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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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日記を書くことはいいことなのか否か

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。


 最近は壁の音もしない日がある。たぶん自分でも自覚があるから気を付けているのだろう。

 壁の音がしたら、二階堂さんを食事かお茶に誘うことが多くなった我が家では、壁の音がしないとなんだか寂しい……と感じるまでになってしまった。


 雨降りの日曜日。

 せっかくのお休みが雨で一日つぶれてしまった。

 こんな日はなんだかすぐに陽も沈んでしまい暗くなってしまうような気がする。


 ああ……

 お休みが終わってしまう……

 そんな声が聞こえてきそうな日曜日の夕方。


 今日は外出するわけでもなく、特に何もすることもなかったので、4歳になった夕凪(ゆうな)は壁の前でお絵かきなどをしている。


 とんとんとんとん……


 ふとあたしが夕凪(ゆうな)をみると……彼女は壁を叩いていた。

 夕凪も何もない日曜日に何かを期待しているのかもしれない……


 変な癖にならないといいのだけど……。



 ――――――――――



 せっかくの日曜日も雨が降ってしまうと家でじっとするしかなくなる。


 こういう時に限って姉から電話が来て、残念な休日になるのは嫌なので、スマートフォンの電源は切っておくことにした。ネットを見たければパソコンがあるし、ニュースを知りたければラジオがある。

 日曜日にまで電話をしてくる人間は姉ぐらいで、あとはごくまれに職場の人間からのお酒の誘いがあるかないか……ぐらいだ。日曜日に呑みに行くのは嫌ではないが明日の仕事のことを考えると家で読書でもしながら静かに過ごしたいので、連絡がつかないぐらいがちょうどいいだろう。


 ここ数週間、あたしは日記を書くことにしている。


 最近ではブログなどが流行っているが、私生活をいちいち他人にさらす趣味はあたしにはない。

 日記というものは自分を見直すためのものであり、日々の生活の中で自分がどのように行動しどのように考えているかを客観的に知るためのものである。だからいちいち他人にそれを見せびらかす必要などないとあたしは思っている。

 ブログが流行(はや)る理由はよく分からない。

 どこかで聞いた話だが承認欲求と何か関係があるらしい。

 まあ……あたしは『他人に認められたい』という気持ちはほとんどないので、承認欲求などはまったく関係のない話だ。


 『日記を書く』と言っても平日は忙しいし、お酒を呑んでしまうことも少なくないので、土曜日か日曜日にまとめて1週間分の日記を書くことにしている。

 これはなかなか面白い。


『え――と……月曜日は……』

 考え事をしているとつい独り言をつぶやいてしまう。

 いい加減に治したい癖なのだが、独り言を言うことによって集中しているということもあるから何とも言えない。

 月曜日は姉から電話があったんだっけ。思い出したくもない。


『火曜日は……』

 そういえば……同じ会社の石岡くんが『自分探しの旅に出た』などと訳の分からないことを言っていた……。

 自分探しなら家でも十分できるのに……


『それから……水曜日は……と』

 ああ……平日にもかかわらず姉に呼び出されたんだった。まあ、おごってもらったからいいけど。あのお店はちょっと遠いけど今度一人で行って来よう。


『木曜日……』

 なんにもなかったか。

 テレビで箱根駅伝の特集を見たんだっけ。あ……ジョギングやってないや……。


『そして金曜日は楽しかったな』

 金曜日は休みをとって従妹の理彩ちゃんとミュージカルに行った。姉が来たのは面倒だったけど、ミュージカルはすごく良かった。


 日記を書いていて今週のあたしの行動で気づいたことがある。

 やたら姉が絡んでいるのだ。別に好きで絡んでいるわけではないのだけど、あの姉に絡むのはなるべく少なくしておきたいものだ。それにしてもなんでまた今週はこんなにも姉が絡んでいるのだろうか。

 まあ……なんだかんだあんな狂ったような姉でも、あたしの姉である事実は変えようがないのだから、うまく付き合っていくしかないのかもしれない。


 え――と……次は昨日か……土曜日。

 昨日は何もしてなかったなあ……

 そういや考え事してたんだっけ。ああ、恋とか愛とか……そんな感じの……。


 ふと時計を見たら14時を回っていた。

 意外と集中して日記を書いていたらしい。

 1週間いろいろあったけど、自分を見直すというほどのものは何もなかった。強いて言うなら姉との付き合い方を考えたいというところだろうか。


 う――ん……。

 日記は自分を振り返るにはとてもいいけど、継続しないと見えてこないものもあるらしい。


 とんとんとん……


 思わずあたしは壁の方を見る。お隣から音が聞こえる。

 お茶には良い時間だ。

 たまにはこちらから誘ってみるかな。

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