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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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お洒落するのに理由が必要なのか否か

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。


 そんな、ちょっと変わっている二階堂さんは実は子供や動物が大好きだ。


 だから夕方のちょっとした時間に彼女とおしゃべりをするととても楽しい。

 壁の音をきっかけにそんな時間を作っては、あたしも夕凪(ゆうな)も彼女とのおしゃべりを楽しんでいる。


 どんどんどんどん……


 今日はお気に入りの赤いワンピースを着ている夕凪。

 鏡の前でいろんなポーズをしながらずっと自分の姿を見ている。多分誰かに見せたいのだろう。

 

 壁の音がした瞬間、彼女は何かを期待してあたしを見た。


 はいはい……

 分かりましたよ……

 

 あたしは夕凪(ゆうな)に言った。

 『隣のお姉ちゃん、呼んできてくれる? 甘いものでも食べましょうって』



 ――――――――――



 鏡を見てため息をついてみる。


 いや……

 別に落ち込んでなどはいない。

 鏡を見てため息をつく……という行為はどうにも失恋を連想させるが、あたしの場合は失恋どころか恋人すらいないし、別に恋人の必要性を考えたこともない。

 ラブコメは嫌いではないけど、基本的にはああいうものはドラマか小説、漫画の中での話であり、現実にはあり得ないと思っているので、ああいうことを夢見ることは……少なくともあたしにはない。


 鏡を見てみたのはそういう理由ではない。


『二階堂さんってちょっと地味だよね』

 と会社で言われたからだ。


 まあ……

 確かにそんなに派手な方ではない。

 しかし地味と言われるとなんだかちょっといい気分ではない。


 それで改めて鏡で自分の姿を見てみたわけだ。


 特に代わり映えのないあたしの姿が映っている。

 可もなく不可もない。

 そこそこ美人と言われるのがなんとなく分かる。

 要するに美人ではないということだ。

 同時にさほど醜くもないということでもある。

 一番個性が感じられない誉め言葉だ。

 あたしとしてはそういう評価が一番嫌だというのが本音だ。かと言ってはっきり『ぶさいくだねえ』と言われるとそれはそれで嫌だ。


 一応、それなりに身に着けるものと化粧には時間をかけている。

 何せ、髪の毛を切るか否かについて、いつも3か月以上悩むぐらいだ。そんなに悩んで切ることにした場合でもどんな髪型にするかを悩む。


 悩んだ挙句……。

 前と同じ髪型にしてもらう。

 他の髪型は似合わないような気がするのだから仕方ない。


 化粧に関してもそうだ。

 ファンデーションや口紅は派手にならない程度に少し個性も持たせたいからいつも悩む。

 それでいつも同じようなものを購入してしまうことになってしまうのだが、それが一番あたしに合っていると思うのだから仕方ない。


 マスカラはもともとまつ毛が長いのでつけないが、頬紅はうっすらとつける時がある。ついているかついていないか分からないぐらいの感じでつけるのがいいのだ。


 身に着けるもの……

 時計は安物だけど、少し大きくてごついものを使用している。

 あたしみたいに身体が小さいと腕時計みたいな小物はごついものの方が映えるような気がするからだ。


 ピアスは痛そうなのでつけない。

 ネックレスはラーメンを食べる時に邪魔くさい感じがするのでつけない。

 指輪?

 手元が気になってどうしようもなくなるからつけない。


 でも、手はラベンダーの香りがするハンドクリームをつけて、生地の薄い手袋をつけている。

 手が荒れて汚くみえないように気を付けているのだ。

 マニュキア?

 落とすのが面倒だからつけない。


 洋服はどうだろう。

 うちの会社は洋服は自由なので、それなりに状況にあったものであれば何を着てきても良いことにはなっている。

 だから、襟付きのブラウスとズボンを着用している。

 動きやすくてとてもお気に入りだ。

 ズボンは黒にして、ブラウスの色をいくつか合わせ持っている。

 簡単に言えば同じような服を何着か持っており、それを仕事の時もプライベートでも着まわしているということだ。


 ……だからか?

 地味だと思われたのは?

 まったくもって失礼な話である。

 自分に似合うものを着るというのは最高のお洒落ではないか。


 そもそもお洒落というのは何のためにやるものなんだろうか?

 よほどの美人でもない限り、自分の姿に無頓着であるならば、他人からの評価は落ちるような気がする。

 お洒落をすることに理由などいらないとは思うが、()いていうならば、清潔な恰好を心がけることがその理由ではないのだろうかとも思う。


 うーーん……

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。


 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。


『こんばんわ』

 いつものように玄関の向こうに夕凪ちゃんがいる。

 今日は赤いスカートを履いている。

 実にかわいい。


 あたしも少し変化をつけてスカートぐらいは履くようにしてみようか。

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