そうなことをするタイプだとは思えないのだが……。


「おいおい、そんなに驚くかよ……」


 僕の反応が露骨すぎたのだろう。先生が少しショックを受けた顔をする。


「そうだな……せっかくだ。勧誘ってわけじゃないが、うちのサークル来るか?」


 先生が僕に提案をした。


 サークルとか興味なさそうなナヅ先生が顧問をするサークル……興味は湧くな。


「何のサークルなんですか?」


「うちはな……”魔法創造サークル”だ」


 先生が答える。


 魔法……創造……?


 確か、先生の担当は攻撃魔法学だったか。そうなれば魔法創造も魔法と銘打つぐらいだからつながりはあるのだろうが……魔法創造なんて聞いたことないぞ?


 だが、魔法を創造する……文言は面白そうだ。


「面白そうですね。ちょっとだけでも覗きに……」


 僕がゆっくりと立ち上がる。


「おっ、歓迎するぜ。でも……」


 僕と先生の視線の先が被った。


 そこに居るのは、勉強をするメリー。


 僕たちの話は聞いていないのだろう。無表情のまま教科書を読んでいる。


「あー……なぁ、メリー」


 教卓から先生がメリーに声をかける。


「サークル見学来たら、私の担当するテストで得点をプラスしてやるよ」


 そして、そう提案した。


 初手からかなり攻めるな……堂々とズル宣言かよ。


「不正は嫌いです」


 ナヅ先生の誘いをきっぱりと断るメリー。


 先生は立ち上がる。


「一回の授業につき一回、授業中にふざけてもいいぜ」


「何の意味が?」


 先生は一歩前に出る。


「よし、内職を許可しよう」


「授業中に攻撃魔法を学ぶのは必須です」


「楽しいぞ~!魔法創造!」


「楽しさが学園生活に何の影響を?」


 先生の誘いをすべて受け流すメリー。


「クッ……鉄壁だな……!」


 気付けば、先生はメリーの目の前まで来ていた。


 勧誘じゃないって自分で言ってるし、これまでの様子を見た限りそれは本当なのだろう。なら、そこまでしなくてもいいのに……。

     

 多分、僕が自己紹介で”メリー目的”って言ったからここまでやってくれるんだろうな。嬉しくはあるんだけど、メリーに無理をさせるのもなぁ。


 メリーが一緒に来てくれるんだったらそりゃ嬉しいけどね。


「……分かった。お前を目にかけてやる。普段は質問なんて受け付けてねぇ私が攻撃魔法……いや、魔法全般、どんな科目でも質問に答えてやる。お前用の復習問題集だって作るし、何かと上に口利きもしてやろう」


 先生からの太っ腹な提案に、メリーがついに手を止めた。


「……そこまで言うなら、良いですよ。どれも享受するつもりはございませんが、体験だけなら行きましょう」


「「っしゃぁ!!」」


 僕と先生がハイタッチをする。


「じゃあ早速行くぜ!メリーの心が変わらねぇうちに!」


「そうしましょう!」


 僕たちは早速教室のドアへ向かう。


「おーい!こんなかに魔法創造サークルのやつはいるかー!?」


 先生の問いかけに、サークル勧誘たちは動かない。


「まぁ、居ねぇか……どけお前ら!」


 先生の一言と、先生の後ろに僕たちが並んでいるのを見て察したのだろう。サークル勧誘たちはぎゅうぎゅう詰めだったのが嘘のように霧散していった。


「ったく。後輩を餌としか見てねぇ奴らが。ほんとに貴族かよ」


 先生がため息を吐く。


「とりあえず、サークル室がある魔法実技棟まで向かうぜ」


 先生が白衣のポケットに手を突っ込みながら言う。


 道中の一年のクラスはどこもサークル勧誘で溢れかえっていて、A組と同じような惨状であった。


 だが、B組、C組、D組とクラスが下がるにつれ勧誘の人数は少なくなっていっている。


 サークル勧誘の主な目的は優秀な人材を得ること。それを考えると当然の帰結ではあるが……いい気はしないな。


「こっちだ」


 僕たちは先生について行って、魔法実技棟に入る。


 隣の棟だってことは知っていたが、入るのは初めてだな。まだ魔法の実技演習はないし。


 そして、またしばらく歩いた。


「この部屋だぜ」


 先生が魔法実技棟の奥の奥にある一つの部屋の前で止まる。


 随分寂れた場所だ。なんだか明かりも暗い気がする。


 先生の前にある部屋のドアの窓には、紙で”魔法創造サークル”と適当な字で書かれている。


 これ、まともなサークルなのか……?


