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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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早起きは三文の得なのか否か

『ふうう』

 夕方になっても夏の名残がまだあるらしく、少しでも歩くと汗が噴き出してくる。

 仕事が終わってまっすぐ帰ってきたのだが今日は少し疲れた。玄関を開けて倒れこむように部屋に入ったのだが、部屋の中が暑すぎたので横になるわけにもいかず、すぐにエアコンをつけて、シャワーを浴びる。

 お気に入りのパンダのプリントがついているTシャツと黒のスウェットパンツの部屋着に着替えると心の底からほっとする。

 すぐに冷蔵庫を開けてビールをとりだして冷やしておいたコップに注いで一気飲みする。

『はあああああ』

 またため息。

 精神的に疲れたわけでもなく身体的にもそこまでではない。

 特に仕事で何かあったわけでもない。

 暑さにやられたと言われればそれが一番なんだろうけど……とにかく今日は眠い。


 というのも、珍しく早起きをしてウォーキングをしたからだ。


 気が付けば、ここ数日……いやここ1ヶ月……歩いていないのだ。

 気のせいかお腹がちょっとプニプニしてきたような気がする。

 そう思ったので低血圧なのを押して早起きしたのだ。

 こんなに暑くてはいかに夕方と言えども、仕事が終わってからでは歩く気になれない。


 起きた瞬間は予想通りしんどかった。

 起きるのにも苦労したが、ぼ――っとした感じがなかなか抜けなかったのが特にしんどかった。

 と言ってもこの時間を逃しては、もう絶対に歩きには行かないだろうと思ったから、なんだかいろんなところをぶつけた記憶があるが、なんとか着替えて玄関の外に出た。

 いざ外に出てみると思ったよりシャキッとして、少しずつ目が覚めていくのが分かった。


 夏の朝は少し風が冷たい。

 いつまでも夏だと思っていたのだけど、少しずつ季節は秋に変わってるのだ。


 欠伸をしながら、あたしは家の近くを歩いた。

 散歩で見る風景と通勤の時にみる風景ではこんなにも違うのかということは以前にも感じていたが朝の風景はまた格別だ。

 朝焼けがとてもきれいだ。

 歩いているうちに、少しずつ身体が暑くなってくる。

 汗が額から噴き出してくると完全に目が覚めていく。


 とても気持ちが良い。


 気分よくあたしは家にに帰って、シャワーを浴びて、仕事用のスーツに着替えて、朝ごはんを食べてから出勤した。朝ごはんは美味しかったし、通勤の時もすでに身体がシャキッとしているから、いつもよりも楽に出勤できたように思えた。


 残念なことに……調子が良かったのはここまで。


 9時に仕事が始まった瞬間……あたしはなんだか眠くなってきてしまった。

 もうこうなると仕事どころの話ではなくなる。体裁を整えるためになるべく笑顔できびきびと行動するようにはしているものの、くだらないミスをしないようにいつも気を張っていなければいけないから精神的にもとても疲れるのだ。

 当然、ランチは一人でお弁当を持って公園に出かけた。

 平日には人のいない小さな公園には藤棚があるので日陰に入ることもできる。

 お弁当を食べ終わって、軽く昼寝をしたのだが……藤棚のところでベンチに座ったままうとうとしているといつの間にか、随分眠ってしまったようで、会社に戻るのはお昼休み終了のギリギリのタイミングだった。


 午後からはもっと悲惨だった。

 なまじ昼休みに寝てしまったせいか、余計に眠くなってしまったのだ。

 こんなことなら昼寝などせず、栄養ドリンクとミントタブレットでも購入しておけばよかった。

 そんなことを思っても後の祭りである。


 眠いからと言ってその都度、相談室を利用するとさすがにさぼっているのがバレるので、今日はがんばって最後まで仕事をやり遂げようと思い、できる限り眠くない仕事を率先した。

 総務の仕事はデスクワークが中心だけど、会社の受付近くにある総務は基本的に来客対応をすべて行うことになっている。こういう時は人と話すのが一番だと思い、あたしは来客の対応を率先して行うことにした。

 そんなこんなで長い一日を終え、あたしはなんとか家路に着いたのだった。


 長い一日を終え……あたしはようやくアパートの自室にいる。

 眠気でぼ――っとした頭で空になったコップにビールを注ぐ。

 1杯目のようなうまさがないのはなぜだろうか。

 変なことを考えながら、2杯目を飲む。

 何か食べよう……

 でも作る気分でもない。

 仕方ないのでいくつか作っておいた常備菜を冷蔵庫からお皿にとりわけてテーブルに置いた。


『はあああ』

 本日、何回目の長いため息だろうか。

 いや……疲れた。

 早起きをした分、睡眠時間が少なくなっているから夕方に眠くなるというのは当たり前のような気がしないでもないのだが……『早起きは三文の得』なんて言葉があるけど、得なことなどあるのだろうか。

 そもそも早起きをして身体を動かすと身体に良いというのは定説ではあるけど、実際にはどうなのだろう。早起きをしたせいで日中眠いなんて本末転倒な気がする。もしかしたら身体に良いなんて俗説でウソなのかもしれない。


 お腹もすいていたので目の前にある常備菜は一気にたいらげた。


 使った食器は量も少ないのですぐに洗ってしまう。

 テーブルを拭いて、片付けをしながらあたしは早起きについて考えた。

 頭が痺れてきて景色がぼんやりとしてきたおかげで考えがまとまらない。

 そんなに呑んでいないのにビールの酔いが回ってきたのだろう。

 こんなにも疲れるのに身体にいいわけがないだろう。 


 ゆっくりとベッドに横になる。


 早起き……

 今日一日のあたしの感覚からすれば……結論として早起きはあたしには向いていないのかもしれない……。


 う――ん……。


 チャイムの音はしない。

 ふと気が付いて、周りを見回すと、すでに朝だった。

 考え事をしているうちに眠ってしまったのだろう。


 早起きはあたしには向いていないが、考え事をしたときのあの悪い癖を治すには早起きが一番なのかもしない。

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