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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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52/201

麦わら帽子はマリーゴールドに似てるのか否か

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。

 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時に、お茶を誘って話を聞くことをあたしも夕凪(ゆうな)も楽しみにしている。


 とんとんとん……


 今夜は違う場所から音がする。

 ベランダからだ。あたしは4歳になった夕凪(ゆうな)と目が合った。

『ベランダ見てくれる?』

 音の正体が二階堂さんだと分かっているのでできることだ。

 夕凪はベランダに出た。



 ――――――――――



 いい曲だなあ……と素直に思った。

 通勤の行きと帰りに聞いたイヤホンから流れる曲にあたしは感動した。


 姉にしてはなかなかのセンスだ。


 数日前に姉から勧められて聞き始めたアーティストの曲がとてもいい。

 そもそも姉が薦めてくるものにはろくなものがないので、適当に聞き流してしまおうと思ったのだが、あまりにしつこいので仕方なく聞いたのだ。


 くやしいことに……すごくいい曲だ。


 恋愛を歌った曲なのだが、歌詞が心に響くのだ。何といっても『麦わら帽子』が『マリーゴールド』に似てるというところがいい。


 少し気になることもある。

 いや音楽というものは感じるものであって、そういうことを考えている時点ですでにセンスの欠片もないということは重々承知の上で考えているのだが……


 麦わら帽子はマリーゴールドに似てるのか??


 そもそも色が違うではないか。

 歌の世界の中ではこの比喩表現がとても美しいのだが、実際問題、マリーゴールドは派手目な黄色かオレンジの花で、よく見ると、形自体も帽子に似てるとは言い難い。音楽の世界の話をこうやって細かくいろいろ考えるのは野暮なのはよく分かる。

 でも気になるものは仕方ない。


 その反面、あれはあれでいいとも思う。

 美しい麦わらの君はマリーゴールドのようだ……という理解でいいはずなのだ。


 にもかかわらず、どうしても気になってあたしはマリーゴールドを購入してしまった。


 こんなことが姉にバレてしまったら何を言われるか分からない。


『あんたも普段は興味のないふりしてるだけじゃないの!』

 ……と、にやにやしながら言われるに違いない。そして乙女ゲームを薦めたりしてくるに違いない。

 調子に乗ってロリータファッションまで薦めてくるかもしれない。


 考えただけでぞっとする。

 いや。興味ないんだよ。恋愛には。

 あたしはしばらく一人がいいのだ。


 興味があるのはマリーゴールドが麦わら帽子に似ているか否かなのだ。


 ベランダでマリーゴールドに水をやる。

 オレンジ色が目に美しい。

 そして控えめな小さな花がなんとも可愛く、つい花に向かって微笑んでしまう。


 う――ん……

 似てないよなあ。

 いや……似てないこともないかなあ……


 どうでもいいけど……


『お姉ちゃん』

 横から声がしたので、あたしはふと我に返る。

 声がする方にはお隣のベランダがある。

 そこには夕凪(ゆうな)ちゃんがいた。

『こんばんわ』

『こんばんわ。お母さんがお茶でもどうですか?って』


 せっかくだから呼ばれよう。

 それにしても……今日はどこを叩いてしまったのだろうか?

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