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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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虹が見えると嬉しいのか否か。

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。

 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶を誘うことをあたしも夕凪(ゆうな)も楽しみにしている。


 どんどんどんどん……


 今夜も壁を叩く音がする。

 4歳になった夕凪(ゆうな)はあたしを見る。

 あたしは夕凪(ゆうな)に言った。


『お姉ちゃん、呼んできてくれる? お部屋でお茶でもしましょうって』



 ――――――――――



 出勤するときは雨が降っていたのだけど、今日は一日、降ったりやんだりだったらしく、帰るころには雨はやんでいた。雲の切れ間から光がさしており、こういう日はなんだかいいことがあるような気がする。


 もちろんそんな気がするだけで、いいことなどそうそうない。

 むしろ、下手をすると姉からの電話を確認もせずに出てしまい、めんどくさい話を延々と聞かされるという憂き目にあうことさえある。


 それでも一日中、雨が降ったりやんだりしている中で夕方に雨がやみ、雲の切れ間から夕陽が見えるとなんだか嬉しくなるのだ。一日、いろいろあったけど、最後はいい天気になって良かったね、という気分になるのである。


 そして……今日は会社帰りに虹が見れた。


 たぶん雨の合間に太陽の光が出たからだろう。

『狐の嫁入り』というやつだ。


 実は『狐の嫁入り』にはこんな逸話がある。


 ずっと雨が降らない村があった。

 理由は分からないけど……狐をいけにえにして雨を降らそうと、男前(イケメン)の村人が狐の娘を騙して嫁入りさせようとする。狐の娘を哀れに思った男は、「これは罠だから逃げて!」というのだが、狐はその男が好きだったので、「いいんです」と人間の娘に化けてそのまま嫁入りをし、村人たちにいけにえにされた。

 すると晴れている空から大粒の雨が降ってきた。


 せつない話である。

 あたしは天気雨を見るとこの逸話を思い出して少し涙が出てしまうことがある。

 そして綺麗な虹を見ると、狐の娘が好きだった男のために精一杯お洒落して出てきたように見えて、また涙がでる。


『狐の嫁入り』の逸話は少し悲しいお話だけど、天気雨というのはちょっとわくわくする。

 大人になった今でも傘を畳んで雨に濡れてみたくなる。

 虹が見えるのは大体、雨が止んだ後なのだが、今日は少し降っていた。

 あたしは傘を畳んで空を見上げた。


 七色の虹が丸いアーチをかけている。

 よく見ると丸いアーチの上にはもう一つ、アーチがある。


 狐の娘はあれで幸せだったのかな?


 てゆうか、あたしだったら速攻で逃げるけどなあ。

 ただ、このお話は狐の娘の一途さがいいのだ。きっと人を好きになるということはこういうことなのだろう。好きになった相手のためにどんな犠牲もいとわないのだ。


 とりあえず……今のあたしにはよく分からない。

 自分のためだけに生きている……とは言わないけど、好きな人のために命まで犠牲にするというのはちょっとなあ……と思う。


 どうなんだろ。


 う――ん……

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴る。

 あたしは我に返った。気が付けば壁の前に立っていた。


 う……いつの間に……


 どうやらあたしはまたやらかしてしまったらしい。

 玄関を開けると夕凪(ゆうな)ちゃんがいた。

 今日はツインテールにリボンをしていてとてもかわいい。


 そうか……恋人に限らず、大事な存在ができたらあたしも変わるのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『狐の嫁入り』の話の逸話、知らなかったので、わくわくしながら読ませていただきました!
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