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第34章:一問の規律

木々が細い道を包み込むように立ち並び、まるで見張る腕のようだった。

前方の道はほとんど使われていない。

冷たく澄んだ空気が首筋を撫で、雲の切れ間から漏れる日差しが小道に光の池を作っていた。


先には高い山がそびえ、斜面には木々と深い谷が入り組んでいた。はっきりした道はなく、石や根によって切り開かれた幾つかの選択肢があるだけだった。


「……ぱ。」小さな声が腕の中から聞こえた。


見下ろすと、リオラの小さな手がシャツを掴み、眠たげで真剣な声で言った。

「パパ。」その一言は、胸の奥の緊張をふっとほどく。


「どうした?」


「リオラ、歩きたい。」


彼女を地面に降ろすと、小さな手が僕の左手の小指をぎゅっと握った。


右を見ると、少し後ろに立つエヴァの顔が影に覆われている。何か言いたかった。けれど言葉は絡まって出てこない。


『……こういう時、本当に苦手だ。普段なら黙っているけど、今は何か言うべきだろう。どうしよう。「元気?」とか? いや、食べ物を出す? いや、朝ご飯は食べたばかりだ。じゃあ「なんで悲しいの?」って聞くべきか……』


だが、その空回りの思考の奥にもっと深い答えがあった。


『……彼女が仲間になってから、僕は彼女の問いに一つも答えていない。そんな僕を、どうして信じられるだろう。』


息を吐き、心を整えた。


リオラは頬を指で突きながら、登り始めるのを待っている。その姿を見るだけで心拍が落ち着いた。さっきまでのぎこちなさも、子どもの温もりに溶かされる。


山の匂いは樹液と冷たい岩。砂利が足元で小さく鳴り、登りが始まった。僕は余計な考えを手放し、光に照らされたリオラの髪や、小さな手の圧を感じながら、この瞬間の安らぎに身を委ねた。気持ちは消えたわけじゃないが、覆い隠すには十分で、ようやく言葉にできた。


「……街の中で誰にも聞かれたくなかったから、外に出るまで待ってたんだ。」落ち着いた声で言った。


エヴァが顔を上げ、興味を示す。


「ただ……ちょっと警戒してるだけだ。あの街は僕にとってまだ新しい。」


彼女の表情が変わった。不安の色が、好奇心に少し和らぐ。

「じゃあ、なんで私を信じたの?」


僕は立ち止まり、根が張り出した狭い道を見た。リオラを根の上に乗せてから、次の段差を手伝った。


「……君の中に、自分を見たから。」


『……でも、まだ完全には信じてない。家族以外、誰も信じたことはない。いや……アニメを観る人なら別だ。友達によく言われた。「アニメ好きだってわかれば、全部打ち明けるんだな」って。そうだ、アニメならその人がどう感じ、どう見ているかが理解できる。本当の姿が見えるから。現実じゃ、誰も本音を見せないから。』


