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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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散歩は楽しいのか否か

 朝起きてジョギングするのは長続きしないということが分かった。

 なぜかというと低血圧で朝起きるのがしんどいからだ。


 それで……仕事終わって帰ってきてから歩くことにした。

 走るのはモチベーションが上がらないが、歩くならそんなにしんどくもないのでやれるかな、と思ったからだ。


 仕事が終わった後、外に出るともう真っ暗だ。


 暗いと景観も何もあったものではないと思ったのだが、意外とそうでもなかった。

 都会の夜は街灯などの影響でそこそこ明るい。大分の実家なら夜、外に出るときは懐中電灯がないと真っ暗で何も見えず、とてもじゃないが歩けないことを考えると、横浜はやはり都会なのだろう。


 夜景が綺麗な分、星があまり見えないのは残念だ。


 あたしが子供の頃は降ってくるような満天の星空を楽しむことができた。都会の子供たちにはそういう楽しみはないのだな……と変なことを考えながら歩いてみた。


 仕事が終わって、自宅に帰って、動きやすい恰好になってすぐに歩きに行ったものだから、途中でお腹が空いてしまった。結局……これでコンビニに寄って何かを購入して食べてしまったら何のために歩いているのか分からなくなるので、我慢しよう。

 何か面白いものがあったら写真に収めようと思ってスマートフォンを持って歩いているのだが、途中で着信があった。画面を見ると『二階堂祥子』とあった。


 母である。


『もしもし……』

『なんだ。あんた、ちゃんと電話でるじゃない』


 母の言葉でなぜ母があたしに電話をしてきたかが分かった。


『姉ちゃんの言うこと、信じちゃダメだよ』

『信じちゃダメなのは分かってるけど、連絡がとれないとか言われると心配になるじゃない』

『大丈夫。姉ちゃんの電話はめんどくさいからでないだけ』

『だろうと思った』


 母は、あっさりした性格なので長話することはない。あたしはこの母に似たのだろうと思う。

 てゆうか……姉は特別なのだろう。

 どこで間違ったらああなってしまうのか……。

 少なくとも姉はどこかで何かをこじらせたからああなっているに違いないのだが……。


 う――ん……。


 川沿いを歩いて、水面に写る夜景の光を眺めながら、家路に向かう。


 なかなか散歩というものはいいものだ。

 何がいいかと言えば、走るのと違って疲れない。

 そして考え事ができるというのもいい。独り言を言ってしまう危険性があるのであまり煮詰まらないように注意しなければいけないが、少なくとも壁を叩いてお隣に迷惑をかけることはない。


 ふと目を上げると……アパートの近くの小さなスーパーからお母さんと小さな女の子が出てくる。


『あ、お姉ちゃん。今日は苺大福買ったんだよ』


 お母さんと女の子はお隣に住んでいる春海ちゃんと、夕凪(ゆうな)ちゃんだった。苺大福は自分たちのために買ったものだろう。


『あとでお茶しませんか?』


 せっかくだ。

 呼ばれよう。

 でも手ぶらで行くわけにもいかないからあたしも何か買って行こうかな。

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