第310話 超絶美少女の危機
竜の霊廟にあるとされる、オリハルコンの回収。
そして千尋峡谷にあるとされる、スターダストサンドの収集。
それがエダーマ首領に課された課題だった。
「いてて。」
椅子に腰掛けた体勢で転送させられたサムは、転送先でそのまま尻もちをつく。
「う、」
サムは大気の悪さを感じる。
ここはリバルド学園の結界の中だった。
汚れた魂を拒むという事で、サムとの相性は最悪だった。
「あの野郎、こんな所に飛ばしやがって。」
「お、久しぶりだなぁ、新入り。って、もう言うほど新入りでもないか。」
声をかけられて、サムは振り向く。
「エドガーじゃねーか。ほんと、久しぶりだな。」
「ひゅー、俺の名前、覚えててくれたのね。」
「当ったりまえだろ。おまえはこの学園で初めて出来た友達だしな。」
「ははは、そうなのね。」
エドガーは、サムの名前を忘れてるとは、言えなかった。
「それよりおまえは平気なのか?」
「えと、何が?」
エドガーの突然の問いかけの意味が、分からなかった。
「リーナちゃんの受け持ってたクラスって、特殊クラスだったらしいじゃん。なんか御用改めがあるらしくて、みんな散りじりに逃げてるみたいだぞ。」
「なんだ、そのごよーあらためって。」
サムの知らない単語が飛び出してきた。
「ああ、帝国の拷問官がじきじきに出向いてるらしいぞ。」
「なに?」
物騒な単語に、サムは飛び起きる。
「まあさすがは特殊クラスらしく、学園総出で狩り出してても、まだ誰も捕まってないみたいだけどな。」
「まさか、おまえ、」
エドガーの発言に、サムの血が引く。
「痛ーい、離してよー!」
校門の方から、女子生徒の声がする。
「あーらら。やっぱ一番目立つヤツが、一番最初に捕まったか。」
「ミーシャ!」
連れられてるのは、ミーシャだった。
サムは走りだす。
「俺の事を友達って言ってくれるなんてな。裏切れねーじゃんかよ。ちゃんと逃げのびてくれよ。えと、新入り。」
サムの後ろ姿を見送るエドガーだが、やはりサムの名前を思い出せなかった。
「く、」
サムは転移魔法を使おうと、意識を集中させる。
だけど体を動かしながらだと、この結界の中では無理があった。
「くそ、ミーシャ!」
「サムー!」
ミーシャもサムに気づいて、手を伸ばす。
「こら、おとなしく歩け。」
ミーシャを捕まえた帝国の近衛騎士が、ミーシャの頭を小突く。
「のやろう!」
サムの感情の高まりを受け、降魔の腕輪がほのかに光る。
「ん?」
サムは自分の体の中に、自分の物ではない魔素の存在を感じとる。
それは、ジンガが使った回復魔法の魔素。
そしてカスミの空圧魔法と転送魔法の魔素。
女神のカスミと魔竜族のジンガの魔素は、どちらもドラゴン族であるサムの魔素とは違い、降魔の腕輪で増幅する事は出来ない。
だけど、体内に残ったこの魔素を使う事は出来る。
「サンキュー、ジンガ、カスミ。」
サムはふたりの魔素で全身をコーティング。
これで、汚れた魂を拒む結界の効果を断ち切れる。
そのまま転移して、ミーシャに抱きつく。
そしてミーシャを連れて、再び転移する。
転移した先は、町の外の森の入り口。
サムはミーシャを抱きしめたまま、森の奥へと歩を進める。
「はあ、はあ、無事か、ミーシャ。」
「無事じゃないわよ!」
どご。
「ぐお、」
サムの問いかけに、ミーシャはひじ鉄をくらわす。
「ばか、ばか、ばか、ばか!」
ミーシャは振り上げた拳を、何度もサムに打ちつける。
「なんであんたは、いつも約束に遅れてくるのよ!」
ミーシャは泣き顔のまま、サムをにらむ。
「ごめん、悪かったよ。」
サムもそれ以上言い返せない。
ミーシャはサムの胸に額をぶつける。
「もう、しっかりしてよ。私を守ってよ。」
ミーシャの声が震える。
「ああ、守ってやるよ。前にも言っただろ。」
サムはミーシャの肩に右手を置く。
「ええ、期待してるわ、よ。」
気持ちを落ち着かせたミーシャが、突然脱力して、サムに寄りかかる。
「ミーシャ?」
サムはミーシャを抱きしめて、そのまましゃがみ込む。
「何これ。いつもの転移魔法と違うんだけど。」
転移魔法による不快感に、ミーシャはごっそり魔素を奪われる。
気を張ってた時は耐えられたが、気を落ち着かせたら、一気にきた感じだった。
「ああ、ごめん。今回はジンガとカスミの魔素を利用したからな。」
「何よ、それ。」
「俺ひとりの魔素だったら、転移魔法も使えなかったからな。許してくれ。」
今回サムが転移魔法でコーティングに使った魔素は、ジンガとカスミの魔素も含まれている。
だから一緒に転移するミーシャも、このふたりに対しての信頼感が必要になる。
ジンガはサムとの距離感で、何かと突っかかってくる。
カスミはサムを受け入れてる自分を、変な目で見てくる。
ミーシャにとってジンガとカスミは、それほど信頼出来る相手でもなかった。
「動けるか、ミーシャ。」
サムは町の方を警戒しながら、ミーシャに声をかける。
「ちょっと無理。だるい。」
ミーシャは早々に根をあげる。
「これって、回復魔法効くのかな。」
サムは回復魔法を試してみる。
だけど体力的なダメージではなく、精神的なダメージに近いので、無理だった。
「じゃあ、俺の血か。」
サムは右手を部分竜化させる。
「待って。」
左手を傷つけようとするサムを、ミーシャが止める。
「確か、あんたもかかる可能性のある状態異常にしか、効果ないのよね。」
それは昨晩、あのカスミが言っていた事。
サムが自分の転移魔法で、この状況になるとは、考えられない。
「仕方ない。とりあえず移動するから、負ぶるぞ。」
サムは背中を向けて、ミーシャの前にしゃがむ。
「分かった、」
ミーシャはなんとか体を動かして、サムの背中に負ぶさる。
ども(・ω・)ノ
学園の異常事態に、学園に乗り込んできた近衛騎士団。
やっぱ特殊学級に目をつけますよね。
リーナ先生も居なくなってますし、守ってくれる先生もいません。
スライムのアキーラに操られてた校長も、今は解放されてますが元々、リーナ先生や学園内のドラゴン族を快く思ってません。
他のクラスにもドラゴン族は居ますが、そっちには手荒なまねは出来ません。
やはり手をつけるとなると、リーナ先生の居なくなったクラスになるでしょう。
(´・ω・)




