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第33章:戦いへの最後の準備

街をゆっくりと歩いた。

太陽は建物の上を滑るように傾き、人々はまだまばら。

商人が声を張り上げ、荷車が石畳をきしませながら進む。だが街全体がまだ目を覚ましきっていないような、怠けた朝の空気だった。


左腕にはリオラ。

右にはエヴァが並び、次の目的地へと向かう。


ひとつの店の前で足を止めた。

扉の上には彫られた看板が揺れている。

《ブレイド・アンド・エンバー》。


「ここは丈夫で質のいい武器を売ってる店。私の武器もここで買ったの。」

エヴァが看板を見上げて言った。


彼女が扉を押し開け、私も後に続く。

中に入った途端、鉄の匂い、油の匂い、そして血の記憶のように残る金属の酸味が鼻を刺した。


壁一面に並ぶ刃――光を反射する剣、黒光りする斧、革に収められた短剣、鋼で縁取られた盾。

高い場所には見事な品々が飾られ、机には布に包まれた剣、隅には兵士や素人が使うような実用的な中古武器の箱が積まれていた。


部屋を一望した瞬間、胸の奥に妙な違和感が走る。

『なぜだ?……そうか。危険すぎるんだ。ここは武器で満ちている。もし戦いになれば、どこからでも斬撃が飛んでくる。全てを制御しなければならない。』


私たちはカウンターへ。

白いシャツに革の前掛けと手袋をつけた若い男が立っていた。髪には油の匂いが残っている。


「ご用件は?」


エヴァがちらりと私を見た。その意味をすぐに悟る。


「丈夫な剣を一本。安物で構わない。」


若者の顔にわずかな陰が差す。彼は隅の箱を指差した。

「その中から選んでください。」


箱の中には傷のある刃や手入れ不足の剣ばかりだが、実用には耐えそうだった。

『特に変わったものはないな。セバス、この部屋に何か面白いものはあるか確認してくれ。』


私は一本の鉄剣を手に取った。装飾もなく、だがバランスは悪くない。

エヴァが不思議そうに見たが、何も言わなかった。


カウンターに置くと、若者が「銀貨五枚です」と言った。


「それに加えて――斧、非常に頑丈な槍、値段は問わない。レイピア、鎌付きの鎖のような長柄武器、ロングソード、そして大剣も欲しい。」


店内が凍りつく。

若者は唖然とし、エヴァも目を見開いた。


「……し、少々お待ちください。」

若者は奥へ消えた。


エヴァが驚きの眼差しを向ける。

「本当に全部使えるの?」


「まあ、そんなところだ。」


「どういう意味?」


「街を出たら説明する。実際に見せた方が早い。」


彼女はため息をついた。

「わかったわ。」


やがて奥から金属の音が響いた。若い声と、しわがれた低い声。後者には威圧感があった。


姿を現したのは大柄な鍛冶師だった。日に焼け、火に鍛えられた体。

黒い髭には白が混じり、両手には無数の傷と硬いタコ。


彼はカウンターに両手を叩きつけ、鋭い眼光を私に突きつけた。

「全部欲しいのはお前か?」


私は視線を逸らさない。


「何か問題でも?」

エヴァが間に割って入り、睨み返す。


鍛冶師は唸るように言った。

「支払いはいい。だが本当に使えるのか? 私は戦士に武器を作る。愚か者に渡すつもりはない。」


その圧力に耐えつつ、私は別の口実を考える。

『全部扱えると見せるわけにはいかない……理由が要る。……ルーン付与はこの世界に存在するか?』


[ はい、マスター。ルーン付与は職業の一つです。珍しくはありません。 ]


「ルーン付与に使うつもりだ。種類ごとに試したい。」


鍛冶師の目が細まる。一瞬の沈黙の後、彼は笑い声をあげた。

「ほう。ルーン細工か。いい心がけだ。ただし、金も根気も食うぞ。」


私は金貨を机に置いた。鍛冶師は目を細め、黙って頷く。

「……まあいい。だがレイピアは王都でしか手に入らんし、その鎖鎌みたいなものは知らん。」


「ある物で構わない。もし壊れた剣の柄があれば、それも欲しい。」


鍛冶師は頷き、奥から武器を抱えて戻ってきた。


槍――黒い柄に冷たい刃。

両刃の斧――銀の柄に氷のような紋様。

黒煙のような模様を宿す剣。

そして巨大な大剣――鈍重だが力を返す刃。


『どれも良い。』


支払いを済ませると、鍛冶師はさらに壊れた剣を差し出した。

翼の形をした鍔、赤と金の装飾。だが刃は失われている。


[ 高品質だが、今はただの残骸です。 ]


『それで十分だ。見た目がいい。』


武器を抱え、私たちは店を後にした。油と鉄の匂いが背後に残る。


「国境までどれくらい?」

私は尋ねた。


「王国アルセリオンを抜け、エリンドラルを通れば二週間。山を越えれば一週間だけど危険よ。」


「山道を行く。」


「聞いてた? 魔物は凶暴だし、私は全力を出せない。」


「大丈夫だ。備えはある。娘を危険には晒さない。」


エヴァは渋々うなずいた。


街を抜け、市門を越える。

市場の匂い、兵士たちの鎧の光、引きずられる囚人の姿。

すべてを背に、山道へ足を踏み入れた。


――続く。

この章が遅れてしまってすみません。最近なかなか集中できず、しばらくは更新がこのように遅れがちになると思います。それでも物語を追い続けてくださり、第33章を読んでくださって本当にありがとうございます。皆さんの忍耐、コメント、そして応援は言葉では言い尽くせないほど大きな力になっています。書くのがつらい日でも、それが私を前に進ませてくれます。できるだけ早く次の章をお届けしますので、もう少し待っていてください。

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