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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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56/201

旅行の目的は温泉なのか否か

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最近は壁の音もしない日がある。たぶん自分でも自覚があるから気を付けているのだろう。

 壁の音がしたら、お茶に誘うという謎のルールを決めている我が家では、壁の音がしないと寂しいと感じるまでになってしまった。

 土曜日はどこかにでかけていた二階堂さんは先程帰ってきた様子である。


 4歳になった夕凪(ゆうな)は壁の前で洗濯物を畳んでくれている。


 とんとんとんとん……


 ふとあたしが夕凪(ゆうな)をみると……彼女は壁を叩いていた。

 変な癖にならないといいのだけど……。



 --------------



 少し多めの荷物を抱えてあたしはアパートに帰ってきた。

 日曜日の夕方はなんだか夢から覚める直前のようで少し憂鬱だ。


 土日を利用して山梨県の道志渓谷まで泊りで行ってきた。

 一人旅だけど実に楽しかった。

 戸塚でレンタカーを借りて、新湘南バイパス、圏央道を使い、海老名から東名に乗り、秦野で降りる。表丹沢からヤビツ峠を抜けて宮ケ瀬ダムを横目に山道をしばらくクネクネと走ると、道志渓谷に到着する。

 長時間の運転だったけど、思う存分運転を楽しむこともできた。


 これ……。

 一人で行くことに意味があるのだ。旅行は基本、一人で行くに限る。


 会社のバーベキューなど、複数の人数でワイワイ行くのも悪くはないが、いかんせん、人に気を使わなければならない。さらに運転などは男連中がやたらと出張ってきて運転をさせてもらえないものだから楽しさは半減である。


 道志渓谷はとてもきれいなところだ。

 山の中にある集落は本当に小さい集落で何もない。

 道志川が集落の真ん中を流れており、山と山の間、谷の部分に美しくはまっている。

 運転しているとゆっくりと景観を楽しむことはできないが、それらは身体全体ではっきりと感じる。エンジンの音で実際には川の流れる音は耳にできないが、山道を走っているとその空気感がひしひしとステアリングを通して伝わってくるのだ。

 

 道の駅ではアユの塩焼きが売っている。

 おそらく道志渓谷のアユだ。北大路魯山人によればアユはとれたてを焼いて食べるのが一番美味しいとのことだった。確かにここのアユは最高に美味しい。はらわたどころか、頭から尾まで骨ごとバリバリとすべて食べてしまうぐらいだ。

 車で行ったのでビールが飲めなかったのは残念だけど、そこは仕方ない。

 車でしか行けないようなところにある道の駅だからビールとアユを両方楽しむとなると誰かに運転してもらわなければいけなくなるが、そんなことをすれば相手に気を使わなければいけないので、そこは我慢してでもこの贅沢な時間を独り占めしたい。

 アユの塩焼きを売っていた場所の隣にはレストランがあった。高座豚を使ったカレーライスなどがメニューにあったので次回はそれを食べようと思う。


 旅行の目的は温泉に入って、湯上りにビールを飲むことなのだが……これも期待通りの美味さだった。

 実際、温泉だけをメインに旅行に行くというのなら1泊ぐらいではその効果はでない。しかし、都会の喧騒を離れ、景色を楽しみ、普段は食べられないものを楽しみ、さらには温泉を楽しむというやり方なら、温泉をメインに旅行に行くというのもいいものだ。


 ただ……問題は帰りである。

 戸塚でレンタカーを返したあとがしんどい。

 アパートまではバスに乗らないといけないし、荷物はそこそこ行きより重くなっている。

 土曜日はあんなにワクワクしながらバスに乗って戸塚に出たのに、日曜日の夕方には夕陽を背に少し憂鬱な気持ちでバスに乗る。

 そして重い気持ちを引きずってアパートの玄関をくぐる。


 とんとんとん……


 疲れてベッドに横になっていたあたしはふと我に返った。

 お隣から音が聞こえる。

 夕凪(ゆうな)ちゃんだ。変な癖覚えさせちゃったかな……


 そうだ。

 お隣にお土産を買ったんだった。

 持って行かなくちゃ……。

 山中湖のテディベアミュージアムで購入した小さなテディベアと、道の駅で購入した七里味噌は、きっと喜んでもらえると思う。


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