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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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14/201

映画を見に行くことには意味があるのか否か

 隣の二階堂さんはちょっと変な人だ。

 

 いつも何かの考え事をしているし、そうやって一人であれやこれや考えているのを楽しんでいる節がある。

 そして考え事が煮詰まってくると何かを叩き出す。

 

 あたしが赤ちゃんだった娘の夕凪と今住んでいるアパートの部屋に住み始めた時、彼女は隣には誰も住んでいないと思っていたらしく、盛大に壁をどんどんと叩いていた。

 二階堂さんのその変な癖を知るはずもないあたしは実に驚いた。

 赤ちゃんの泣き声に隣の人が抗議しているのだと思った。


 恐る恐る……挨拶に行ったあたしの前に現れたのは……

 

 小さくて若い……あたしとあまり変わらないごく普通の女の人だった。

 壁の音は変な癖。

 知った時はちょっと信じられなかったのだけど、こうやって付き合いがはじまると彼女は子供が大好きで、変な人ではあるのだけどとてもいい隣人であることが分かった。


 懐かしい思い出だ。


 今ではすっかり仲良くなった隣の二階堂さん。

 今日も考え事をして何かを叩いているのだろうか。


 

 ――――――――――



 なかなかいい映画だった。

 アクション映画だったのだが、大音量の迫力と、大きなスクリーンを堪能してしまうと同じ映画でも『どうせしばらく待てばテレビやるんだからそれを見ればいい』などと言う愚かなことは間違えても言えなくなる。

 お隣のように子供がいる場合などはなかなか映画館に行くこともままならないだろうから、テレビでみるということも仕方ないことなのかもしれないけど、そういう事情がない限りは出来る限り映画は映画館(スクリーン)で見る方がいい。


『え?映画??誰と行くの??』

 製造課の松沢さんというあたしの2つ上の先輩に会社帰りにそう聞かれた。

 更衣室のロッカーが近いというのと、飲み会で隣の席だったということもあって仲良くなった先輩だ。

『一人ですよ』

『え??』

『いや……だから、一人ですよ』

『なんで?』

『なんでって、一緒に行く人もいないし』

『え――』

 松沢さんは『え――』と言ったけど、別に映画なんてものは一人で行くものではないだろうか。

 誰かと行けば好みの違う映画を見なければならないかもしれないし、いろいろ気を使うような気がする。

 やっぱり映画は一人に限る。


『一人で行くぐらいなら家でDVD借りてみるな――』

 松沢さんは頬を膨らませて()ねた表情をしながらあたしに言った。


 いや……

 なぜ()ねる。

 別にいいではないか。

 一人で映画。


『楽しいですよ』

『そうなの? 一人で??』

『はい』

『どの辺が?』

 どの辺が……と言われても困る。

 一応『一緒に行く人に気を使わなくていい』と答えておいたが松沢さんは納得しなかった様子だった。ただ、何と言われようとあたしは映画は一人で行くし、映画館で見られる機会があるのにDVDになるのを待ったりはしない。


 映画は映画館で観ることに意味があるのだ。

 あの迫力はスクリーンでしか味わえない。

 後でテレビで見てもあの迫力はよみがえってこない。

 こういうことを分かっていない人が多すぎるのだ。


 何故なんだろう……。

 うーん。


 まあ……いいか。

 お風呂に入って温まったら、観てきた映画のパンフレットでも見ながらウイスキーでも飲もう。

 楽しみだ。


 土曜の夜は静かにふけていくような気がする。


 いろいろ考え事をしたのだけど……

 今日はやらかさないですんだみたいだ。

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