『エヴァは……近くには置けない。未来でどうなるかは、わからないけど。』


そう思いながら、ゆっくりと山を登った。


「一から話そうか。」沈黙を有効にしようと、僕は切り出した。


「まず——この街には長くいたのか?」


「いいえ。逃げてからは長く旅をしたわ。同族を探すために。でも無駄だった。」エヴァの声は落ち込んでいた。


「他の勇者に会ったことは?」


「ないわ。どうしてそんなこと聞くの?」


「君は幸運だ。この世界の勇者だけに会えた。他の世界から召喚された勇者は、他人のステータスを確認できるスキルを持っている。」


エヴァの顔が凍りつく。「なっ!?」


「もしそういう勇者に会っていたら、君が吸血鬼だと一瞬でバレていた。」


「そんなの、不公平よ……。」彼女の声は小さく震えた。


「君が吸血鬼だと、僕は知っていた。けど、嘘はつかない。嫌なことでも正直に言う。僕の言葉を疑わないでくれ。」


エヴァは黙った。


根を越えるとき、リオラが届かなかったので持ち上げて進んだ。


「じゃあ、ゲームをしよう。」僕は提案した。「交互に質問をして、相手が答える。一方的に話すより面白いだろ?」


「いいわ。」エヴァが同意した。


「君の番だ。」


少し考えた後、彼女が口を開く。「どうしてあんなにたくさんの武器を買ったの?」


「全部使いたいからだ。」僕は答えた。「体の動かし方は完璧じゃない。でも、武器の動きは知っている。風を操れば、望むように動かせる。」


エヴァは理解しきれず首をかしげた。


僕は立ち止まった。空気が薄くなり、光が木々の間から溢れる。

「見せた方が早い。」


剣を呼び出すと、淡い光の中で刃がきらめいた。


「どこから出したの?」エヴァはすぐに次の質問を投げる。


「一つはもう聞いた。順番を守れ。」僕は微笑んだ。


「熟練の剣士は、一振りで木々を薙ぎ払う。切れ目すら気づかせないほどにな。」


「ギルドで聞いたことがある……。」エヴァは目を輝かせた。


小さな椅子を出し、リオラに言う。「座ってろ。パパが面白いのを見せてあげる。」


リオラは喜んで座り、目を輝かせた。山の空気が静まり、鳥の声だけが響いた。


「剣聖じゃないけど——」僕は横薙ぎに剣を振った。


一瞬、何も起きなかった。だがすぐに空気が爆ぜ、二百メートル先までの木々が水平に切り倒された。一本だけが残る。


最後の一本が震え、僕が剣を仕舞うと同時に粉々に砕け、破片となって崩れ落ちた。


エヴァは呆然と見ていた。「ど、どうやって……?」


「風だ。幹に細い空気の糸を巻き付けていた。切った瞬間に爆発的な風が広がる。最後の一本は何重もの糸を束ねて高圧の風にした。」


「……そんな……」彼女は息を呑んだ。


「剣で斬ったと思わせて、実は風で斬る。敵が気づく前に、終わっている。」


「でも、魔力の変化は感じなかった。」彼女は急いで言う。


「質問は一つずつだ。次は僕の番。」


リオラの手を取り、再び歩き出した。


(セバス、物を触らなくても収納できるのか?)


〔はい、マスター。すでに接触しています。〕


(風で触れている範囲も含まれるのか?)


〔その通りです。〕


(じゃあ椅子や机、必要なものを作っておいてくれ。あとリオラの人形とか魔法の杖も。落ちてる物は色付け用に拾っておいて。)


〔承知しました。〕


「力を全て使えないって言ってたな。なぜだ?」


「弱っているからよ。」エヴァの声は疲れていた。


「血を長く飲んでいないの。純血でも、力は弱る。歳を重ねれば必要も減るけど……。」


「モンスターの血じゃ駄目なのか?」


「人間が一番栄養が高いの。他にもいるけど……一番簡単なのは人間。」


彼女は伏せ目がちに言った。


『……そんなに危険な存在なのか。』


「噛むと痛いのか?」


「はぁ!? なに言ってるの?」


「痛くないなら、僕の血を飲めばいい。」僕は落ち着いて言った。


『彼女が本気を出せれば、リオラを任せられる。』


エヴァは顔を赤くし、「……あまり痛くはないわ……」と口ごもった。


僕は左腕を差し出した。「掴んでみてくれ。」


「え?……ああ、はい。」彼女が触れる。だが何も起こらなかった。


「……血は与えられないみたいだ。敵から奪え。」


エヴァの声は寂しげだった。「これは……何?」


「それが質問か?」


「違う……。」


左を見れば、リオラが僕の手を握りながら笑っていた。


——続く。

こちらこそ読んでくださりありがとうございます。

実はもう第1巻の終わりが近づいていて、残りはあと7話ほどです。

物語の最初の大きな章がようやく形になってきた感じがして、どう締めくくられるのかとても楽しみです。

さらに、第1巻が完結した後にちょっとしたサプライズも用意しているので、ぜひ楽しみにしていてください!

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