第14話 カッパーの初心者冒険者
ここら辺りで一章と区切れば良いのかな?なんて思ったり思わなかったり。
ーーあんな大きな猿と誰が戦っておりますの…
郊外のこの家に来るまで敵の数も多く激戦になるであろうと踏んでいたセシリアは目の前で繰り広げられる攻防戦を見て驚く。
そして、カッパーの初心者冒険者はもう死に、敵軍がこちらに向かって来ているのだろうと思っていたのだが道中、敵に遭遇する事もなく、ここまで来れたことにも驚いていた。
辺りを見渡すと壊されたのであろう原型を留めてはいない納屋に家。至る所に落ちている岩。
そして、上半身が吹っ飛んでいる猿らしき物が転がっていた。他にも至る所に猿の死体であろう物が転がっている。
あの方は何処からか助けに来たヒーローなのでしょうか?
そう疑問を抱き始める。まさか、カッパーの初心者冒険者にあのようなデカく白い毛並みの猿を相手には出来ないでしょうし…とも思うのであった。
そして他の団員達も唖然としてその光景を見ているのであった。
「なっ何が…どうなっているの…」
そう呟くシャーロット。隊長のアンジェラもその攻防戦に目を奪われているかのようだった。
大きな土で出来た壁を4つ出すがいとも簡単に粉砕する大きな猿。
そこから攻防を繰り返していたと思いきや、それを待っていたとばかりに何かを振り下ろす姿。
あんな早い攻撃に無防備に飛び込むなんて…!と目を瞑るがザクッと斬るような音がした瞬間、猿の大きな叫び声が聞こえて来る…
えっまさか…と思い目を開けると次々に斬り刻む人の姿。
バチンという大きな音を立てた瞬間、猿は膝を付いていた。呻いているのがはっきりと分かる。
そして、トドメを刺しにかかったが殴られて横に吹き飛ばされたかと思うと捕まってしまった…
と直後、横から慌ただしい気配を感じて見ると複数人の団体が到着していた。雰囲気から察するに冒険者の方々でしょうか。
その一人、屈強な身体をした男性が乗っている馬から一人の少女が飛び降りて来る。
「タケノリ様あああああ!」
えっ…?綺麗な黒髪が台無しになるほどボサボサで見た目から綺麗な和服なのが伺えるのだが泥で汚れており、愛らしい顔も凄く涙で汚れきっていた。
「アンナ?!」
そう言うとこちらに気付いたのか走りながら寄って来て私にしがみ付く。
「タケノリ樣が…!タケノリ樣が…!!」
あのタケノリが…?アンナもどうして…まさか、カッパーの初心者って…と思ったところで人の大きな叫び声が聞こえて来る。
はっと見ると猿に掴み上げられている手の中で叫んでいた。
危ない!今はどうしてアンナがここに…タケノリは?などと考えている暇はない!まずは目の前の人を助けなければ!
駆け付けようと一歩踏み出したところで何か異様な雰囲気を感じ立ち止まる。辺りの空気が変わっていくようだった。
猿の手の中で握り締められている人の叫び声が段々と大きくなる…と思った瞬間…
空高くから光る矢が猿に向かって落ちるのが見えた。光…?閃光…?いや…あれは…大雨や天候が荒れている時に空で光る物体…雷だ。雷が猿に直撃した直後、猿が再度、跪く。目に…何か刺さっている。
あの人がやったのだろうか…
その当人はすでに力尽きたのか地面に伏したまま動かない…
「小僧おおおおおおおお!殺すうううううううう!」
と大きな叫びをあげ倒れてる人に近づく。これは、もう危ないと駆け寄ろうとしてレイピアを構えたところで猿がこちらに気付き、私の後ろに控える騎士団、冒険者を見て残っている猿達に向かって
「引き上げる!」
と叫んで森の中へと戻って行くのが分かる。
そして騎士団、冒険者が大きな歓声を上げ出した。ふぅ…と一息ついたところ私の横を走り抜ける少女。
「タケノリ樣!タケノリ様ああああああ!!」
まさかと思い私も走り、倒れている人へと駆けつける。俯せで顔は見えながチリチリの髪の毛で分かる。チリチリの髪の毛をした人はこの国にはいない。知るとしたら、先日知り合ったばかりの殿方。
「タケノリ?!」
出会った頃の白く綺麗な服はズタボロになっており赤い血で滲み白い色はもうすでに見えない。ズボンも敗れており、身体は骨折もしているのだろう…悲惨な現状が見て伺えた…
ゴフッと血を吐き出すタケノリ。泣き叫ぶアンナ。
すぐさま仰向けにして脈を測る…良かった…まだ死んではいないが…脈が弱い…。
「タケノリ様!死なないで!タケノリ様!タケノリ様!」
と泣き叫びながらタケノリの腹に手を乗せて治癒魔法を使うアンナ。アンナはサポート能力が高く防御面、治癒面に秀でているのは分かるので、ここはアンナに任せていれば良いだろうと思いタケノリの頭を膝に乗せる。
「アンジェラ隊長!避難していた住民を見つけましたので、これより避難させます!」
と声が聞こえて来たので、その方を向くと中年夫婦が寄り添いながら歩いているのが分かる。
そして、その目はタケノリに向けられているという事も。
「セシリア、そいつはお前の知り合いか?」
アンジェラはこちらに歩み寄ってきて私に声を掛ける。はい。と言い頷く。
私の膝を枕に寝ているタケノリを見て何か思うところでもあるのだろうか。感慨深く見ていた。
「セシリア、すぐに医療班を寄越す。お前も付いていてやると良い。」
そう言い踵を返し、辺りの捜索に戻って行く。
「セシリア、セシリア〜!その人、セシリアの知り合いなんだ?」
横からシャーロットが顔を出す。そうですわよと伝えると無邪気な笑い顔になりながらシャーロットは言う。
その人、すっごく頑張ったんだろうね!かっこ良かったね!と。
確かにこんなにボロボロになるまで、夫妻を前に戦って守って、凄く頑張ったのだろう。何だか急に胸が締め付けられてタケノリの頭を軽く撫でる。
すると、気が付いたのか私を見上げた後に泣き叫ぶアンナの顔を撫でた後、また目を瞑ったのだった。
バタバタと医療班が来るのが分かる。
「アンナ…もう大丈夫ですわ。私達も一緒に行きましょう。」
そう言いアンナの手に手を重ねるのであった。




