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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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表紙が漫画みたいな絵が描いてある小説は面白いのか否か

 日曜日の夜は少し憂鬱(ゆううつ)


 子供がいると日曜も平日も忙しさはそんなに変わらないのだけど、それでも日曜日の陽が落ちる夕方はなんだか気持ちが少し落ち込むから不思議だ。


 たぶん、周りの雰囲気に感化されているのだろう。

 普段と同じく忙しくても周りの雰囲気が休日のゆったりとした空気感だから、そんなふうに感じてしまうのかもしれない。

 よく考えてみると、バスや電車に乗っても平日とは違い出勤するサラリーマンは少なく、通勤ラッシュのようなこともない。平日ダイヤと違い、休日ダイヤだとバスも電車もなかなか来ない。こんなちょっとした違いが、平日も休日も仕事が休みなだけで、さほど変わらない生活をしているあたしが休日を感じる原因なのかもしれない。


 夕飯を作って、ラジオを聴きながら洗濯物を畳んでいると、時間が少しゆったりしているように感じる。


 だけどそれも日曜日のこの時間ならではなのだろう。

 静かな時間が流れていく……


 どんどんどんどん……


 壁をたたく音がする。


 隣に住んでいる二階堂さんだ。

 彼女には変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁をたたくのだ。


 何を考えているのかな。

 甘いものでも食べながら彼女の考え事の内容を聞きたくなってきた。


 あたしは娘の夕凪(ゆうな)に言った。


『お隣のお姉ちゃん、呼んできてくれる? 甘いものでも食べましょうって』



 ――――――――――



 土曜日には出かけることが多いが、日曜日は家で静かに過ごすことが多い。

 たまにお隣の夕凪(ゆうな)ちゃんが遊びに来てくれたりすると一緒にお絵かきしたりして遊んだりするのだが、そういうのんびりとした休日はなんともしがたいぐらい貴重だと思う。

 家で静かに過ごす時間は必要だ。


 そもそも毎日の生活がいろんな意味で騒がしすぎるのだ。


 たまには心静かに過ごす時間があってもいいはずだ。


 あたしには定期的に読書する習慣がある。

 何を読んでいるの? と良く聞かれるが、ジャンルは様々だ。

 純文学も好きだし、時代小説も好きだ。

 大衆文芸も嫌いではない。


 でも本屋に行くとついつい手を伸ばしてしまうものがある。


 それはライトノベルである。


 ライトノベルの定義ははっきりしていないのだが、漫画やアニメの延長線上で楽しめる小説全般のことを指すらしい。あたしの中でのライトノベルの定義は『表紙に漫画みたいな絵が描いてある小説』である。


 実際にライトノベルは面白いのか……と言われると、はっきり言うが面白い。


 文章の構成や、背景などの描写を簡単で分かりやすく書くというのは実は難しいのだとあたしは思う。この手の小説は、読者には優しく作者の世界観が伝わりやすい。


 ただ……問題が一つある。


 気にしなければいいと言えばそれまでなのだが……

 このライトノベル。

 表紙に漫画みたいな絵が描いてあるので、読書しているような感じがしないのだ。


 読みやすく構成されてある分、さくさく読めてしまうわけだから、1冊を読むのにも時間がかからない。

 世界観にはまりこみやすいからだろうか?

 最近ではこういうライトノベルばかりが人気がでている傾向にある。


 確かにライトノベルは面白い。


 ただ最近はライトノベルばかりが読まれているような気がする。

 読みやすく世界観に没頭しやすいというのはよく分かるのだけど……他の分野の小説だって十分に面白いのだ。


 ライトノベルばかり読むというのは、食事に例えると、好きだからと言って同じものばかり食べるようなものだ。

 それは健康にも良くないのだけど、何よりも美味しいものは世の中にたくさんあるのにそれしか食べないなんてやっぱりもったいない。


 読書もそれと全く同じ。

 面白いからと言ってライトノベルしか読まないのはもったいない。


 本屋に行っても……

 電子書籍を見ても……

 ライトノベルが多い。

 なるほど。

 人気はあるし、売れるのだから、それは分かる。


 でも……異世界に行かなくても面白い物語はたくさんあるのだ。


 それに同じジャンルばかり読んでいたら新しい発想はなにも生まれないではないか。


 ん?

 ちょっと待てよ。

 新しい発想って何だ?


 新しい発想があったからと言って何かあるのだろうか?


 う――ん……

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。


 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。

 今日は新しい発想ってやつで、お隣に住んでいる春海ちゃんにビールでも持って行ってあげよう。

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