第317話 この星の脅威
千尋峡谷に人知れず封印されていた、メテオドラゴン。
宇宙からの侵略者でもある彼だが、実はこの地の騎竜族を滅ぼすために引き寄せられた存在だった。
「ふ、その四天をも超えてしまってたのさ。騎竜族は。」
「なに?」
この世界の安定を担う存在。
天界から四方を監視している、神獣族。
それが通称四天と呼ばれている。
「だからこの星の守護者は、この星以外の存在に頼ったのさ。」
メテオドラゴンのその説明に、サムも違和感を感じる。
「ちょっと待て。おまえの言う星の守護者というのは、四天のことではないのか。」
「あー、」
と言ってメテオドラゴンは言葉を濁す。
久しぶりの会話に、思わず話しすぎてしまったメテオドラゴン。
この星の生命体が持ち合わせていない知識にまで、話しが及んでしまった。
だけど今さら修正することもできない。
「ざっくりと言うが、星の意志が産んだ防衛機能。それが星の守護者というヤツだ。普通の生命体でいう所の免疫機能みたいなものだ。」
「なに?この星の頂点は女神のカスミーティアだと思うのだが、違うのか?」
「ふ、そいつは後からこの星に来た者たちだ。この星の意志も害がなければ受け入れるって事さ。」
「害、かあ。」
メテオドラゴンの言葉に、サムも少し考え込む。
「その星の守護者とやらが動かないって事は、幻獣族に進化したスライム、それに魔王とやらもそれほど脅威って事でもないのか?」
サムはメテオドラゴンに思考は読まれているので、その思考を口にする。
「そいつらがどんだけ暴れようとも、この星にダメージはないからな。星の守護者が顕現する事もないだろう。」
「そうか。」
メテオドラゴンの返しに、サムもある結論にたどり着く。
「つまりおまえは、スライムも魔王も比較にならないほど、この星にとっての脅威なんだな。」
「う、」
サムの判断に、メテオドラゴンも言葉につまる。
サムの前世の姿に、どこか重なる所があるメテオドラゴン。
サムの同情心から、封印を解いてしまう可能性も濃厚な流れだった。
メテオドラゴンは、そんなサムの魂を利用しようとしていた。
「おまえの処遇には、ちょっと同情する所もあったのだが、致し方なしって事か。」
とサムは軽くため息をつく。
「ふ、その結論にたどり着くのに、時間をかけすぎたな。」
「なに?」
「おまえが女神から与えられた加護。どんな病気にもかからない、健康な体。」
「それがどうした。」
「その加護は、大気中に充満する魔素によって成り立っている。」
「な、そういうことか。」
サムもメテオドラゴンの言いたいことを理解する。
「ふ、この洞窟内部の大気には、魔素なんて含まれてないからな。そろそろ女神の加護とやらも維持できなくなるだろ。」
「ぐ、」
メテオドラゴンは、再びサムの脳波を支配しようとする。
「ぐぎゃー。」
サムの脳内に、メテオドラゴンの悲鳴が響く。
「あー、うるせー。」
サムの左腕にはめられた降魔の腕輪が、ほのかに光る。
降魔の腕輪には、サムの体内の魔素を一定に保つ効果があった。
それはサムの体内の魔素が著しく低下した時、周りの生物を襲って摂取することで、魔素を一定に保っていた。
だけど今は、手っ取り早く魔素を吸収する手段がない。
ならば、サムの体内に残った魔素を増幅させるしかなかった。
「おの、れ。またして、も、我の、野望、を、妨げ、るの、か。間隙の、救世主、め。」
サムの脳内から、メテオドラゴンの意識が消えていく。
「お、なんか静かになったな。」
メテオドラゴンの精神攻撃から解放されたサムは、目の前で眠るメテオドラゴンの本体に視線を落とす。
「さてと。こいつのうんこがスターダストサンドだって言ってたけれど。」
サムはメテオドラゴンの尻の後方にある物体に視線を向けると、首を振る。
「ふ、嘘こけよ。」
サムはエダーマ首領から、スターダストサンドは隕石の欠片だと聞いている。
そしてそのスターダストサンドを用いて作られた降魔の腕輪は、普通にメテオドラゴンの甲羅に共鳴している。
サムはメテオドラゴンの甲羅を、両手の爪で引っかく。
サラサラと、砂になって落ちる甲羅の欠片。
「こいつだろ。スターダストサンドってヤツは。」
サムはある程度の甲羅の欠片を集めると、降魔の腕輪にしまう。
サムは鑑定スキルを持ち合わせていない。
だけどこれがスターダストサンドだと、確信を持てた。
「さてと。」
この場での用事を終えたサムは、メテオドラゴンに視線を向ける。
「おまえとは、別の形で出会いたかったな。それこそ別の星で。」
サムはメテオドラゴンに同情しつつ、この場を後にした。
サムは洞窟の壁ぎわの階段を登る。
この階段は人間仕様で作られているため、出口に近づくにつれ、ドラゴンの体の大きさでは手狭になってくる。
サムは体の大きさを、人間の大きさへと縮小させる。
今人間に変化したら、女神の加護である健康な体も、維持できないだろう。
なにせ大気中に魔素がないのだから。
サムは階段の先にある出口を出る。
洞窟の入り口辺りに視線を向けるも、そこにミーシャの姿が見えない。
サムは一抹の不安を感じながら、洞窟を駆け抜ける。
サムが洞窟の外に出ると、そこではミーシャが二匹のドラゴンと戦っていた。
ここいら周辺は、大気中の魔素の濃度が極端に薄い。
だから普通のドラゴンは寄りつかない安全地帯なのだが、そこに弱ったドラゴンの姿を見たら、話は別だろう。
ども(・ω・)ノ
さてこのメテオドラゴンですが、今まで語られていた敵、スライムや魔王より強力な設定になりました。
こいつの封印を解いちゃったら、どうやって倒すんだって話しになりますよね。
これがRPGなら、クリア後のイベントに利用出来る設定ですがね。
ちなみに、人間とドラゴンとの姿を使い分けてますが、人間の姿だと基礎代謝に使う魔素を押さえられます。
だけど女神の加護は、ドラゴンに対して授かってます。
だから人間の姿では、その加護の恩恵も少なくなります。
だから普段弱ってる時は人間の姿の方が効率がいいですが、大気中の魔素がないなら、ドラゴンの姿の方がマシって事になります。
多分。
(´・ω・)




