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第76話 とりしらべ

警備隊本部に出頭した、俺とルル姉。

俺たちの前に現れたのは、アルトス警備正だった。

警備隊を前世の警察と置き換えたら、警備正は警視正にあたると思われる。

そんなアルトスはルル姉との間に、何やら因縁があるみたい。




通された部屋の真ん中に、机があった。

机の上には映写機らしき物が置かれ、壁のスクリーンに映像が映し出されている。

幻想旅団のアジトである、山小屋の内部の映像だった。


「早速ですが、君のギルドカードを見せてください。」

席につくなり、アルトスは俺に催促してくる。

「あ、はい。」

俺は降魔の腕輪からギルドカードを取り出し、アルトスに手渡す。


「ほう、アンティークな収納アイテムをお持ちですね。」

アルトスは、降魔の腕輪に話題をふる。

「ええ、まあ。」

ここは何て答えるのが正解なんだろう。

どうやらアルトスは、降魔の腕輪を知らないようだ。


「そんな事より、話しを進めましょう。幻想旅団の調査には、役立ってるようですね。」

ルル姉が話題を変える。

ルル姉が視線を向けるスクリーンには、山小屋の内部が映し出されている。

多くの動物たちが、檻に入れられてる映像だった。


「ふむ、そうですね。」

アルトスはとりあえず俺のギルドカードに視線をおとす。

「C級冒険者が、初依頼で幻想旅団討伐ですか。」

と言いながら、何やら思案する様子。

元はF級だったカードを、ナナさんがC級に書きかえたカード。

俺は不安になってルル姉に視線を向けるも、ルル姉には無視され、ルル姉の考えが分からない。


「幻想旅団討伐の推定ランクはB級だったと思いますが、なぜC級の彼にこの依頼を受けさせたのです?」

アルトスはルル姉に話しをふる。

「あら、彼は無色の魔素の持ち主。依頼をこなせる期待はあったわ。現に、彼は幻想旅団の討伐に成功しています。」

「初めての依頼、にも関わらずですか?」

アルトスは疑惑の眼差しをルル姉に向ける。

「ええ。何か問題でも?」

「C級スタートなら、亜獣討伐あたりが初依頼になるのが、通例ですよね。」

「それは通例と言うだけで、必ずしも亜獣討伐をさせなければならない、と言う意味ではありません。」

「ならば質問を変えます。数ある討伐依頼の中で、なぜ幻想旅団討伐を選ばれたのですか。他にも適切な、あ、」

アルトスは自分の言葉を遮り、俺のギルドカードに目を落とす。


「お分かりいただけましたか。幻想旅団討伐が、一番適切であった事を。」

ルル姉はニヤりとほくそ笑む。

「なるほど。無色の魔素は、確か時空系魔術に特化した性質。彼なら幻想旅団の結界を突破出来ると言う訳か。」

「結界?」

何やら訳の分からないワードが出てきたぞ。

「依頼書にあった幻想旅団のアジトにはね、惑わしの結界が施されてたのよ。」

ルル姉が補足してくれた。

「そんな結界、依頼書に書いてありましたっけ?」

依頼書には、アジトの山小屋の場所が記載されていたが、そんな結界の事は書かれてなかった。

「依頼書には、全てが記載されている訳でもないのよ。重要性の低いと思われる事がらは、記載されない事が多いわ。紙面も無限ではないから。」

黙りこむアルトスの代わりに、ルル姉が答えてくれる。


今思いついた設定だから、後付けも仕方ないか。

幻想旅団討伐編からすでに20話以上費やしてる。

ならば、ストックは30話分は欲しいという事か。


「でも、そんな結界があるなら、記載しとかないと。これ、誰もアジトにたどり着けませんよね?」

俺は後付け設定に批判する。


「君の時空系魔術なら、この結界を解く魔法が存在するだろ。」

後付けだが、依頼書の不備を突かれたアルトスが吐き捨てる。

「魔法って言われても、俺」

「もう充分お分かりですよね。彼が一番の適任者だって事が。」

俺が転移魔法しか使えないと言おうとしたら、ルル姉に遮られた。

回復魔法も使えるのだが、時空系特有の魔術と言ったら、転移魔法になる。


「そうですね。ならばこの結界を突破して、彼がこの者たちを倒せたのは、なぜですか?」

アルトスはスクリーンに映る画像を切り替える。

熊、狼、カバ、ハイエナ、ライオン、虎が横たわっている。

虎の画像は本来白虎のはずだが、普通の虎の画像に差し替えられていた。


「どれも動物変化(アニマルチェンジャー)の中位種。この私でも手こずる相手なのですがね。」

アルトスは俺に視線を向ける。

そういやコイツら、ドラゴンに戻って倒したんだっけ。

その倒した時の映像は無く、倒した後の画像が存在するだけらしい。

「サム君。」

答えに困る俺に、ルル姉が声をかける。

そして封じの首輪に左手をあてる。


がゴン!


大きな音をたて、ルル姉の封じの首輪が外れる。

「これが出来れば、彼の実力の証明になりますよね。」

ルル姉はニヤりとアルトスに視線を向ける。

「そんな外し方出来るのは、ルルさんだけでしょ。」

アルトスは首をふる。


確か封じの首輪の鍵は、誰かの魔素。

その誰かの魔素で、封じの首輪は外れる。

この誰かとは、警備隊本部の誰かだと思うのだが、誰でもいいって事なのか?


「私が魔法を使わなかった事は、アルトスさんもお気づきですよね。まさか、気づかなかったのですか?」

「そうですね。確かに魔法は使わなかった。」

アルトスも封じの首輪に左手を当てる。


かちゃ。


アルトスの封じの首輪が外れる。


「この首輪の鍵は、設定者の魔素。だけど瞬時に大量の魔素を流しこめば、鍵は壊れるのよ。サム君もやってみて。」

転移魔法を使えば簡単に取り外せるけど、そんな方法もあったのか。

俺も左手を首輪に当てる。

そして魔素を流しこむ。


ぴしっ。


首輪にヒビが入るだけで、ルル姉みたいには外れなかった。


「な、」

アルトスがなぜか驚いてる。

「サム君、鍵の位置はここよ。」

ルル姉が俺の左手を鍵の位置に導く。


バキっ、バキバキバキ。どこ。


ルル姉に手を握られドキっとしたら、首輪がヒビ割れて壊れた。


「これで彼の強さは、証明されたかしら。」

俺は首輪が壊れた反動で、ルル姉の手を握る。


「なるほど。確かに彼なら、動物変化(アニマルチェンジャー)にも引けを取らない。」

アルトスも俺の強さを認める。これで俺が動物変化(アニマルチェンジャー)を倒せる事が証明された。のか?

「だけど、彼が動物変化(アニマルチェンジャー)ではない事の証明には、なりませんよね?」

やはりそこを突いてきたか。


俺は無意味のうちに、ルル姉の手を握る手に、力をこめる。



「ならば、決定的な証拠を、見せてもらいましょうか。」

アルトスは、不適な笑みを浮かべる。

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