姉というのはめんどくさいものなのか否か
なるべく休みの日は出かけたくないのには理由がある。
それは低血圧で朝が苦手だからだ。
たまに同僚たちに誘われてバーベキューなどに行くこともあるが、とにかく朝が辛いので、できれば近場にしてもらいスタートを昼ぐらいにしてくれるとありがたい。
ただでさえ平日は朝起きるのがしんどいのをがんばって起きて、やっとこさ会社に出勤しているのだ。
休みの日ぐらいゆっくりさせてほしい。
そんな土曜日の朝にスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。
寝ぼけ眼で起きだしてふと時計を見ると8時を回っている。
まあ……そんなに早い時間というわけでもないけど、朝からかけてきてほしくはない。
スマートフォンの画面をみると着信画面にでかでかと『二階堂麗奈』とあった。
姉である。
あたしには一人、非常にめんどくさい双子の姉がいる。
双子なのでまったく同じ顔をしているのに、あたしとは180度、価値観がかけ離れているので、どんな話をしても通じない感じがするのだ。
できれば寝起きには話したくないタイプの相手である。
『もしもし……』
出ないわけにもいかないから出た。
てゆうか出なかったら後で何を言われるか分からない。
つい先日などは仕事中にかけてきておいて『なんで出なかったの?』とうるさかった。
しかし……姉というのはどこでもこんなにもうるさいものなのだろうか。結局、電話の内容はいつもくだらない内容なのだ。そんな話をしにわざわざ仕事中とか朝とかにかけてくるのは本当に辞めてもらいたい。こう見えてあたしだってけっこう忙しいのだ。
『あ、もしもし、あんたという人は、なんでいつもすぐに電話に出ないのよ』
『寝てた』
『いつまで寝てんの? 今何時だと思ってるの?』
『おやじ……』
今何時だと思ってるって……そんなん知らん。
てゆうか……なんであんたにそこまで言われにゃならんのだ。
『そういう古いギャグはいらないから』
『ギャグなの? これ?』
『細かいことは知らないわよ。それより相談したいことがあるんだけど』
でた。
相談したいこと。
絶対にたいした話ではない。
しかも直接会って話すとか言い出すから始末に負えない。
適当に答えてすっぽかそうかとも思うが、そんなことをするとまた後が面倒なので、とりあえずちゃんと相手をすることにする。てゆうかこういう人こそ、うちの会社の相談室を利用すればいいのだ。
心音さんなら姉が納得するまで付き合ってくれるだろう。
『相談?』
『電話じゃなんだから直接会えない?』
『無理』
『え――! 無理って、そんな……身も蓋もない……』
『あたしだって忙しいの』
『さっきまで寝てたんでしょ』
『これから起きて忙しくなるのよ』
『そういうのを世間一般では『暇』って言うのよ』
『分かった。じゃあ言うけど……』
『何?』
『暇でも外には出たくない』
『まったく……あんたって子は……』
ここで甘やかすとろくなことがない。姉は暇だとあたしを呼び出してはくだらない話をしたがるのだ。
普段はあたし以外の誰かがそれの犠牲になっているのだろうけど、ついに誰も話し相手がいなくなると、あたしにくだらない話をしようとする。
『どうせ、あれでしょ。架空の彼氏がどうのこうのとかそんな話なんでしょ』
あたしはうんざりしながら受話器を握って話した。
もう電話……切ってもいいかな?
『ち……違うわよ!』
どうやら図星のようだ。
『じゃあ何? 今話して』
『今?』
『そう。今。てゆうか……いつもやってるゲームのキャラクターがどうのこうのって話だったら電話でもいいでしょ』
『違うの。そういう話じゃないから』
『じゃあ何?』
『それは会って話す』
『会うかどうかは話の内容によって決める』
『そう……』
神妙な声をして姉は黙った。
何かを言おうと決意をしたような様子が電話越しに感じる。
『その……あたし、結婚を考えている人がいて……』
『姉ちゃん……』
『何よ……』
『夜勤明けで眠いのは分かるけど目を覚ましな。いつまでも夢ばかりみてると頭おかしくなるよ』
『な……失礼ね。本当に考えてるのよ』
『え? 架空の彼氏じゃなくて』
『架空ではない』
『ではない??』
『同じ職場の先輩で……』
『え? ガチな話??』
『だから大事な話があるって言ったじゃない』
結婚を考えている人がいる……なんて言われたら会わざるおえない。
それにしても恋愛に夢ばかりみているあの姉がねえ……。
次話へつづく……




