第309話 ごちそうさま
ギルドの宿泊料金には、朝食分も含まれていた。
だけど部屋ひとつにひとり。その計算だったため、ジンガとカスミの分は別料金だった。
カスミの分もサムが負担する事になるのだが、サムは気づいていない。
口座連携させた降魔の腕輪から勝手に引き落とされるので、利用明細も発行されないので、この先もサムには気付きようがなかった。
「へー、今どきそんな事するなんて、珍しいわね。」
サムとジンガがいただきますをしたところで、テルアさんがジンガとカスミの朝食を持ってくる。
「いや、こういうのは最初が肝心だろ。」
かく言うサムも、今までやってなかった。
「ふふ、そうね。」
テルアさんはニヤけながら去って行った。
ジンガは早速、目の前の朝食に手を伸ばす。
ぱし。
ジンガの手をサムがはたく。
「箸を使いなさい。」
サムは箸をにぎった右手をジンガに見せる。
ジンガもマネてみるも、どこか違う。
「ほら、親指と人差し指と中指で持つの。こっちは薬指と親指で挟んで動かさない!」
サムはジンガの箸を持って、ジンガの右手に握らせる。
サムは自分の右手に握る箸を動かしてみせる。
ジンガもマネてみるも、どこかぎこちない。
「そんなに力を入れない。中指を抜いて!」
口やかましいサムに、ジンガも涙目になってくる。
「おいおい、そんなに口やかましく言わんでもいいだろ。」
とカスミはサムを注意する。
「いや、箸も持てなければ、この先困るのはジンガだろ。まさか手掴みで食べるのか?」
サムは気づいていないが、実際手掴みに近い食べ方をしてるヤツは、この世界には結構居る。
「要は掴めれば問題なかろう。」
カスミは独特な箸の持ち方を見せる。
「そう言う応用は、基礎の持ち方が出来てから。」
とサムはため息をつく。
「それだとジンガは、いつまで経っても食べられないではないか。かわいそうに。」
カスミは独特な箸の持ち方のまま、食事を続ける。
「そうだな。ジンガ、持ちたいように持っていいぞ。」
サムはジンガに教えるのをあきらめ、自分の食事に箸を伸ばす。
ジンガは涙目をぬぐい、首をふる。
サムが箸で食事を掴んだ所を、左手で押さえる。
「ジンガ?」
ジンガはサムの右手の形を、一生懸命マネる。
ジンガは右手の箸を伸ばして、食事をつかむ。
プルプル震えるジンガの箸。
「ジンガ、三本指だけ動かして。」
サムはジンガの下の箸を押さえる。
「中指を抜いて。力も抜いて。」
ジンガの箸が、食事をつかむ。
サムは箸を押さえてた手を離す。
ジンガはそのまま箸先を口へと運ぶ。
ぱく。
初めて食する食事に、ジンガの表情もニヤける。
「うまいぞ、ジンガ。」
サムもジンガの頭を撫でる。
ジンガもにっこりすると、次々と箸を伸ばしていく。
「ほう、器用なもんだのう。」
すぐに箸を使いこなすジンガに、カスミも目を見張る。
「ぷはー、こんなおいしい物、初めて食べたー。」
食事を終えたジンガが、感想を述べる。
「ふむ、なかなか美味であったな。」
カスミもテルアさんの料理をほめる。
「ほらジンガ、食べ終わったら。」
と言ってサムは、左右の手のひらを合わせる。
ジンガも慌ててマネをする。
「ごちそうさま。」
「ごちそうさま。」
サムのごちそうさまに、ジンガも復唱する。
「偉いぞ、ジンガ。」
サムはジンガの頭を撫でる。
ジンガもまんざらでもない笑みを浮かべる。
「はー、こんな世界で何やってんだか。」
カスミはボソりとつぶやく。
「なんか言ったか?」
聞き取れなかったサムが、カスミにたずねる。
「いや、なんでもないけれど、急いだ方がいいんじゃないのか。」
「急ぐ?」
「ミーシャと待ち合わせてるだろ。」
「あ、」
カスミに言われて、サムも思い出す。
今日の朝、リバルド学園の校門で、ミーシャと待ち合わせていた。
ジンガに箸の持ち方を教えるのに夢中で、すっかり忘れていた。
「あー、また怒らせちゃうかなー。」
思えばミーシャとの待ち合わせは、いつもミーシャが先に来ていて、サムは遅刻していた。
「む、」
カスミの表情が引き締まる。
「急げサム。」
「どうした?」
突然急かせるカスミに、サムは驚く。
「ジンガは私が連れて行く。だからおまえは」
「いや、俺が連れてくよ。」
サムはカスミの発言をさえぎり、ジンガの手を握る。
「ばか。手遅れになるんだよ。」
「なに?」
カスミの剣幕に、ジンガは思わずサムの手を離す。
「転送魔法なら、私も使える。」
サムの足元に、魔法陣が広がる。
「サム。この世界の命運がおまえの行動にかかってる。油断するなよ。」
魔法陣とともに、サムの姿も消える。
「カスミ、様?」
カスミの行動に、ジンガは事の重大さを感じとる。
「ジンガ。我々も急ぐぞ。」
「はい。」
カスミとジンガは立ち上がる。
「実体も見せずに忍び寄る白い影とは、よく言ったものよ。」
カスミはそうつぶやきながら、ジンガの手を取ってギルドを出る。
ギルドのすぐ横の脇道に入った所で、転送魔法を使う。
転送先は隣り町、モリフィンの町のギルドの前。
カスミはそのままギルドに入る。
「カスミ様、行く先が違いますよ。」
ジンガは手をつなぐカスミにたずねる。
「いや、私も文無しだからな。ついでに依頼を受けておきたいのじゃ。」
ギルドの依頼を受けるには、報奨金の1割に値する契約金が必要だった。
だけどS級冒険者を含むパーティ限定の特殊依頼は、その高難易度で達成困難なため、その契約金無しでも受注できた。
ども(・ω・)ノ
朝起きて、飯食って。それなりの時間になりますよね。
このギルドからリバルド学園へ移動となると、さらに時間かかります。
ミーシャは無事なのか、気になってきました。
リーナ先生のいなくなったクラスを、どうしたって書いたのか、覚えてませんし。
何か問題発生させてる気がします。
って、これ書いてる時点で、そこまで考えてなかったです。
それよかこの世界の人間って、お箸を使うんすかね。
いわゆるナーロッパ世界観では、お箸は使わないと思いますが、気にしないでおきましょう。
(´・ω・)




