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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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34/201

洗濯物は朝にやればいいのか否か

 土曜日の夕方は実家に帰ることが多いので慌ただしいのだけど、今週は少し静かな夕方だった。

 今週は実家には帰らない。


 だから土曜日の休日は一日家の近くで過ごした。

 朝から洗濯物を洗って、干して、その後、近くの公園に行き、ランチがてら娘の夕凪(ゆうな)を遊ばせる。

 子供はすぐにお友達を作るもので、今日も公園に来ていた同じぐらいの子供たちと楽しそうに遊んでいた。


 少し()が傾きだした15時頃……。


 公園から自宅に帰る。

 このぐらいから夕凪(ゆうな)はぐずりだす。

 そもそも彼女は公園でもう少し遊びたかったのだ。

 でもそんなわけにも行かない。晩御飯の準備もあるし、何より夕方になる前に窓際に部屋干しした洗濯物を取り入れてたたんでしまわなければならない。


『もうちょっと遊びたい』

『だ――め』

『なんで!』

『帰るよ』

『やだ!!』

『じゃあ、ママ一人で帰っちゃうよ』


 そういうと少し歩調を緩めつつ、後ろにいる娘の様子を確認しながら歩きだす。

 すると夕凪(ゆうな)は泣きながらあたしについてくる。


 こんなふうな時間を過ごせるのもいつまでだろうか……


 自宅に戻っても夕凪(ゆうな)はまだぐずっていた。

『じいじとばあばに会いに行きたい』

 今週は実家の両親は旅行に行っていない。夕凪(ゆうな)には何度かそう説明したのだが子供というのは自分の目でそれを確認しないと納得しないところがある。

『今日はじいじもばあばもいないの』


 夕凪(ゆうな)があまりにもぐずるのであたしは壁を指差して言った。

『じゃあかわりに壁の音がしたらお姉ちゃん呼ぶ?』

 涙にぬれた顔で夕凪(ゆうな)は黙って頷いた。


 お姉ちゃんというのは隣に住んでいる二階堂さんのことだ。


 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。

 彼女が何かに煮詰まってきている時には、お互いに都合が合えば……だけど、お茶に誘っておしゃべりすることをあたしも夕凪(ゆうな)も楽しみにしている。


 ただ、土曜日は彼女も出かけていることが多く、壁の音はしないことが多い。


 どんどんどんどん……


 あたしと夕凪(ゆうな)は顔を見合わせる。

 やっぱり壁を叩く音がする。

 心なしか平日よりも盛大な感じがする。

 『お姉ちゃん呼んでくる――』

 夕凪(ゆうな)は嬉しそうに玄関を飛び出していった。



 ――――――――――



 土曜日。

 ここのところ休みの日に遊びに行ってばかりいたので、今日は一日家にいて部屋の掃除やら洗濯物やらおかずの作り置きやらをやった。


 案外、休みの日にやらなければいけないことは多い。

 洗濯物などはちょっと油断するとあっという間にたまってしまうから、毎日やらないと追いつかない。そんなことを言いつつも、分かっていてもつい忘れたりもするからたまった洗濯物はすべて休みの日に片付けることになる。


 普段、洗濯機を回すのはどうしても夜になる。


 仕事終わってから洗濯機を回して、部屋干ししている。

 洗濯物を外に干すのはまずい。

 下着泥棒などに狙われてしまうし、女性の一人暮らしとバレてしまうのは防犯上、少々都合が悪い。


 アパートの隣の(むね)には大きな家が建っているのだが、そこに大家さんが住んでいる。

 年齢は分からないのだけど70歳ぐらいのおじいさんで彼は剣道の有段者らしいのだが、アパートの住民に女性の一人暮らしとシングルマザーがいるということもあり、ちょくちょく防犯のために見回ってくれている。


 ありがたい話なのだが、やっぱり洗濯物を干すのはそれでも防犯上まずいし、ちょっと恥ずかしいので、部屋干しをうまく利用しながらも乾燥機を使っている。


 土曜日の夕方に……たまりにたまった洗濯物を乾燥機から出して、畳みながらあたしが思った事は、やっぱり洗濯物は朝にやるに限るなと言うことだ。

 今は、夜に洗濯して部屋干しして、翌朝に乾燥機に入れて……とやっているのだが、このやり方だと洗濯物を畳んでタンスに入れるまでに二日かかる。逆に、朝ちゃんと洗濯機を回して部屋干しまで済ませておけば、夕方には乾燥機に入れられるし、下手をすれば乾いているかもしれない。そうすれば1日で洗濯物を畳んでタンスに入れることができる。


 おお!

 1日で終わるじゃん!

 速いじゃないか。

 これしかない!

 てゆうかなんでこんなに単純な方法に今まで気づかなかったのだろう。


 ん?

 いや……

 朝、洗濯機を回して干すことまで考えたら……今より1時間は早く起きないといけないのでは?


 無理じゃん。

 低血圧だし。


 う――ん……。

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。


 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。


 そういやお隣は実家に帰ってないのかな?

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