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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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スーパーでお惣菜を買うのはいけないことなのか否か

 普段は何かを作り置きしておくのだけど、冷蔵庫の中が空に近い状態であることに気づいたので会社帰りに自宅近くの小さなスーパーに寄ることにした。


 あたしはスーパーの自動ドアをくぐり、買い物かごをカートにおいて店内に入った。


 食材の買い物はとても楽しい。


 野菜やお肉、お魚を見ながら、どんなものを作ろうかと想像しながら買い物していくのは少し幸せな時間ではある。夕方の時間は晩御飯の準備のためにスーパーに立ち寄る主婦は多い。小さなスーパーの割にこのお店は非常に流行っていて、夕方の時間はレジで待たされることも少なくない。


 何といってもこのスーパーは野菜が安いのだ。


 安くなる野菜はその日によって違うが、小松菜が98円だったり、キャベツが1個で98円だったり……じつにお財布に優しい。トマトに至っては5つ入って198円だ。少し小さめのトマトだが、それでもプチトマトよりははるかに大きいし、買って食べたこともあるが、味もとてもいい。


 買い物をする際に絶対に買う食材はジャガイモと玉ねぎと人参である。

 この3種の野菜さえあれば、如何様(いかよう)にも料理ができる。少し前に実家から送られてきた大量の野菜はすでに人にあげたり使ったりでもうないので、買わなければいけない。


 それに肉ももうなかったから買わないと。

 あたしは鶏肉が好きなのだけど、ここのスーパーの良いところは鶏皮が売っているところだ。

 鶏皮は安くて美味しいし、なんにでも使えるのは助かる。

 豚肉の細切れはめんどくさかったらそのまま炒めて塩で味付けするだけでも美味しいので、ちょっと多めに買っておこう。それからソーセージ。朝ごはんとランチのお弁当に入れるのに使う。余ることはないがもし余っても茹でて晩御飯の時にビールのお供にすればいいから無駄はない。


 お魚食べたいなあ……


 スーパーに来るたびにいつも思うのだが、魚を捌くのが面倒な上、肉と違って1回で使い切ってしまう。

 美味しいのだけど、ちょっと贅沢品だ。冷凍食品のアジフライを購入しておこう。これなら少しずつ食べられるしお弁当にも入れられる。

 本当はアジを1匹丸ごと購入して干物を作ったり、なめろうにしたり、中骨は骨せんべいにしたりしたいのだけど、いかんせん普段の生活の中ではそんな時間はないし、うっかり干物なんかしてカラスや野良猫(デューク)に狙われても困る。


 だからとりあえず今日は我慢。


 さてすべて回った後はビールとお惣菜。

 あたしはビールを買い物かごに入れた後、お惣菜コーナーに行くことにした。

 今日の晩御飯のおかずを買うのだ。今日はさすがに何品も作れないからお惣菜にしようと思う。

 このスーパーのお惣菜はどれも美味しい。


 お惣菜のコーナーに行くと、大家のおじいさんとお隣の春海ちゃんと夕凪ちゃんがいた。

 遠目で見た感じだと春海ちゃんはちょっと困った顔をしている。

 これはまずいなあ。


 あたしは気づかれないようにレジに向かおうと思ったのだが……


『あ!お姉ちゃん』

 夕凪ちゃんにバレてしまった。


『お。二階堂さん。ここのスーパーではよく会うねえ』

『あ……はい』

『いや――さっき浦野さんにも言ってたんだけどね』


 めんどくさいのに捕まっちゃたなあ。ふと春海ちゃんの方を見ると彼女も困った顔をしている。

『ここのポテトサラダ、美味いんだよね――』

『そうですよね』

 大家のおじいさんは若い女性を捕まえて『手作りにしろ!』みたいな説教をするような人ではない。

 一見すると強面で怒られそうな感じがする大家さんだけど、実はすごく優しくて、剣道の道場なども経営していて子供たちにも好かれている。

 何がめんどくさいって……食に対するこだわりがすごいのだ。

『ここのは玉ねぎをちゃんとあめ色に炒めて少し焦がしているから風味が違うんだよ』


 実は……大家さんを黙らせる方法をあたしは知っている。

 同居している娘の優里さんが留守の時に限って彼はこのスーパーにお惣菜を買いに来るのだ。

 そして以前、話をしたときに知ったのだがジャイアンツファンの彼は一人で野球中継を見ながらビールを飲むのを楽しみにしているのだ。


『そうですよね。てゆうかもう18時ですよ。今日の先発は菅野でしょ。勝ちますよ。ジャイアンツ』


 なんで野球を知らないあたしがこんなことを知っているか……。

 ラッキーなことにたまたま今日は相談室で心音さんから野球の話をくどくど聞かされたから知っているのだ。東京ドームの巨人戦で菅野が投げる試合はほぼほぼあきらめて試合をみる……と心底がっかりした顔で言っていた。

 何がそんなに悲しいんだろうか。

 たかだか野球ではないか。


『お!もうこんな時間か。すまんね。長々と話しちゃって……』

 そういうと大家さんは夕凪(ゆうな)ちゃんに『バイバイ』と笑顔で手を振って、レジの方に歩いて行った。


 あたしは春海ちゃんと目を合わせて言った。


『良い人なんだけどねえ……』

『ホント……』

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