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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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15/201

読書の習慣は必要なのか否か

 日曜日の夜は少し憂鬱(ゆううつ)


 土日の休みが終わり、明日からまた通常の一週間が始まる。

 明日から来週の金曜日までは朝から仕事に行き、夕方に帰ってくる。

 つまり一日を仕事に(とら)われてしまう。


 丸一日、わき目もふらず好きでもないことのために時間を割くという無意味なことを、いくら生活のためとは言え、何の疑問もなくやれるというのは……あたしをはじめとして人類は何かの奴隷になってそれと気づかないうちに強制労働をさせられているのではないか……と鍋に入っているたくさん作りすぎたシチューをゆっくりかき混ぜながら考えてみる。


 ふふ……

 なんだか隣の二階堂さんみたいだ。


 うちのアパートのお隣の部屋に住んでいる二階堂さんには変な癖がある。


 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。

 最初はびっくりしたけど、それが彼女の変な癖だと知って……尚且(なおか)つ彼女自身がとても良い人であることが分かってからは何も怖くはなくなった。


 どんどんどんどん……


 あ。

 またやってる……。


 よし。

 このたくさん作りすぎたシチューを片付けるのを彼女にも手伝ってもらおう。



 ――――――――――



 日曜日は静かに過ごすようにしている。

 というのも次の日は仕事だし、何かをして次の日に影響させたりしたくはないからだ。

 日曜日にあるイベントといえばサザエさんを観ることと、お隣にお茶を呼ばれることがあるぐらいだ。

 それも毎週というわけではない。

 考えてみればあたしとお隣さんの関係は良好を通り越して友人ぐらいの関係になりつつあるのかもしれない。


 そんなわけで日曜日の夕方、あたしは読書をしていることが多い。

 週中に図書館で1冊、本を借りておいて、日曜日の夕方に読む。

 読書の習慣は学生時代からあるのだが、読書をしないと人間が薄くなるような気がしていけない。

 あたしの周りには読書の習慣がある人とそうでない人がいるけど、この習慣がない人の会話と言ったら本当に中身のないものが多い。

 なぜ読書の習慣がないと会話が薄くなってしまうのだろう……と考えてみる。


 読書の習慣のない人の共通点はなんだろう。


 そもそも読書などしなくても世の中には情報があふれている。

 読書以外の方法で自分の世界を広げることは可能だ。

 例えばテレビの情報番組や、ドラマを見てもいいだろうし、ネットを使えばニュースなども読める。ニュースの解説に関してもネットで見ることが出来るわけだし……会話に必要なネタはいくらでも自分に取り入れることができるのだ。


 にもかかわらず……

 読書の習慣のない人は、そういう情報そのものに疎い人が多い。

 以前、あたしはアマゾンで買った帽子をかぶって仕事に行った時に言われた言葉がある。

『それどこで買ったの?』

『アマゾンですよ。』

『どこ? そのお店??』

 誤解のないように言っておくが、相手はそこそこ若い男性である。

 その男性も読書の習慣はない。


 今の時代、情報はいろんなところから仕入れることが出来る。

 もう情報過多と言ってもいいぐらいだろう。

 取捨選択するのが大変なぐらいだ。


『あ……そうか。情報自体に興味がないんだ……』


 考え事をしている時に何かを思いついたら独り言をつぶやいてしまう癖は、早く治したい。

 誰に聞かれていなくても自分でも気持ちのいいものではない。


 読書の習慣がないということは……情報自体に興味がないということなんだろう。

 だから、情報を仕入れない。そもそもそういう人たちは必要最低限の情報しか必要としない。

 物語の世界で語られることなど、彼らにとっては無用の長物なのだろう。

 現実は厳しいのに……物語の世界に浸りたいと思わないのだろうか。

 彼らはどうやってストレスを軽減しているのだろう。

 もしかしたらストレスなど感じていないのかもしれない。


 う――ん……。


 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。


 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。

 とりあえず読みかけの本にしおりをして、お隣に謝りにいくことにしよう。

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