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第35章:インベントリと待ち伏せ

木々が細い道を抱くように並び、まるで見張る腕のように道を包み込んでいた。その先はほとんど使われていない。

冷たく澄んだ空気が首筋をなでる。

雲の隙間から光がこぼれ、道の上にやわらかく溜まった。


前方には高い山がそびえていた。斜面には木々と険しい谷が入り組み、はっきりとした道はなく、岩と根が刻んだ分かれ道ばかりだった。


『火を制御できるのは助かるな。温度を調整しやすい。』

そう思いながら深く息を吸い込むと、呼び出した熱が体を心地よい温度へと落ち着かせた。


左手の小指に、小さな温もりを感じる。リオラの小さな手がそれに絡んでいた。


『長く歩いてきた。リオラもそろそろ疲れたか。』

立ち止まると、二人も足を止める。眠そうな目を上げて、リオラがこちらを見つめた。


片膝を地面につけ、彼女を抱き上げる。

「疲れたら言ってくれな?」と声をかけると、リオラはこくりと頷いた。


「パパ、リオラ、お腹すいた。」

小さな声でそう呟いた。


『そろそろ昼食か。』

太陽の角度を確かめ、簡単な計画を立てる。

「休憩して食べよう。」笑みを見せると、エヴァも頷いた。


「座る場所を用意する。こっちへ。」と声をかけると、エヴァはゆっくり歩み寄り、傍に立った。


『あれから話していないな……彼女が俺に触れられないと分かってから。』

風がざわめき始める。最初はかすかだったが、やがて土埃を巻き上げ、俺たちを包むように渦を描いた。


『俺は会話が下手だ。雰囲気を和らげるべきか?』

そう思った瞬間、風が答えるように吹き荒れた。土と枯葉を巻き込み、渦はみるみる大きくなり、数心のうちに竜巻となって俺たちを覆った。外は霞み、光も形も失われ、まるで世界が閉ざされたようだった。


「これは……?」エヴァが緊張した声を出す。


「少しの間、休むために整地している。」俺は落ち着いて答えた。


リオラは怖がる様子もなく、指を握ったまま目を輝かせていた。


やがて風が収まり、周囲は広々とした空き地へと変わっていた。


[ 主様、解析完了しました。局所風圏内において、リオラ様は一切の反発力を受けておりません。 ]


『つまり彼女にとっては現実味が薄いのかもしれない。本物の竜巻も、テレビで見るだけなら怖くないように。力を感じなければ恐怖もない。……安心した、怯えてはいない。』


木のテーブルと椅子を二脚、風と土から形作る。木の香りがまだ新しい。

「インベントリというものがある。ほとんどの勇者が持っているはずだ。」俺は説明を始めた。


「それは希少なスキルよ。」エヴァが答える。「商人が持っていれば、一財産築ける。」


俺は続ける。「だが勇者のインベントリは無限だ。武器や防具を軍隊分、すべて持ち歩くこともできる。」


木の皿に果物を盛り、蜂蜜を垂らす。リオラを膝に乗せると、彼女はうれしそうにかぶりつき、頬に甘さを光らせた。


エヴァも一口かじり、驚きの声を漏らす。「……美味しい。」


俺は彼女を観察した。情報を漏らすか、裏切る気配はないか。

『……だが信用はできない。俺の他の力は隠しておこう。』


リオラが果物を差し出す。「パパ、あーん。」

胸に溜まっていた冷たい思考が溶け、自然に笑みがこぼれる。


『……まあいい。もし裏切れば、その時は殺すだけだ。』


昼食を終え、登山を再開する。山は濃い魔力を放っており、薬草も豊富だった。夕陽が稜線を赤く染める。


エヴァが道を指し示す。「ここからが本番。リザードマンの沼、蛇が眠る湖、エルフの森の守護者、グリフィンの巣……。真の魔物の領域に入るわ。」


『水の上を滑りたいな。リザードマンも制圧できる。気配は風で消せるし……問題は少ない。』


俺は夕焼けを楽しむことにした。


夜。焚き火を囲む。リオラは眠り、エヴァは火を見つめていた。


「吸血鬼は飛べるのか?」と俺。


「飛べるわ……血さえあれば。」と彼女は答える。


沈黙の後、木々の間から影が現れた。狩人のような静かな動き。


「ここまでで力は戻るか?」俺が問う。


「十分よ。」エヴァの瞳が暗闇に光った。


――続く。

今回の章が退屈に感じられたらごめんなさい。本当にその通りだと思います。実は書いているときに気持ちがあまり乗らなくて、思っていたより静かな内容になってしまいました。次の章はもっと楽しんでもらえるようにします。すでに執筆を進めているので、きっと面白くなるはずです。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。皆さんのコメントや応援のおかげで書き続けられています。もし次に「こんな展開が見たい!」というものがあれば、ぜひ教えてくださいね。

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