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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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27/201

車の運転は楽しいのか否か

 隣の二階堂さんには変な癖がある。

 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。

 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くことをあたしも夕凪(ゆうな)も楽しみにしている。


 どんどんどんどん……


 でも残念なことにあたしたちは今日、実家に帰る予定なのでアパートにはいない。

 毎週土曜日は実家に帰っているのだ。

 夕凪(ゆうな)もおじいちゃんおばあちゃんに会えて楽しいし、あたしも普段の忙しさから少し解放される日なので助かっている。


 二階堂さんはどんな土曜日を過ごすのだろう……。



 ―――――――――――



 土曜日の休みを使って職場の仲間とバーベキューに行くことになったのであたしも参加した。

 こういう時に必ず話題に上がるのは帰りが誰が運転するかという話である。

 運転代行を使うと言う手もあるのだが、それではいかにもお金がかかりすぎるのでジャンケンで負けた人が運転することになる。


 まあ……

 ジャンケンなどしなくてもあたしは別に運転でも構わない。


 それはバーベキューの度に何度も言っているのだが……


 『いやいや……飲めるのに運転するのは悪いですよ――』

 と……参加する男連中に言われるのである。


 悪くなんかない。


 あたしは運転が好きなのである。

 しかも……このオートマ車が全盛の時代に、あたしはマニュアル車が好きなのだ。

 1速にギアを入れて、クラッチをつなげながら発進するときの高揚感がたまらない。そして2速、3速とシフトアップしてスピードが上がっていく。


 車を運転して遠くまで行くと言うことはなんだか魔法のようだ。

 あたしは車の運転をしている時は龍の背中に乗っている気分になるときがある。


 だから今回のバーベキューは無理を言って運転させてもらった。


 丹沢の宮ケ瀬ダムの近辺まで行ったものだからけっこうな長距離ドライブだった。

 戸塚駅で集合し、レンタカーを受け取ってから、2時間ぐらい走っただろうか。

 途中、表丹沢から宮ケ瀬ダムに抜けていく峠道があるのだが……


 正直、そこは通らなくて良かったのだが、あたしは運転手の権限をフルにつかってその峠を走った。

 細い道をくねくねと走り、山の中をずっと走っていく。


 この山を越えると魔王がいる。

 あたしは仲間と一緒に龍に乗って魔王を倒しにいく。


 と……あたしが勝手に妄想しているだけである。


 でもそんな妄想も車を運転するから感じられることなのだ。

 車の運転には非日常が詰まっている。


 『二階堂ちゃんって運転うまいよね』


 隣に乗っている松沢さんがあたしに言った。

 彼女は学生時代バレーボールをやっていて身体を動かすのが苦手なあたしとは対照的だ。

 性格も可愛い見た目に反して竹で割ったような性格をしている。

 にもかかわらず……車の運転だけは苦手らしい。

 免許を取り始めたばかりの時に、塀にぶつけて以来、運転が怖くなったとのこと。


 運転が苦手な人の気持ちは分からないなあ。

 ぶつけたといえばあたしだって何度もぶつけてる。

 でも失敗を怖がっていてはいつまでもうまくはなれないじゃない。


 そう。

 失敗を怖がっていては……この素敵な非日常を感じることはできないのだ。


 それはいかにももったいない……とあたしは思う。

 お酒を呑むことよりも楽しい……というのは言い過ぎか……。


 日帰りのバーベキューの場合……

 時間はあっという間に過ぎる。

 帰りの車の中ではみんなお酒を呑んだということもあってよく眠っている。

 起きていたのは新人の葉山さんぐらいか……

『二階堂さん』

『ん?』

『あたし、ちょっと飲み足りないのでこのあと車を返したらどこか行きませんか?』


 車の運転ができた上に、お酒も飲める。

 今日は良い休日になりそうだ。

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