「ちなみにサークル人数は私含めて二人な」


 先生が言う。


「二人って……実質一人じゃないですか」


 っていうことは超が付くほどのアングラサークルってことだよな……大丈夫か?


「まぁ魔法創造自体もう流行ってねぇしな。必要な魔法は出尽くされてる」


 先生がガララッと勢いよくドアを開けた。


「おい、サーシア!見学!」


 部屋自体は寮の部屋二つ分ぐらいの大きさしかなく、部屋の真ん中に大きな机一個と椅子がいくつかあるだけの空間だった。


 部屋の奥には何やら大量の物の山が積まれていて、いくつかは微量だが魔力をまとっている。


 魔力を持った物……魔道具か。


 魔道具の中には、魔法陣という魔力を込めると魔法が発動したり、魔力を溜めこんだり、条件を満たすことで魔法を発動させたりすることができる超上級魔法が内包されていて、魔力を込めるだけで火を起こせるランタンや、魔力を込めるだけで水が湧き出るコップなどが存在している。


 かなりの高級品なはずだが……なぜこんなにたくさんあるんだ?


 部屋の中には一人の背の高い白衣を着た女子が居て、テーブルに寄りかかりながら何やら水の入ったフラスコを眺めている。


 その女子……サーシアはこちらを向いた。


「むむっ!ナヅ先生!と……」


 訝しげな顔で僕たちを見るサーシア。


「一年生!?」


 サーシアは丁寧にフラスコを置くと、こちらまで駆け寄ってきた。


「一年生!本物でありますか!?まさか一年生をゲッツしてくるなんて……!」


 サーシアは感極まった様子で先生の手を掴む


「サーシアは感動であります!嬉しいであります!すごいであります!」


 そして、ぴょんぴょんとその場で跳ねる。


「二年間ぼっちだったもんな……とりあえず、なんかもてなせ」


 先生が近くの椅子にドカッと座る。


 僕たちも部屋の中に入り、席に着いた。


 二年間……ってことは一年生の頃から三年生の今までずっと一人のサークルだったのかよ。すごいな、胆力が。


「かしこまりましたぞ!」


 サーシアはガラス窓のついた棚からコップを二個取り出す。


「水魔法」


 そして、水魔法で水を入れた。


「~~魔法」


 次に、小声でなんか言う。


 ……今、その水に何した?


 魔法使ったよな?え?マジ?


「さぁ、召し上がれ!!」


 僕たちの目の前にコップを置くサーシア。


 僕とメリーは怪訝な目でそれを眺める。


 出されたからには飲むしかない。でも……


 ……見た目は、普通の水だ。


 だが、何の魔法を入れた……?


 いや!考えるな!メリーに安全性を伝えるために、僕は……


 僕はコップに入った水を一気飲みする。


 その味は……


「甘っ!」


 めっちゃ甘い。なんだこれ、はちみつ?


 メリーもチビっと水に口を付けた。


 そして目を丸くする。


「……甘い」


 やはり甘いらしい。


「水を出す水魔法。そして、”水を甘くする”魔法」

「聞いたことないであろう?」


 サーシアがにやりと笑う。


 当然だ。


 そんな何のために存在するか分からない魔法なんて……


「生活魔法」


 先生が口を開く。


「お前らが学んでる攻撃とか防御とかの一般魔法とは違う、魔法使いたちが日常生活を送る上で編み出した”便利用”の魔法だ」


 先生が続ける。


「でも、魔法なんて一握りの人間しか使えねぇ。しかも、そのほとんどが上流貴族で、生活のことなんて全部使用人に任せられる連中だ。”非効率”っつー理由で生活魔法の研究はすぐに廃れちまった」


「それでも!生活が便利になる魔法や、そうではない魔法も創造していく部活が、この”魔法創造サークル”なのであります!」


 サーシアがハイテンションに言う。


 なるほど、魔法創造サークル……。


 ゼロから魔法を創造すること。


 そういえば、魔法を自分で作ろうなんて思わなかったな。既存の物で十分なのに、全く新しいものを作ろうなんて発想には至らない。


 料理みたいなものか。既存の料理を極めたりアレンジするようなような料理人は多いが、まったく新しい料理を作りだそうだなんてなかなか思わないだろう。


 多分、めちゃくちゃ難しい行為だから。


 でも……


「面白そう」


 メリーがぼそっとつぶやく。


 うん。僕も全く同意見である。


「うんうん、意欲は十分!素晴らしいですなー。それでは、さっそく研究にとりかかりましょ~!」


 僕たちのサークル体験が始まった。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!

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